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第219話 グリフィン伯爵家 秘密部屋

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鉄の扉の罠と鍵を解除しようとしたところで、ふと疑問が湧いた。

財宝も魔道具も左右の部屋で手に入れた。

それならこの扉の奥にはいったい何があるのだろうか。



『…警戒した方が良さそうだな。』



念のため”闘気操術”を50%で行使し、”鬼人剣”を背中に背負った。

本来ならすぐに構えられるよう腰に帯刀するが、今は”罠解除”と”鍵開け”で両手が塞がっているためだ。

一応ローブの上に抜き身で背負っているので、構えるのに少し手間取るが怪我をすることは無い。



『ゲームみたいな構え方だな。…懐かしい。』



郷愁にふけるも気を取り直して扉へ両手をかざし、”罠解除”と”鍵開け”を行使して扉を開けた。

すると、目の前には魔法陣のようなものが描かれた台座と本がぎっしり詰まった棚が現れた。

その上蠟燭数本の灯火しかないため薄暗く、いかにも厨二病全開といった部屋である。



『この世界には魔法はないはずだが…まさかな?』



警戒しつつ台座の上にあった本を手に取って調べた。

本に書かれている言語は少なくとも俺が知っている物ではなく、その上達筆で読みにくい。

だが”言語理解”のおかげで難なく読むことができた。



『タイトルは…”悪魔召喚の儀式①”だと!?』



悪魔族といえば、数年前の魔物征伐時に中級悪魔を1度だけ見たことがある。

容姿は身体中にある黒い目玉に禍々しい虫の羽がついた、見ているだけで気持ち悪くなるものだった。

魔物を召喚する魔法的なユニークスキルを所持しており、スタンピードを引き起こした張本人だ。

魔法的なユニークスキルを所持する悪魔族であれば、召喚に魔法陣のようなものを使うのも納得がいく。



本は章ごとに分かれており、この本には初級悪魔と中級悪魔の召喚方法が記載されていた。

”悪魔召喚の儀式②”以降に上級悪魔や超級悪魔といった災厄級の召喚方法が記載されているのだろう。



パラパラとめくっていくと、この台座に描かれてる魔法陣は中級悪魔召喚のものであることが判明した。

そして召喚に必要な生贄として人族の童貞処女計30人と書かれている。



悪魔は神聖とされるユニコーンと同じく一種の変態なのだろうか?

この世界でも”童貞で30歳を迎えると魔法使いになる”と根拠なき噂がされているし、きっと魔法的な力があるのだろう。



『…ん?”構造探知”が変な挙動を…』



ジジジ…と音を立てながらこの奥に部屋のようなものが見え隠れしている。

もしかすると”偽装”に似た何らかの効果を上回って探知しているのかもしれない。

地面に散らばっている本を踏まないように進み、奥に着くと”構造探知”に反応が現れた。



『やっぱり隠し部屋か…ん?微弱ながら”生命探知”にも反応があるな…』



”鬼人剣”を構えて警戒しつつ隠し部屋へ入る手段を探した。

探すこと十数分、本棚に収納された本の後ろにボタンを発見した。

罠が無いことを確認してボタンを押すと、先程までただの壁だった箇所に横開きの扉が浮き出てきた。



『ダンジョン並みの技術力だな。それを世の中に使ってくれよ…』



扉を開けると、目の前には男性15名と女性11名を分けて投獄した牢屋2つを発見した。

死なない程度に毒を盛られているらしく全員が瀕死状態で倒れていた。



『…儀式用の生贄か!どうしたものか…』



助けるには助けるが、今助けると侵入クエストの邪魔になる。

それに、もし中級悪魔が召喚されて戦闘になれば確実に足手まといだ。

何とか助けるか今の状態のままどこか遠くへ移動したいところだが…



『…ん?あれは…』



牢屋の奥に何やら通路のようなものが見えた。

”構造探知”に意識を集中させてみると、この通路は伯爵領の近くの草原に繋がっていた。

地下室のことは私兵にも知らせていないようだし、秘密裏にここまで生贄を連れてくるための搬送ルートなのだろう。



『…盗るものはあらかた盗ったしな。悪魔が召喚されても厄介だしここは生贄を避難させるか。』



STR値に強化された腕力だけで鉄格子をぐにゃりと曲げ、女性牢に侵入した。

そして倒れている11人に麻痺回復薬とHP回復薬をかけて意識を取り戻させた。

すると、何やらこの11人の代表と思しき人間の女性が何かを言いたそうにこちらを見てきた。



「俺はBランク冒険者のアルフレッドだ。お前達を助けに来た。」



「本当ですかっ!?」



「静かに!!伯爵にばれたらまずいだろ?」



「す、すみません…」



「今から男性牢も開放して奥の通路から脱出する。お前達は準備をしておけ。」



「わ、分かりました!」



同じ手順で男性牢に囚われていた者たちも回復し、現状を説明した。

男性陣は女性陣より物分かりが悪かったが、女性陣が協力してくれたことで信用を得ることができた。



「あの、アルフレッドさん。」



「どうした?」



「立つのが久しぶりの者もおりまして…満足に歩けないのです。」



「…ちょっと待ってろ。」



何か台車のようなものが欲しいところだが、そんな都合よくはいかない。

周囲にはもちろん、”アイテムボックス”にもそんなものは存在しない。



「…仕方ない。俺が…っ!!」



突如、隠し階段前のリビングに何者かの反応があった。

その者は一切の迷いなく暖炉の中に駆け込み、踊り場に座り込んでいる。

その反応へ”鑑定”を行使してみると、不幸にもそれはグリフィン伯爵のものだった。



『…くそっ!タイミング最悪だな…!!』
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