パーフェクトワールド

木原あざみ

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第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 15 ⑤

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本気で誰かと向き合いたいと思ったこともないし、誰かを好きになりたいと思ったこともない。その生き方を寂しいと感じたこともなければ、間違っていると思ったこともなかった。
 それが、自分にとっての最良だと、幼いころから理解していたからだ。
 そうやってさえいれば、周りに文句をつけられることのない自分でさえいることができれば、「ちょうどいい相手」などいなくても、ひとりで生きていくことができる。見返してやることができる。

 ――なんだ、見返してやるって。

 至った自分の思考に、成瀬は心底呆れた。

 ――そんなに他人に評価されないと、自分を認められないのか。

 呆れと苛立ちを多分に含んでいた声。自分の評価の軸を他人に委ねるなんて、馬鹿げている。あたりまえの思考として、そう答えることはできる。でも――。

「なにも返せないな、本当に」

 似たようなことは、たぶん、何度も以前から言われていた。
 聞く耳を持とうとしていなかったけれど、なんで、そこまで、と言いたくなるくらい、向原は自分のことを見ているから。
 この分だと、なにも考えたくなかっただけだろうという指摘も、きっと当たっている。

 ――たしかに、くだらないプライドなのかもしれないな。

 これも、何度となく言われてきたことだった。プライドを捨てた自分なんて、自分ではない。だから、なにをどう言われようとも、これは必要なものだ。
 頑なにそう思っていたけれど、そういう問題ではなかったのかもしれない。
 建設的な思考ができない、だとか。考えることから逃げていた、だとか。そういったこと以前に、目の前にいる相手をまるきり無視で、自分のことばかりに神経が向いている。

 ――それは、まぁ、向原も切れるわけだ。

 あいつ、自分は平気でするくせに、無視されるの嫌いだからな。

 本気に本気で返すこともせず、向き合うことを避け続けてきた。その結果として、冷めた目を向けられようとも、諦められようとも、しかたのないことなのだと思う。
 そのこと自体は、今日に限ったことでなく、以前からわかっていたことだ。そうして、その調子のまま卒業してしまえば、本当にきっと会うこともなくなる。
 そうなれば、自分は安心するのだろうか。
 これで、もう、振り回されることもなくなる、と。自分らしく生きていくことができると、そう、安心することができるのだろうか。
 
 
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