上 下
177 / 186

第177話 蟲のダンジョン 上層①

しおりを挟む
それから安全地帯で“魔法分解“の実験を行った。

効果は発動中及び発動後の魔法に対し、魔法を魔力に霧散して無効化することができるという。

死魔法”デスタッチ”を応用したものと効果が似ている。



ただし、魔法の規模が大きくなればなるほど分解までの時間が長くなるという。

また、込める魔力量が多ければ多いほど分解するまでの時間が短くなるらしい。



『戦っていて厄介だっただけあるな…』



一息つき、消費したMPやTPが自動回復し終えたので21層に向かった。

そこは砂漠のフィールドで、蟻の魔物の姿が見えた。



『…ん?また蟻か…?』



そんなことを思っていると、蟻がどんどん砂漠の中に沈んでいった

そして、底まで沈んだと思ったら蟻の身体の一部がこちらまで飛んできた。



『…っ!?!?食われたのか…!?!?』



底に魔物がいると考え“レーダー“を行使すると、地中深くに反応があった。



『なるほどな…蟻地獄の魔物か。』



つまり、この21層は自然にできた罠で溢れているということだ。



『それにしても砂は歩きにくいし暑いし罠多そうだし…魔法使って移動するか。』



俺は風属性魔法で宙に浮かび、そして周囲に展開している結界の中で氷属性魔法を行使して涼んだ。

これなら快適に砂漠のフィールドを進める。



それから数十分かけて一通り“マッピング“を終えたが、宝箱が一つも見つからなかった。

蟻の時と同様に、今度は蟻地獄の魔物の巣の中に沈んでいるのだろう。



『…倒すか。』



先程捕食された蟻の様子から察するに、蟻地獄の魔物の罠は巣から出ようとして足掻けば足掻くほど底に沈んでいく仕組みらしい。

となれば、地上に誘い出して倒すのが有効だろう。



『…でもどうやって誘い出す?』



餌の代わりを用意しようにも、魔物の死体は持っていない。

この層にいる蟻の魔物を捕まえて利用しても良いが…手間がかかり過ぎる。



『…いや、誘い出さずに巣ごと崩壊させた方が早いな。』



俺は風属性魔法でより上空に飛翔し、氷属性魔法“アイスジャベリン“を巣穴の底に放った。

魔法が当たったが仕留めきれなかったようで、蟻地獄の魔物は巣から身体を出して反撃に転じた。



『なっ…!でかいな…』



蟻の魔物を一口で捕食していたのである程度の大きさは予想していたが…

まさか十数mあるとは思わなかった。



蟻地獄の魔物は遠距離の攻撃手段が無いようで、ただこちらを睨んでくる。

俺は躊躇なく氷属性魔法“アイスジャベリン“を、蟻地獄の魔物が死ぬまで行使した。



『ふぅ…なかなかHP高かったな…』



蟻地獄の魔物に近づいて“鑑定“したが、便利そうな魔物スキルを習得していなかったので、“略奪“はしなかった。



風属性魔法で周囲の砂を飛ばしながら巣の中に入ってみると、やはり宝箱が埋もれていた。

その宝箱に“罠探知“を行使すると、“毒魔法“のときと同じくらい頑丈な罠が仕掛けられていた。 



『これは期待大だな…!!』



俺は“罠解除“を行使して罠を無効化し、ゆっくりと宝箱の蓋を開けた。

中身は“雷属性魔法“のスクロールだった。



『おぉ…!新魔法だ…!!』



俺はすぐさまSP消費して“雷属性魔法“をSランクまで習得した。

この“雷属性魔法“は、全ての魔法攻撃に“パラライズ“の効果が付与されるようだ。

“パラライズ“が敵にかかる確率は限りなく低いが、それでも無いよりはマシだろう。



早速蟻地獄の魔物で試してみよう。

近くにあった巣に向かって雷属性魔法“ライトニングジャベリン“を放った。



すると、まるで本物の雷のような轟音を響かせながら巣に雷の槍が落ちた。

落ちた先は一帯が暗く焦げ、蟻地獄の魔物は直撃した表皮が焦げてパラパラと崩れていった。



『おぉ…なかなか威力あるな…!音はうるさいし派手だけど…格好良いな!』



いかにもファンタジーな感じで子供心をくすぐられる。



それからフィールドにいた全ての蟻地獄の魔物を倒し、巣穴を漁った。

宝箱は四つ見つかり、うち二つは“〇〇のリング“系ではずれだったが、もう二つは“レジストリングS“という指輪だった。

効果は、二つとも状態異常耐性60%増、防御力10%減というものだ。



『“状態異常耐性“習得してるから要らないなぁ…誰かにあげるか。』



何か見落としをしていないか確かめるため攻略本を開くと、思わぬ事実に出会った。



「これは独断と偏見だが、蟲のダンジョンで最も攻略が困難だったのは21層である。21層で足踏みをして経験を積んだものは、簡単に22~30層を攻略できるだろう。」



とのことだ。



『まじか…確かに“アイスジャベリン“数発耐えられたしな。まあ執筆者の独断と偏見らしいし気にしなくていいか。』



少し休憩した後、気を取り直して22層へ上った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

処理中です...