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第212話 第18ダンジョン 調査完了

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「…おそらく110層のボスはSSランク魔物だ。全員準備はいいか?」



「おう!」



「よし…行くぞ!!」



ゴゴゴゴゴと今までで1番大きく厚く重い扉を開け、中に入るとそこには茶色の鷲の上半身に黄色のライオンの下半身をもつSSランク魔物グリフォンがいた。

通常種だがステータス値が高く、特にSTRとAGIは俺以外4人の平均を上回る170を誇っている。



「結構強いな…今回は俺も参加するか?」



「いえ。私達だけで十分です。」



「危なくなったら助けてくれよな!!」



「了解。」



グリフォンは相手の力量を見極め、脅威度が高い者や背を向けて逃げ出した者から攻撃する特徴がある。

そのため、俺は4人より弱く“闘気操術“を行使しつつ背を見せないことで攻撃対象から除外されるよう努めた。



「ピィィィィ!!!!!」



鷲の翼でバサバサと羽ばたきながらライオンの脚でクレアの元へ走った。

ライオンの脚と言っても、一歩一歩踏みしめるたびに地面と擦れて火花が散るほど爪は太く、長く、鋭いため危険度が高い。

数mのところまで距離を詰めると、勢いを殺さずに前足を上げて爪で襲い掛かった。



「おらぁぁぁ!!!!」



クレアはその攻撃をパリィするべく完璧なタイミングで爪に斬りかかったが、STR値が均衡しているため弾けずに鍔迫り合いになった。

両手剣を前に構えて前足を押し返そうとするが、なかなか動かない。



「同時に行くよ~!!」



「はいっ!!」



グリフォンの意識がクレアに集中しているうちにアイリスとスーが側面に移動し、翼をめがけて攻撃を仕掛けた。

だが視界が広いグリフォンはその攻撃に反応し、クレアの両手剣をバネにして大きく後ろへ跳躍しようとした。



「イザベル~!!」



「は、はいなのです!!」



後衛にいたため存在感が薄かったイザベルが、それを利用してグリフォンの背後を取っていたのだ。

グリフォンはイザベルの存在を認知するも、勢いよく跳躍したため勢いを殺しきれない。

高速で向かってくるグリフォンの翼へ棍棒Lv.8”トレマーズブラント”を行使した。



その広範囲攻撃はメキィ!!という音を立てながら両翼をへし折り、そして揺れを起こしてグリフォンを転倒させた。

グリフォンのDEX値が低いとはいえ、1撃で重傷を負わせたのはやはり武器のおかげだろう。



3人はその隙を見逃さなかった。

クレアはAGI値的に急いで接近してもこの隙に間に合わないと判断したらしく、その場で右前足目掛けて両手剣Lv.9”ノヴァディザスター”を行使して斬撃を飛ばした。

スーは右後足目掛けて槍Lv.6“ジェットスピア“を行使して一瞬で前方への間合いを詰めつつ強力な1撃を放つと、Lv.8“テンペストスピア“にスキルチェインして高速連撃を繰り広げた。

アイリスはティーナとの模擬戦で見せたように目潰しを狙って2本のクナイを投げ、イザベルの護衛も兼ねて短剣Lv.5“ジェットファング“を行使して背後に回りつつ前後から同時に攻撃した。



『クレアとスーの判断も迅速かつ適切だな。アイリスに至っては1つの動作に複数の目的が伴っているし、流石だな。』



アイリスの目潰しは嘴で弾かれたみたいだが、それ以外の攻撃は全て計画通りに上手くいったようだ。

”トレマーズブラント”の揺れが消えたものの、グリフォンはその場から動くことができない。



「キィィィィー--!!!!」



イザベルの攻撃で翼が折れ、クレアとスーの攻撃で右足を失い、さらにアイリスの攻撃で武器の1つであった尻尾を落とされたグリフォンは痛みに悶えて大きな鳴き声を上げることしかできなかった。

それから4人は動けないグリフォンめがけて次々ソードスキルを行使し、HPが尽きて靄になって消滅した。



「お疲れ。スーの作戦が上手くいったみたいな。」



「でしょでしょ~?」



「アルフレッド、ドロップアイテムです。」



「嘴と尾羽根と爪…全部売却で良いか。」



嘴や爪は鍛冶師に依頼して加工してもらえば武器になるのだろうが、俺達には不要だ。

俺としては回復薬の調合に使えるグリフォンの血液がドロップしてくれれば嬉しかったが、仕方ない。

皆が休憩している間に”アイテムボックス”に収納し、整理して時間を潰した。



「さて…そろそろ先に進むぞ。」



「おう!」



「…っ!?全員止まれ!!」



階段を上り始めたところで、”構造探知”と”魔物探知”に異質な反応を感知したのだ。



「どうしたのです?」



「階段の先が1つの広場になっていて、その最奥に何か巨大な物体とそれを守るようにして強大な魔物の反応がある。」



「…ダンジョンコアの部屋ですか。」



「ああ。念のためここは俺1人に偵察をしたい。」



「賛成です。」



「あたしも賛成~」



「ありがとう。ダンジョン最後のボス部屋は記録の扉まで戻れるから、悪いが先に脱出してくれ。」



「そんなに強いのか?」



「ああ。グリフォンなんて比べ物にならないレベルだ。」



「なっ!!」



「き、気を付けるのです。」



「ああ。」



”偽装”スキルを駆使して自身の存在感を消し、階段を上って顔だけを出した。

すると、目の前には高さ何十mにも及ぶ紫色でゼリー状の壁が現れた。



『…っ!!SSSランク魔物グラトニースライムだと!?』



世界三大厄災と呼ばれる魔物の一体で、過去に地上に現れた時は大陸がまるまる1つ消滅したという。

英雄と呼ばれた存在が束になって対抗しても傷一つ付けられずに全滅し、それを見て心を痛めた創造神様が降臨して存在を消滅させたと言われている。



ダンジョンはコアを守ろうとする性質を持ち、守護者と呼ばれるダンジョン最強の魔物を創造する。

俺達がダンジョン成長時に守護者の役割を担っていたSSランク魔物のバーニングコングとブリザードコングを倒したため、更に強いSSSランク魔物を創造したのだろう。

そしておそらくグラトニースライムを創造するために栄養のほとんどを消費したため、29層しか増えなかったのだろう。



『…これは勝てないな。さっさと帰って報告するか。』



息を潜めたまま階段を降り、110層記録の扉から地上に脱出した。
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