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第113話 精霊の森

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「道はこのまま前進すればいいのか?」



「ああそれなら…ちょっと待っていてくれ。」



数分後、たくさんの妖精たちが出てきて道を作ってくれた。

その光景はとても神秘的で、美しかった。



「人間さん、こっちだよ!!!」



「久しぶりの人間さんだーーー!!!」



妖精たちがとても陽気に歓迎してくれた。

何だか心が癒されていくような気がする。



そのまま妖精たちが作ってくれた道を進んでいくと、気が付けば今まで感じていた結界を通る感覚がしなくなった。



「…?結界がなくなったのか?」



「私たち妖精が作った道の部分だけ結界を解除できるの!!」



「なるほど…」



それから数十分、ゆっくり歩いた先にまぶしい光の塊が出てきた。



「ここが入り口だよ!!」



「精霊の森にようこそ!!」



その光の扉を抜けた先は、まるで別の世界だった。



生きた樹木でできた建物に羽で空を飛んで木の実を採っている妖精たち。

木と身体が繋がった女性までいる。



『って…え!?…木から身体が生えてる!?』



見間違いではなかった。

ドライアドは珍しい種族なので、初めて見た。



「あ、長ーー!!!」



「人間さん連れてきたよーーー!!!」



さっきまで道案内をしてくれた妖精たちがそのドライアドのもとへ笑顔で飛んで行った。



「みんなお疲れ様!!あとはわたしが対応するから休んでいていいわよ!!」



「うん!!」



そう言うと、妖精たちは散らばってそれぞれの家らしき建造物の中に入っていった。



「精霊の森にようこそいらっしゃいました。お名前を伺ってもいいですか?」



「ダグラスだ。あなたは?」



「私はこの森の長を務めておりますドライアドです。名前なんて大層なものはありませんよ。」



そういえば魔物や精霊は基本、誰かに仕えない限り名前をもらえないのだった。



「…失礼なことを言った。すまない。」



「いえ。それで、手紙というのは?」



「あ、ああ。これだ。」



俺はリヴェリアから受け取った巻物をドライアドに渡した。



「…ん?手紙のことを知ってるってことはさっき脅してきた声の主は貴方だったんですか!?」



「ふふふ…違いますよ。フィン、こっちにいらっしゃい。」



すると、何か大きな生物が森の中から出てきた。



艶のある銀色でふさふさの体毛。

勇ましさを感じさせる黄色い瞳。



「っ!?フェンリルか…?」



「ああ。先程は脅してすまなかった…」



「いや、こちらこそ勝手に結界内に侵入してすまなかった。」



「気にするな。…結界が弱まってるせいだ。」



「…どういうことだ?」



確かに俺が通った結界は全て膜程度の薄さしかなかった。

本来、術者の能力にもよるが最低でも石壁くらいの厚さはあるのだ。



「それについてはわたしが説明します。フィンは引き続き監視を頼むわ。」



「ああ。」



最近フェンリルの目撃情報が出たのは精霊の森警護のために見回っていたからだったようだ。



「結界の張り方はご存知でしょうか?」



「結界魔法によるものなら。ただこの森の結界はそれとは違うように感じたが…」



そう、ここの結界は術者の魔力を感じなかったのだ。

まるでメリル魔道具店で購入した魔道具のような感覚だった。



「その通りです。こちらへついてきてください。」



どんどん精霊の森の中心にある大樹に近づいていき、そしてついに目の前まで来た。

大樹の地下から何か途轍もない魔力を感じる。



「…入りましょう。」



ドアを開け、下を見て俺は理解した。



「…そういうことか。」



結界の魔道具に感じたのは間違っていなかった。

そこには巨大な魔石が埋め込まれており、その魔石を中心として精霊の森全体を結界で囲っていたのだ。



「この魔石の魔力が尽きかけているのです。ダグラス様、どうにかならないでしょうか…?」



「…ただ魔石に魔力を流せばいいんじゃ?」



「魔力量が少ない者が触れるとその命まで吸収されるのです…私の母も吸収されてしまいました…」



どの程度の魔力量が無いと吸収されずに済むのか分からない。



試しにドライアドを”鑑定”すると、その最大MPは俺の1/10程度だった。

おそらくこの精霊の森から外に出ないため、レベルが1のままだからだろう。



「嫌なことを思い出されてしまうが、ちなみに母親のレベルはいくつだったかわかるか?」



「50前後だったかと。」



「なるほど…」



それならいけるかもしれない。



「分かった。やってみるよ。」



「本当ですか!?ありがとうございます…」



ただ精霊の森の下見に来たはずが、結構な大事に巻き込まれてしまった。
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