2 / 19
バレンタインの話
しおりを挟む
鳴上先生が定年なのは知っていた。けれど、再任用とかの制度を使って、まだまだ教職を続けてくれると――続けて欲しいと思っていた。
私は鳴上先生も、先生の授業も大好きだったから。
「バレンタインにチョコまで渡した優衣にはショックだろうけどぉ~」
落ち込む私を励まそうと、美香は笑い話にしようとしてくれていた。
「日頃の感謝を込めただけです~。勘違いされそうな言い方しないでよね!」
私も笑おうと、冗談に乗って明るく返した。
鳴上先生はよく悩み相談に乗ってくれて、いつも「くだらんなぁ」と優しく笑ってくれた。
その笑顔は、困っている風でも、呆れている訳でもなく、そっと評価してくれていた。
――くだらんなぁ。
その言葉に、悩みを断ち切って貰った。何度も、何度も。そうして私は前を向けた。
「……残念だったね」
「……うん」
真面目なトーンの美香に、私も静かに返した。四月の中旬にある離任式に出られないのが、何よりも悔しかった。
日が暮れて、面会時間ギリギリにクラス担任の相澤栞《あいざわしおり》先生が見舞いに来てくれた。
「調子はどう? 優衣ちゃん」
相澤先生は入院中の課題と、授業の補習プリントを届けるためによく様子を見に来てくれる。文芸部の部顧問でもあるので、部員の私を名前で呼ぶ。
「元気ですよー相澤先生」
私は鳴上先生も、先生の授業も大好きだったから。
「バレンタインにチョコまで渡した優衣にはショックだろうけどぉ~」
落ち込む私を励まそうと、美香は笑い話にしようとしてくれていた。
「日頃の感謝を込めただけです~。勘違いされそうな言い方しないでよね!」
私も笑おうと、冗談に乗って明るく返した。
鳴上先生はよく悩み相談に乗ってくれて、いつも「くだらんなぁ」と優しく笑ってくれた。
その笑顔は、困っている風でも、呆れている訳でもなく、そっと評価してくれていた。
――くだらんなぁ。
その言葉に、悩みを断ち切って貰った。何度も、何度も。そうして私は前を向けた。
「……残念だったね」
「……うん」
真面目なトーンの美香に、私も静かに返した。四月の中旬にある離任式に出られないのが、何よりも悔しかった。
日が暮れて、面会時間ギリギリにクラス担任の相澤栞《あいざわしおり》先生が見舞いに来てくれた。
「調子はどう? 優衣ちゃん」
相澤先生は入院中の課題と、授業の補習プリントを届けるためによく様子を見に来てくれる。文芸部の部顧問でもあるので、部員の私を名前で呼ぶ。
「元気ですよー相澤先生」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
おっ☆パラ
うらたきよひこ
キャラ文芸
こんなハーレム展開あり? これがおっさんパラダイスか!?
新米サラリーマンの佐藤一真がなぜかおじさんたちにモテまくる。大学教授やガテン系現場監督、エリートコンサル、老舗料理長、はたまた流浪のバーテンダーまで、個性派ぞろい。どこがそんなに“おじさん心”をくすぐるのか? その天賦の“モテ力”をご覧あれ!

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
御伽噺のその先へ
雪華
キャラ文芸
ほんの気まぐれと偶然だった。しかし、あるいは運命だったのかもしれない。
高校1年生の紗良のクラスには、他人に全く興味を示さない男子生徒がいた。
彼は美少年と呼ぶに相応しい容姿なのだが、言い寄る女子を片っ端から冷たく突き放し、「観賞用王子」と陰で囁かれている。
その王子が紗良に告げた。
「ねえ、俺と付き合ってよ」
言葉とは裏腹に彼の表情は険しい。
王子には、誰にも言えない秘密があった。
うつろな果実
硯羽未
キャラ文芸
今年大学生になった小野田珠雨は、古民家カフェでバイトしながら居候している。カフェの店主、浅見禅一は現実の色恋は不得手だという草食系の男だ。
ある日母がやってきて、珠雨は忘れていた過去を思い出す。子供の頃に恋心を抱いていた女、あざみは、かつて母の夫であった禅一だったのだ。
女の子でありたくない珠雨と、恋愛に臆病になっている禅一との、複雑な関係のラブストーリー。
主な登場人物
小野田 珠雨(おのだ しゅう)…主人公。19歳の女の子(一人称は俺)大学生
浅見 禅一(あざみ ぜんいち)…31歳バツイチ男性 カフェ経営
※他の投稿サイト掲載分から若干改稿しています。大きくは変わっていません。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
隣の家に住むイクメンの正体は龍神様でした~社無しの神とちびっ子神使候補たち
鳴澤うた
キャラ文芸
失恋にストーカー。
心身ともにボロボロになった姉崎菜緒は、とうとう道端で倒れるように寝てしまって……。
悪夢にうなされる菜緒を夢の中で救ってくれたのはなんとお隣のイクメン、藤村辰巳だった。
辰巳と辰巳が世話する子供たちとなんだかんだと交流を深めていくけれど、子供たちはどこか不可思議だ。
それもそのはず、人の姿をとっているけれど辰巳も子供たちも人じゃない。
社を持たない龍神様とこれから神使となるため勉強中の動物たちだったのだ!
食に対し、こだわりの強い辰巳に神使候補の子供たちや見守っている神様たちはご不満で、今の現状を打破しようと菜緒を仲間に入れようと画策していて……
神様と作る二十四節気ごはんを召し上がれ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる