パーフェクトワールド

木原あざみ

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第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 7 ④

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「おまえはいつもそうだよな」

 自分の苛立ちに触発されたわけではないだろうが、、わかりやすく馬鹿にした言い方だった。

「自分なら大丈夫、自分なら問題なく処理できる。おまえの常套句だよな」
「それがなに」

 常套句だと言うのなら、このやりとりだって、何度したかわからないほどだ。何度しても交わらないやりとりに心中穏やかでないこともお互いさまなのかもしれないが、平行線のままなのは、自分たちが同じ生き物ではないからだ。
 もうずっと前に、成瀬はそう思い切っている。わかり合えるはずがないし、わかってもらいたいとも思わない。それなのに、口を出されるから嫌なのだ。まるで見下されているようで。

 ――まぁ、見下してるんだろうけどな。

 だから、こういう態度になる。殴りたいなら殴ればいいのに。顔のすぐそばにつかれた手をちらりと見やって、成瀬は笑った。ヒートにでも入っていない限り、負けてやるつもりもない。

「これも間違ったこと言ってるつもりないけど。実際、ずっとそうしてる」
「ずっと?」

 先ほどと同じ、馬鹿にした調子だった。まぁ、実際、そう思ってもいるのだろうけれど。

「いいかげん認めろよ。そんなおまえの希望的観測で、なにもかもうまくいくわけなんてないだろ」

 希望的観測と切り捨てられて、眉を顰める。けれど、言い返すよりも、追撃が来るほうが早かった。

「まぁ、おまえ、万が一うまくいかなくても、べつにいいって思ってそうだから、認める認めない以前の話なのかもしれないけどな」

 また壁が揺れる。思い通りに進まないことに対する腹立ちなのだろうか。臆すことなくその瞳を見つめ返したまま、なんなんだろうなと成瀬は考えていた。
 自分が苛立つのは、自分の行動に口出しをされる謂れはないと思うからだ。もうひとつあえて言うとすれば、心配されているようで我慢がならないということでもあったが。それにしても。

 ――そこまで言うようなことか、これが。

 と思いもしていた。口にする気はなかったけれど。そういう意味では、向原の言っていることは正しいのだろうとは思う。たしかに、万が一うまくいかなかったとしても、どうでもいいと思ってはいた。
 それもひとつの始末のつけ方、というだけのことだ。必要以上に挑発する気も失せて、苦笑いに切り替える。

「向原の言うことを否定する気はないけど。俺がなに言っても信用しないだろうし、その時点でまともな議論にならないと思うんだけどな」

 そもそも、議論にする気があったのかどうかも怪しいところだが。その本音は呑み込んだまま、それに、とさらりと続ける。

「否定をする気はないけど、俺は俺のスタンスを変えるつもりはないし、それで、――それは向原もだろ?」
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