上 下
96 / 246

第96話 迷いの森サバイバル(南部) 試験開始

しおりを挟む
ラッシュボアを倒すと、ピロンッ!とシステム音が鳴った。

”獲得経験値10倍”のユニークスキルのおかげでウェアウルフ亜種戦でも大幅に上がり、今の戦闘でちょうどLv.100に達した。



「弟子よ!!妾は周りを警戒しておくから、ラッシュボアの解体を1人でやってみるのじゃ!!」



「分かりました!!」



前世は狩猟者ではなくただの社畜だったので、もちろんイノシシを解体したことはない。

だがウェアウルフ亜種を何十匹も解体したおかげで、コツは掴んだ…はずだ。



まずは血抜きをするために、切り落とした頭を下にして太い木の幹吊るした。

時間を置き、次に”アイテムボックス”から綺麗な水をかけながら血や泥を落とした。



綺麗になったところで、肛門辺りから首付近まで内臓を傷つけないようにナイフで切り開く。

そして皮を剥いで…



「…出来ました!!」



「うむ!!皮を剥ぐときに少し手間取っておったようじゃが…あとは慣れじゃの。合格じゃ!!」



「ありがとうございます!!」



体長5mほどあったので、かなり腕が疲れた。

前世の狩猟者たちは自分で仕留めて解体していたのだと思うと、その激労に敬意を表さずにはいられない。



「ラッシュボアの肉を使って昼食にするのじゃ!!調理は頼むのじゃよ?」



「分かりました!!」



昨日師範に教わった通り、乾燥した葉や枝を集め、火打石を剣で擦って火を起こした。

そして火から少し離れたところにボア肉を置き、塩と胡椒で味付けして時間をかけて焼いた。



「…うむ、なかなか上手く調理できているのじゃ。」



「ありがとうございます!!」



「冒険者に野営はつきものじゃからな。調理ができないと話にならないのじゃ。」



「はい!!」



ボア肉は濃厚な旨味があり、絶品だったが野生臭さを少し感じるのが玉に瑕だ。

調理時にハーブのような臭い消しを使えばもっとおいしくなるだろう。



『…クレア達にも食べさせてあげたいな。』



ふと、冒険者学校の皆のことが脳裏をよぎった。

まだ別れてから2日目だというのに…情けない限りだ。



「…弟子よ。サバイバルと言えば1度くらいは痛い目を見るべきだと思うのじゃが…」



「えぇ…痛い目を見なくて済むならそれに越したことはないんじゃ…?」



「甘いのじゃよ!!というわけでお主に試験を課すのじゃ!!」



「試験…?」



「うむ!!1週間生存しつつ迷いの森のどこかにいるキリングベアを1匹仕留めるのじゃ!!」



急すぎる…が、確かに昨日今日のサバイバルは難易度がぬるかった。

チュートリアルっぽいことも大体教わったし、そろそろ1人でサバイバルしてみるのも問題ないだろう。



「分かりました。」



「なら妾は帰るのじゃ!!1週間後の今頃に帰るから、生き残るのじゃぞ!!」



「えっ。あ、はい!!」



まさか今すぐに始まるとは思わなかった。

師範は吸血鬼の羽を出し、飛んで帰っていった。



『…よし、頑張るか!!』



ひとまず今日はキリングベアを倒す作戦を立てるため、拠点に帰った。

帰り道でウェアウルフ亜種数匹に出会ったが、焦らず正確に仕留めることができた。



『…まずキリングベアってどこに生息してるんだ?』



ラッシュボアが前世の猪と同じ習性を持っていたことから察するに、キリングベアも前世の熊と同じ習性を持っているだろう。



『…とはいえただの社畜には熊の習性なんて知らないぞ!?』



知っていることといえば、せいぜい川で鮭を捕えて食べていたことぐらいだ。



『いや待てよ?確か…あっ、思い出した!!』



エリス先生に教わった本に、※キリングベアに遭遇した際、死んだふりをすると食料として洞窟に引きずり込まれる。との記述があった気がする。



『ということは…おそらくキリングベアの寝床は洞窟か!!』



そうと決まればあとは戦略を考えるだけだ。

ジェノスタイガーの時は失敗してしまったが、今度は成功したい。



熟考すること十数分



『…よし、これで行こう!!』



作戦はこうだ。

1.足跡やフンに“鑑定“を行使し、キリングベアの寝床となっている洞窟を探す

2.洞窟内で眠っている間に、入り口にイヴィープラントのツタでワイヤートラップを張る

3.洞窟の入り口で火を起こし、洞窟内に煙を充満させる

4.息苦しくて洞窟から出てきて、トラップに引っかかったところを仕留める



『完璧だな…!!』



まずは1の寝床探しだが…日の入りまであと4時間ほどしかないので急ごう。

ツタや装備の点検をしたあと、早速探索を始めた。



『そういえば…さっきラッシュボアを仕留めたあたりで水の音がした気がするな。』



この世界にも鮭の魔物がいるとすれば、キリングベアはそこで狩りをするはずだ。

“アイテムボックス“にある飲み物も無くなってきたので、ついでに水を補給しよう。



『…っ!!』



数十分かけてラッシュボアを仕留めた場所まで戻った。

すると、そこには解体時に地面に垂れた血に反応したウェアウルフ亜種が集まっていた。



『1、2、3…14匹か。厄介だ…』



試験初日にして、問題に対面してしまった。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~

たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!! 猫刄 紅羽 年齢:18 性別:男 身長:146cm 容姿:幼女 声変わり:まだ 利き手:左 死因:神のミス 神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。 しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。 更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!? そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか... 的な感じです。

異世界なんて救ってやらねぇ

千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部) 想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。 結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。 色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部) 期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。 平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。 果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。 その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部) 【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】 【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】

売れない薬はただのゴミ ~伯爵令嬢がつぶれかけのお店を再生します~

薄味メロン
ファンタジー
周囲は、みんな敵。 欠陥品と呼ばれた令嬢が、つぶれかけのお店を立て直す。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...