異世界転生録~死と隣り合わせのこの世界で死なないため、力を付けます!!~

島津穂高

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第109話 疑念

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俺は思いもよらぬ言葉にたじろいだ。



「同族って…どういうことだ?」



「そのままの意味だ。貴様は魔人なのだろう?いや、正確には半魔人か。」



「…何を言ってるんだ?俺は人間じゃないか…!!」



俺はヴァ―リ領のアイザック家で人間同士の間から生まれたダグラス=アイザックだ。

俺が人間ではない可能性などあり得ないはずだ。



「そう思い込んでいるのか。可哀そうな奴め。」



「黙れ!!!俺は人間だ!!!」



「貴様、”鑑定”は使えるか?使えるなら自分を鑑定してみればいい。」



「言われなくても!!!」



きっとこれは罠に違いない。

”鑑定”を使って油断した瞬間に攻撃しようと企んでいるのだろう。



『しかし、まさかとは思うが本当に人間ではないとしたら…?』



そんな考えが脳裏をよぎって落ち着かない。

俺は真祖の動きに注意を向けながら”鑑定”した。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



名前 ダグラス=アイザック 種族 人族 性別 男 Lv.334



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



ちゃんと”種族 人族”の表記があったので安心した。

しかし、安心したところを突かれるかもしれないので油断はしない。



時間がたっても真祖は全く動こうとする素振りを見せない。



「…人間じゃないか!!!」



「本当にそうか…?貴様からは同族の匂いがするのだがな…」



同族の匂いとはいったいどういうことだろうか。

もし本当に匂いがするとしたら、いつどこでどうしてこうなったのだろうか。



「…”鑑定”の対象を種族に集中してみろ。それで人間だったらもう疑わん。」



「分かった。これで人間だったら分かってるな?」



「ああ。その時は戦闘を開始しよう。」



少し不安な気持ちになりつつも種族に集中して”鑑定”した。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



種族 人族 (人:52% 魔物:48% ※魔人化進行中)



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「…は?なんで…?どうして…!!!」



「その様子だとやはり貴様は魔人だったようだな。」



「…どうして!?!?」



「貴様が使っているそのバフ、スライムの”物理攻撃耐性”にウルフの”俊敏”、その他いくつも…」



「…それが何なんだ?」



「人の形をして魔物のスキルを扱う…魔人の特徴ではないか。」



『…っ!?まさか…!!』



今までに”鑑定&略奪”で魔物スキルを習得していたことが原因なのだろう。

どんどん強くなっていくことに満足していたが、まさか手を出してはいけない力だとは…



「しかも貴様、一体いくつの魔物のスキルを…っ!?まさか…!!」



真祖は何を思ったのか、突然目の前で跪いた。

そして冷や汗をだらだらと流している。



「ああ…貴方様は魔王様だったのですね…今までの無礼をお許しください…」



「…は?どういう意味だ…?」



「その能力は古の時代に世界を支配した彼の魔王ヴォルフガング=シュライデン様と同じもの…ついに魔王様が御戻りになった…!!」



「……違う!!!俺はダグラス=アイザックだ!!前世も人間だった!!!」



前世”地球”での名前は赤橋達哉…ちゃんと思い出せる。

それに”地球”以外に前世の記憶やらは何もない。



大魔王の記憶も…無論ない。

たまたま俺の努力の結果が大魔王と似ていただけだ。



「魔王様…どうか我々を導いてください…魔族に救済を…!!」



前世では、何度も勇者や魔王のロールプレイを妄想したことはある。

実際になりたいと、そう思うことすらあった。



『早くフルダイブ型VRとかこういうファンタジー系のゲーム出ないかなぁ…』



などと切実に願ったこともあった。



しかし、この世界に転生して暖かい家族や背中を任せられる仲間ができた。

彼らを裏切るなど、絶対にあってはならないことだ。



魔王としてこの世界を楽しんでみたいという欲望もあるが、帰りを待ってくれる人がいるのだ。

俺は自分の欲望に従い、彼らを失うことの方が嫌だ。



「…俺は魔王にはならないっ!!!」



「そうですか…残念です。」



真祖は本当に残念がっているようで、とても暗い表情をした。

俺はそれがとても気掛かりに感じた。



「…気が変わったらいつでも私のところに来てください。配下になって御身に仕えると誓います。ではさようなら。」



俺は真祖の悲しそうな表情を見て、追撃する気を失った。



『本当に…魔族は人族の敵なのか…?』
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