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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 11 ②
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「インパクト……」
「そう、インパクト。それで、今日はもう生徒会には寄らなくていいの?」
たしかに最近はほぼ毎日放課後はそこに向かっていた。けれど、今日はもういいだろうと割り切って、大丈夫、と頷く。
「なら、寮に戻ろうか。たまには息抜きしたほうがいいよ、高藤。高等部入ってからずっと忙しそうだし、ストレス溜まってまたキレられても怖いし」
「いや、だから、勘弁して」
本当にもうしないから、と苦笑して、皓太も鞄を手に取った。
良いことなのか悪いことなのかはわからないが、感情的な振る舞いが昔からあまり好きではなかった。近くで見ていた成瀬が情緒が落ち着いているタイプで、そのことに安心感を覚えていたから、自然と倣ったのかもしれない。
だから、この学園に入学した当初、感情の揺れ幅の大きい榛名のことが苦手だった。
逆に、感情が安定している荻原は、委員会関連で話すようになって、付き合いやすい相手だと思ったことを覚えている。
今もそうだ。昇降口に向かう最中も、不必要なことは言わないでいてくれている。いいやつなんだよな、と妙にしみじみと思ってしまった。目配り気配りができて、周囲の輪を重んじる。茅野が寮生委員に任命した理由がよくわかる。中等部のときに一緒にやっていた時期があるから都合が良い、くらいの理由で選ばれた自分とは大違いだ。
ぽろりと榛名に零したときは、「なんで変なとこで自己評価低いの、おまえ」とドン引いた顔をされてしまったが、皓太としては客観的に自分を見た正当な評価だと思っている。
そもそも、あの三年生たちが自分にどこか甘いのは、「入学する前から見知っていた成瀬の幼馴染み」だからだ。
まぁ、あの人はあの人で身びいき激しいしな。諦め半分でそんなことを思う。いかにも平等ですよという顔をしているだけで、成瀬がそうでないことは、知っている人間は、それはもうよくよく知っている。
自分を生徒会のメンバーに引き入れたのだって、気心の知れた人間で固めたかったというだけのことだっただろうし。
――だって、そうじゃなかったら、もう一学年上にだって……。
「でも、高藤、ちゃんと榛名ちゃん大事にしてたんだね」
「え?」
「えって。だって、しっかり怒ってたじゃん。さっきも言ったけど、高藤あんまり怒んないし、なに考えてるのかわかんないとこあるから。勝手だけど、ちょっと安心した。榛名ちゃんのこと、どうするつもりなのかなって気になってたから」
荻原は、そうせざるを得ない状況だったから、自分たちがつがいだと公言したのだと知っている。だから、言葉の通り気にかけてくれていたのだろう。あえて口を出してこなかったというだけで。
「荻原は、そういうとこ、いいやつだよね」
「なに。そんなしみじみ褒められると、逆に怖いんだけど」
「そう思ったから言っただけ。優しいし、導火線も長いし」
「高藤に言われたくないんだけど」
「いつもしっかり周囲のこと見てるし」
「だから高藤もでしょ、それ」
困ったふうに苦笑して、荻原が昇降口のガラス戸を押す。日は沈みかけていたものの、いつもの帰寮時間よりはまだ早いくらいだった。
そう思うと、たしかに忙しくしすぎていたのかもしれない。
「俺と一緒で、役割的にしかたなくって部分もあるとは思うけど。すごいちゃんとしてる。――あ、これ、嫌味じゃないよ?」
「わかってる」
「俺もできてるっていう自慢でもないつもりなんだけど」
「わかってるって」
「でも、なんか、わりと似てるとこあるよね、俺ら」
似てる、と言われて、「ん?」と皓太は首を傾げた。その反応を気にするでもなく、荻原は「ほら」と指折り共通点を上げていく。
「まとめ役押しつけられがちなとこもそうだし。それなりにうまくできちゃうとこもそうだよね。それで、周囲ともそこまで軋轢なくやれて、ついでに優しくて」
「……いや、まぁ、荻原はそうだと思うけど」
自分はそうではないと否定しようとした台詞と、荻原の声とが被った。
「それでも、榛名ちゃんは、高藤じゃなきゃ駄目なんだよなぁ」
あいつが、じゃなきゃ駄目なのは、俺じゃなくて、「成瀬さん」だけどな。なんてことを言えるはずもなく、皓太は曖昧な笑みで誤魔化すことを選んだ。荻原もそれ以上は踏み込んでこなかった。
あっさりとした口調で、気遣う台詞を続ける。
「だから、まぁ、帰ったらちゃんと話してあげなね。素直に口にできるかどうかは、ほら、榛名ちゃんだし、わかんないけどさ。心配は絶対してると思うから」
「そう、インパクト。それで、今日はもう生徒会には寄らなくていいの?」
たしかに最近はほぼ毎日放課後はそこに向かっていた。けれど、今日はもういいだろうと割り切って、大丈夫、と頷く。
「なら、寮に戻ろうか。たまには息抜きしたほうがいいよ、高藤。高等部入ってからずっと忙しそうだし、ストレス溜まってまたキレられても怖いし」
「いや、だから、勘弁して」
本当にもうしないから、と苦笑して、皓太も鞄を手に取った。
良いことなのか悪いことなのかはわからないが、感情的な振る舞いが昔からあまり好きではなかった。近くで見ていた成瀬が情緒が落ち着いているタイプで、そのことに安心感を覚えていたから、自然と倣ったのかもしれない。
だから、この学園に入学した当初、感情の揺れ幅の大きい榛名のことが苦手だった。
逆に、感情が安定している荻原は、委員会関連で話すようになって、付き合いやすい相手だと思ったことを覚えている。
今もそうだ。昇降口に向かう最中も、不必要なことは言わないでいてくれている。いいやつなんだよな、と妙にしみじみと思ってしまった。目配り気配りができて、周囲の輪を重んじる。茅野が寮生委員に任命した理由がよくわかる。中等部のときに一緒にやっていた時期があるから都合が良い、くらいの理由で選ばれた自分とは大違いだ。
ぽろりと榛名に零したときは、「なんで変なとこで自己評価低いの、おまえ」とドン引いた顔をされてしまったが、皓太としては客観的に自分を見た正当な評価だと思っている。
そもそも、あの三年生たちが自分にどこか甘いのは、「入学する前から見知っていた成瀬の幼馴染み」だからだ。
まぁ、あの人はあの人で身びいき激しいしな。諦め半分でそんなことを思う。いかにも平等ですよという顔をしているだけで、成瀬がそうでないことは、知っている人間は、それはもうよくよく知っている。
自分を生徒会のメンバーに引き入れたのだって、気心の知れた人間で固めたかったというだけのことだっただろうし。
――だって、そうじゃなかったら、もう一学年上にだって……。
「でも、高藤、ちゃんと榛名ちゃん大事にしてたんだね」
「え?」
「えって。だって、しっかり怒ってたじゃん。さっきも言ったけど、高藤あんまり怒んないし、なに考えてるのかわかんないとこあるから。勝手だけど、ちょっと安心した。榛名ちゃんのこと、どうするつもりなのかなって気になってたから」
荻原は、そうせざるを得ない状況だったから、自分たちがつがいだと公言したのだと知っている。だから、言葉の通り気にかけてくれていたのだろう。あえて口を出してこなかったというだけで。
「荻原は、そういうとこ、いいやつだよね」
「なに。そんなしみじみ褒められると、逆に怖いんだけど」
「そう思ったから言っただけ。優しいし、導火線も長いし」
「高藤に言われたくないんだけど」
「いつもしっかり周囲のこと見てるし」
「だから高藤もでしょ、それ」
困ったふうに苦笑して、荻原が昇降口のガラス戸を押す。日は沈みかけていたものの、いつもの帰寮時間よりはまだ早いくらいだった。
そう思うと、たしかに忙しくしすぎていたのかもしれない。
「俺と一緒で、役割的にしかたなくって部分もあるとは思うけど。すごいちゃんとしてる。――あ、これ、嫌味じゃないよ?」
「わかってる」
「俺もできてるっていう自慢でもないつもりなんだけど」
「わかってるって」
「でも、なんか、わりと似てるとこあるよね、俺ら」
似てる、と言われて、「ん?」と皓太は首を傾げた。その反応を気にするでもなく、荻原は「ほら」と指折り共通点を上げていく。
「まとめ役押しつけられがちなとこもそうだし。それなりにうまくできちゃうとこもそうだよね。それで、周囲ともそこまで軋轢なくやれて、ついでに優しくて」
「……いや、まぁ、荻原はそうだと思うけど」
自分はそうではないと否定しようとした台詞と、荻原の声とが被った。
「それでも、榛名ちゃんは、高藤じゃなきゃ駄目なんだよなぁ」
あいつが、じゃなきゃ駄目なのは、俺じゃなくて、「成瀬さん」だけどな。なんてことを言えるはずもなく、皓太は曖昧な笑みで誤魔化すことを選んだ。荻原もそれ以上は踏み込んでこなかった。
あっさりとした口調で、気遣う台詞を続ける。
「だから、まぁ、帰ったらちゃんと話してあげなね。素直に口にできるかどうかは、ほら、榛名ちゃんだし、わかんないけどさ。心配は絶対してると思うから」
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