上 下
37 / 246

第37話 魔物征伐 野営

しおりを挟む
「疲れたぁ…小僧、一応周囲の警戒を頼む。」



「ああ。」



今回の戦闘は流石に体に応えたようで、ほとんどの者が地面に座り込んでいる。

辛うじてまだ動けそうなのはアランパーティ全員とレイフ兄様、俺くらいだ。



「今新手の敵が来たらまずいな…広めに”探知”したいが負荷が大きい。どうにかならないか…?」



解決策を考えながら、ひとまず半径100mに設定して2階層をぐるっと回った。



「よし…2階層に魔物はもういないな…じゃあ実験してみるか!」



”探知”はおそらく設定した距離と探知した数量が負荷に関係している。

距離を広くしたいのなら数量を減らして設定すれば負荷が減るという仮説だ。



「”気配探知”は味方も反応するからな…」



俺に敵対する存在だけを探知すればいいのだが…

敵対の有無はシステムを利用しても判断することが難しいらしい。



「…仕方ないから純粋に”魔物探知”でいいか。」



ピロンッ!とシステム音が鳴り、ステータスウィンドウの派生スキル欄に”魔物探知”が追加された。



”魔物探知”の弱点はあくまで魔物の反応しか得られないことだ。

アランの授業で習ったのだが、ダンジョンには時に悪魔族と呼ばれる種族が存在しているそうだ。



悪魔族…それは他の全種族に対して異常なほど憎悪の念を抱いている種族である。

魔物に力を与えて進化させたり、知恵を与えて他種族を攻撃する…全種族の敵だ。



そのうえ悪魔族は単体でも強い力を持っているらしい。

悪魔族には等級があり、最低の下級悪魔でも危険度C以上とのことだ。



「…そうだ!”魔物探知”と”罠探知”は同時使用できるのか…?」



試しに半径10mに設定して行使してみた。



「おぉ…おぉぉ!!!成功だ!」



”探知”を細分化し、必要に応じて同時使用すれば済むということになる。

これで負荷の問題はある程度解決した。



「あとは派生スキルを細かく分類して習得するだけだな…!!」



色々と役立ちそうなものを考えながら、討伐軍の元へ戻った。

警戒に行くときはほとんどの者が座り込んでいたにも関わらず、戻ると全員が立ち上がっていた。



『回復速度凄まじいな…中にはアラフォーもいるのに…』



この世界の年齢はあまり参考にならなそうだ。



「どうだった?」



「2階層にはもういなかった。」



「そうか…!レイフィールド殿に伝えてくる。小僧は少し休んでおけ。」



「そうするよ…」



寝転がって身体を休めながら、帰り道に思いついた派生スキルを次々習得していった。

”動物探知”に”悪魔族探知”、”盗賊探知”、”犯罪者探知”など様々だ。



『改めて思うが…”探知”ってチートすぎるな。』



まだまだ可能性に満ち溢れている。

”探知”を極めれば極めるほど、強くなれるような気がする。



『それに…別スキルの同時使用も実験してみたいしな。』



帰り道に思いついたのだが、もしかすると”探知”と”鑑定”を同時に行使することで”探知”で見つけた個体を”鑑定”して遠くからステータスを知ることができるかもしれない。

そうなれば自分より強い敵と遭遇する事態を避けられ、生存確率を高めることができる。



「アル…?どうしてそんな難しそうな顔をしているんだ?」



「あ、レイフィールド殿。少し考え事をしていました…」



「今は2人だけだから楽に話していいぞ。」



「ありがとうございます…!!」



「連絡に来たんだが…今良いか?」



「はい。」



「そろそろダンジョンに入ってから15時間が経つ。外はもう真っ暗だろうな。」



「もうそんなに…!?」



探索や戦闘をしていると、時間の流れが早く感じる。

眠気は皆無だが…これからを考えても身体は休ませた方が良さそうだ。



「うん。そこで、兵士達の疲労も溜まってきているからここで野宿をすることにしたんだ。」



「なるほど…分かりました!」



「ところでアル…いつの間にあんな強くなったんだ?」



「レイフ兄様こそ…いつの間に立派な守護騎士になったんですか?」



「はははっ!お互い様だな!」



「そうですね!」



「実は工面して…アルとの2人部屋にしたんだ。今晩語り明かそうじゃないか!」



「はい!そうしましょう!!」



それからテントの設置や夕食の供給などを行い、野宿の準備をした。



収納時から時間の経過がない”アイテムボックス”の魔道具を持って来たおかげで、夕食はペンシルゴン家の出来立てほやほや料理だった。

冒険者は基本的にパンと干し肉を携帯し、それを工夫して夕食にするらしい。

1度干し肉を食べてみたことがあるのだが、前世のビーフジャーキーと比べるとやはり血生臭くて不味かった。



『本当に”アイテムボックス”の魔道具があって良かった…』



寮の料理も美味しいのだが、やはり実家の料理は格別だ。

家族との思い出を想起し、テントでレイフ兄様と語り合った。



翌朝



「…っ!!!」



巨大な揺れが起き、すぐさま目を覚ました。

この世界で地震を経験するのは初めてだ。



…いや、ここはダンジョンの中だ。

ダンジョン内で揺れを感じるということは…



「…っ!!まさか魔物によるものか!?!?」



俺は急いで半径300mに設定して真下に向けて”魔物探知”、”悪魔族探知”を行使した。



「なっ…!!」



「アル、どうした!?」



「直下280m…おそらく4階層で魔物が大移動を始めました…!!率いているのは…悪魔族です!!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

鍵の王~才能を奪うスキルを持って生まれた僕は才能を与える王族の王子だったので、裏から国を支配しようと思います~

真心糸
ファンタジー
【あらすじ】  ジュナリュシア・キーブレスは、キーブレス王国の第十七王子として生を受けた。  キーブレス王国は、スキル至上主義を掲げており、高ランクのスキルを持つ者が権力を持ち、低ランクの者はゴミのように虐げられる国だった。そして、ジュナの一族であるキーブレス王家は、魔法などのスキルを他人に授与することができる特殊能力者の一族で、ジュナも同様の能力が発現することが期待された。  しかし、スキル鑑定式の日、ジュナが鑑定士に言い渡された能力は《スキル無し》。これと同じ日に第五王女ピアーチェスに言い渡された能力は《Eランクのギフトキー》。  つまり、スキル至上主義のキーブレス王国では、死刑宣告にも等しい鑑定結果であった。他の王子たちは、Cランク以上のギフトキーを所持していることもあり、ジュナとピアーチェスはひどい差別を受けることになる。  お互いに近い境遇ということもあり、身を寄せ合うようになる2人。すぐに仲良くなった2人だったが、ある日、別の兄弟から命を狙われる事件が起き、窮地に立たされたジュナは、隠された能力《他人からスキルを奪う能力》が覚醒する。  この事件をきっかけに、ジュナは考えを改めた。この国で自分と姉が生きていくには、クズな王族たちからスキルを奪って裏から国を支配するしかない、と。  これは、スキル至上主義の王国で、自分たちが生き延びるために闇組織を結成し、裏から王国を支配していく物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様、ノベルアップ+様でも掲載しています。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

異世界に転生!堪能させて頂きます

葵沙良
ファンタジー
遠宮 鈴霞(とおみやりんか)28歳。 大手企業の庶務課に勤める普通のOL。 今日は何時もの残業が無く、定時で帰宅途中の交差点そばのバス停で事件は起きた━━━━。 ハンドルを切り損なった車が、高校生3人と鈴霞のいるバス停に突っ込んできたのだ! 死んだと思ったのに、目を覚ました場所は白い空間。 女神様から、地球の輪廻に戻るか異世界アークスライドへ転生するか聞かれたのだった。 「せっかくの異世界、チャンスが有るなら行きますとも!堪能させて頂きます♪」 笑いあり涙あり?シリアスあり。トラブルに巻き込まれたり⁉ 鈴霞にとって楽しい異世界ライフになるのか⁉ 趣味の域で書いておりますので、雑な部分があるかも知れませんが、楽しく読んで頂けたら嬉しいです。戦闘シーンも出来るだけ頑張って書いていきたいと思います。 こちらは《改訂版》です。現在、加筆・修正を大幅に行っています。なので、不定期投稿です。 何の予告もなく修正等行う場合が有りますので、ご容赦下さいm(__)m

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

処理中です...