剣の世界のβテスター~異世界に転生し、力をつけて気ままに生きる~

島津穂高

文字の大きさ
176 / 246

第176話 オークション最終日

しおりを挟む
それからも特に1、2日目と大差なくオークションは順調に進んだ。



3日目

洋裁王シャンディ・ヴィヴィエの遺産が出品された。

俺は特殊効果も付いていない洋服など利益は少ないだろうと判断していたが、全くの逆だった。

参加者のほぼ全員が入札するという、過去2日よりも白熱した競り買いが繰り広げられたのだ。

結果は金貨5,640枚、税引して金貨4,512枚の収益となった。



4日目

宝石王ティティエ=ウィンクリーフの遺産が出品された。

誰しもの予想通り、大量に参加している悪徳貴族がこぞって入札した。

結果は金貨4,570枚、税引して金貨3,656枚の収益となった。

相手が相手なのでもっと搾り取りたいところだったが、思ったよりも入札価格が上がらなかった。



5日目

絵画王ベラッジオ=ゴーケスの遺産が出品された。

ソフィアと話し合い、絵画に似合う額縁がないと買い渋るだろうとのことで額縁を付けたまま出品したのだが、正解だったようだ。

結果は金貨7,110枚、金貨5,688枚の収益となった。



そして迎えた最終日



「今日で終わりかぁ…」



「はい。長いようで短く感じました。」



「俺もだ。…っと、そろそろ会場に着く…なっ!?」



会場の入り口を見ると、今までの3倍ほど…約600人ほどが集まっていたのだ。

招待状に彼の有名な鍛冶王アルベイン・スミスの遺産を最終日に出品するという情報を記載しておいたのである程度は予想していたが、まさかここまで多くなるとは思わなかった。



「…っ!!」



人混みの中にある人物を見つけ、反射的にソフィアを連れて物陰に隠れてしまった。

そう、視線の先には仮面をつけて如何にも不審者らしい怪しげな行動をとる父上がいたのだ。

ペンシルゴン家には招待状を送っていないはずなのだが…

武器愛好家である父上は流石に見逃さなかったようだ。



「どうかなさいましたか?」



「あー…先に行ってちょっと待っててくれ。」



「…?かしこまりました。」



会場に入るソフィアを見送り、俺は”迷彩偽装”を行使して父上へ接近した。

そしてスキルを解除し、父上の肩をポンポンと叩いた。



「誰だ…っ!!アルフレッドではないか!!久しいな。」



「父上、お久しぶりです。少々内密な話があるのでこちらへ。」



「分かった。」



会場に流入していく人混みを抜け、狭い裏路地に入った。

そして”無音偽装”を付与した”結界展開の石”を置き、音を遮断する空間を作った。



「父上、招待状を持っていませんよね?」



「うっ…!!それより、やはりオークション主催者のアルフレッドとはお前のことだったのだな。どうして俺に送ってくれなかったのだ?」



「それは…」



俺は傑作を残したそれなりの品だけをオークションに出品したことを伝えた。

そして1度ペンシルゴン家に帰り、プレゼントとして武器をあげようとしていたことを。

最初は頷きながら聞いていた父上だったが、俺のサプライズプレゼントを台無しにしてしまったことに気付くとあからさまにしょんぼりとした。



「…すまなかったな。」



「気にしないでください。…せっかく来たことですし、父上もオークションを見学しますか?」



「いいのか!?」



「入札は出来ませんが…俺の関係者として入場することは可能です。」



「ではそうしよう。オークションを見ながら色々と話そうではないか。」



「はい!」



会場に入ると、既に観客は全員揃っていた。

俺は父上と共にソフィアと合流した後、防音室の役割を持つ関係者専用席に移動した。

そして会場の様子を見つつ、話を再開した。



「…いつも息子が世話になっているな。」



「いえ。私の方こそパーティー管理者として雇用していただき、大変お世話になっております。」



「そうかそうか。アイリス君達もそうだが、君のような優秀な人がいて安心したよ。」



「お褒めにあずかり光栄です。私は用を思い出したのでこれで失礼します。」



きっとソフィアは空気を読んで俺と父上の2人きりにしてくれたのだろう。

気を使わせてしまったことに少し申し訳なく感じるので、後で何か贈り物でもすることにした。



父上がソフィアと話しているうちに次々とアルベイン・スミスの出品物が買われていった。

防音室なので会場の音は聞こえないが、競り買いが白熱していることは一目瞭然だ。



「…しかしアルフレッドも立派になったな。”アルフレッドパーティー”が新遺跡を踏破したという情報は聞いたぞ。」



「えっ?”アルフレッドパーティー”ですか?」



「違うのか?情報屋にそう聞いたぞ?」



「…あっ、なるほど。」



おそらくパーティー名を決めてないため、リーダーの名前が取られたのだろう。

冒険者の間にはパーティーあるあるとして知られている。



「…それに生ける伝説エレノア=ブラッドボーンの後継者になったとか?」



「あっ、そういえば修行で忙しくて父上に伝えそびれていました。すみません。」



「気にするな。随分強くなったな!肩を叩かれたときは全く気付かなかったぞ!!」



「師範…エレノア様に2年半ほど鍛えられましたからね!」



「そうかそうか!」



今まで嬉しそうな表情で話をしていた父上の顔に、少しばかりくらい様子が感じられた。

そして会場の声が少し聞こえるほどの静寂が訪れた。



「…後継者になったということは、やはり吸血鬼に?」



「はい。といっても、容姿と寿命くらいしか変化はないですけどね。」



「ん?容姿は変わっていないぞ?」



「月光を浴びると眼が赤くなって、歯も鋭くなるんです。…まあその時間帯にはもう寝てるのでほとんど関係ありませんが。」



「なるほど…なら良い!!」



『あれ…?怒られるかと思ったけど…』



たじろぎながら父上の表情を窺うと、とても満足そうな顔をしていた。

本当に怒る気はないらしい。



「アルフレッドの話も聞けたことだし、俺はそろそろ帰るとするよ。」



「あっ、出口まで送りますよ。」



「気にするな。では屋敷に帰ってくる日を楽しみにしているぞ。」



「はい!!」



俺は手を振りながら帰っていく父上の後ろ姿を、見えなくなるまで見守った。

それから数時間が経ち、オークション最終日が幕を下ろした。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

一星
ファンタジー
至って普通のサラリーマン、松平善は車に跳ねられ死んでしまう。気が付くとそこはダンジョンの中。しかも体は子供になっている!? スキル? ステータス? なんだそれ。ゲームの様な仕組みがある異世界で生き返ったは良いが、こんな状況むごいよ神様。 ダンジョン攻略をしたり、ゴブリンたちを支配したり、戦争に参加したり、鳩を愛でたりする物語です。 基本ゆったり進行で話が進みます。 四章後半ごろから主人公無双が多くなり、その後は人間では最強になります。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未(ことぶき・あゆみ)
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

最強剣士が転生した世界は魔法しかない異世界でした! ~基礎魔法しか使えませんが魔法剣で成り上がります~

渡琉兎
ファンタジー
政権争いに巻き込まれた騎士団長で天才剣士のアルベルト・マリノワーナ。 彼はどこにも属していなかったが、敵に回ると厄介だという理由だけで毒を盛られて殺されてしまった。 剣の道を極める──志半ばで死んでしまったアルベルトを不憫に思った女神は、アルベルトの望む能力をそのままに転生する権利を与えた。 アルベルトが望んだ能力はもちろん、剣術の能力。 転生した先で剣の道を極めることを心に誓ったアルベルトだったが──転生先は魔法が発展した、魔法師だらけの異世界だった! 剣術が廃れた世界で、剣術で最強を目指すアルベルト──改め、アル・ノワールの成り上がり物語。 ※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうにて同時掲載しています。

異世界で至った男は帰還したがファンタジーに巻き込まれていく

竹桜
ファンタジー
 神社のお参り帰りに異世界召喚に巻き込まれた主人公。  巻き込まれただけなのに、狂った姿を見たい為に何も無い真っ白な空間で閉じ込められる。  千年間も。  それなのに主人公は鍛錬をする。  1つのことだけを。  やがて、真っ白な空間から異世界に戻るが、その時に至っていたのだ。  これは異世界で至った男が帰還した現実世界でファンタジーに巻き込まれていく物語だ。  そして、主人公は至った力を存分に振るう。

処理中です...