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第182話 不動産商会

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「不動産商会って商会の中にあるのかな~?」



「おそらくそうかと思われます。」



「ついにオレ達のパーティーハウスかぁ…楽しみだぜ!!」



「ボクも楽しみなのです!!」



「そうですね。あっ、商会が見えてきましたよ。」



商会も冒険者ギルドと同様に一目で分かるようになっている。

硬貨が乗った天秤という商会の紋章でも分かるが、一番は比類ないほど巨大で荘厳な建物の見た目だ。

前世の高層ビルを彷彿とさせるほど群を抜いて高い。



商会に入り、入り口の真正面にある案内図を参照した。

しかし、探せど探せど不動産商会が見つからない。



『もしかして商会と不動産商会は別物か…?』



「…ありました。3階の右奥にこじんまりとではありますが、店があるようです。」



「おぉ!流石ソフィア!!」



「アルフレッドパーティーの管理者として当然です。」



そんなことを話しながら階段を上り、地図の場所に着いた。

そこは前世の不動産部と瓜二つで、ドアの左右に多くの不動産情報が貼られた小さな店だった。

店内は白を基調としたシンプルな部屋で、椅子とテーブルがそれぞれ3つずつ置かれている。



「いらっしゃいませ~」



奥の店員用出入口から現れたのは金髪碧眼でスーツに似た服を着た美人な女性だった。

大きな胸がきつそうにスーツを押し上げ、隠しているはずなのに余計に淫靡に感じさせる。

店員の案内に従い、俺とアイリスとソフィアだけ椅子に座って向かい合った。



「6人以上で暮らせるパーティーハウスをお願い致します。」



「少々お待ちください。」



本来ならばパーティーリーダーである俺が対話するべきなのだろうが、こういった交渉事はソフィアやアイリスの方が優れているため2人に一任してある。

俺はあくまで2人が見落とした時に指摘する程度の補佐である。



「よいしょっと!こちらが該当する不動産です。」



女性店員は掛け声とともに厚さ30cmにもわたる書類の山をテーブルにドスンと置いた。

この世界の紙に関する技術は前世ほど高くはないが、それでも紙は真っ白だし厚さは0.何mmである。



「ごゆっくりご検討ください。」



「ありがとうございます。」



俺達が要求する物件は6人それぞれの個人部屋6つ以上と食事をするリビング、パーティー会議をするダイニング、軽く身体を動かせる庭や風呂…などなど様々な要望を兼ね備えた家である。

相当高価になることは間違いないが、予算は金貨1,500枚もあるので十分だろう。



まずは俺達3人で目を通し、立地や構造が希望にそぐわない物件を省いていく。

結構な時間をかけてしまったためクレア達が暇そうにしていたが、80個近くあった選択肢を12個にまで絞ることができた。

次にクレア達3人を呼び、全員で選択肢の中から気に入った物件を選ぶ。



「ここの庭は狭いんじゃないかな~?模擬戦出来なさそう。」



「迷宮都市にそこまで土地が広い家はないと思いますよ。」



「まあ模擬戦はフィールドに出ればどこでもできるしいいか!」



正直クレア達や俺の意見のほとんどはソフィアとアイリスに論破される気しかしない。

だが、それでも後悔しないよう思ったことは口に出しておこう。



「この物件なんだが、生活区域に位置していてダンジョンから遠い上に高くないか?」



「おっしゃる通りです。ですが、この家は部屋数が多くて庭も広いため悩んでおりました。」



「なるほどな…」



「ボ、ボクはこの物件がいいと思うのです!」



「私もこれが1番いいと思ってました。」



「イザベルとアイリスのおすすめか。どれどれ…」



その物件は商業区域の中でもダンジョンに近い場所に位置しており、リビングダイニングに個人部屋は8部屋、加えて少し狭い庭と風呂が設置されていた。

今後ダンジョン攻略に専念することを考えれば、最適ではないかと思われる。



「僭越ながら、私はこちらが良いと考えました。」



「あっ、それあたしも気になってた~!」



「ソフィアとスーのおすすめか、どれどれ…」



その物件は商業区域の中でも生活区域に近い場所に位置しており、リビングダイニングに個人部屋は8部屋、加えて少し広い庭と湯舟のついた風呂が設置されていた。

ダンジョンからは少し遠いが、この庭の広さならスーやクレアの要望は僅かながら叶えられるだろう。

それに、風呂に湯舟が付いているというのは少しポイントが高い。



「残ったアルフレッドとクレアが選んで、多数決というのはどうでしょうか?」



「…分かった。クレアもいいか?」



「おう!」



「せーのっ!」



俺は後者、クレアは前者を選んだため3:3で多数決は成立しなかった。

前者の方が良いかと思われたが、ダンジョンに向かう途中に武器屋やアイテムショップを見れる遊びがある点でこちらを選んだ。



「意見が割れているようですね。」



今まで奥の椅子で静観していた女性店員が眼鏡をかけていないのに眼鏡をくいっと上げる仕草をしながらこちらへ歩いてきた。

格好つけているのだろうか?



「実際の目で見てから改めて多数決を取ってはどうでしょう?」



「そうですね…私もそう考えておりました。」



「確かにその通りですね。私も賛成です。」



「では私めが案内しますので、どうぞついてきてください。」



俺達は胸だけでなく大きく張りのある魅惑的な尻を隠し持っていた女性店員について不動産商会を出た。
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