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11話 ようやく一息?
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俺達ふたりは外に出て、ようやくそこで一息ついた。
城内に居た時に聞こえた爆音は既に止まっており、とても静かだった。
「この先はどうするんだ?」
深山にそう訪ねると、出口から真っ直ぐ先を指さす。
「この先森の中に開けた所があるらしいの、そしたらそこに仲間になる人達がいるって書いてあったわ」
「森の中に?…変な生き物がいないといいな」
「フラグって知ってる?やめてよね、ホント」
俺の言葉にそう言って深山はウインドウを開きなにやら操作している。
すると、俺の視界端にパーティ申請の通知が届き、承認と拒否の文字が浮かぶ。
「これは承認すればいいのか?」
「うん、あくまで私の判断だけどそうした方がお互いの状態が分かると思って」
「わかった」
深山の言葉に頷いて承認を押すと、視界端に自分のステータス(主にレベルと体力、スキルを使用するのに必要な魔力)以外にもうひとつ表示される。
深山 舞愛という名前と共に、レベル・体力(HP)・魔力(MP)が表示された。
「え」
そしてそこで初めて知る。
既に深山の魔力が半分近くになっていた。
「魔力…かなり消費してないか?」
「私のスキル、かなり燃費悪いし元々の魔力量も低いから仕方ないわ」
基本的にステータスというのはレベルアップ、ジョブチェンジかクラスアップ、そして一度の戦闘毎で上がるとこの世界の講習で教わった。
更にはスキルの熟練度やレベルアップに伴って一度に消費する魔力量も下がっていく。
魔力を回復するには時間経過、専用の薬品とレベルアップが必要だ。
「なるべく魔力切れを起こさないように気をつけるわ」
「ああ」
深山が立ち上がったので俺も立ち上がり、先へと進んでいく。
「こんな道をこんな真夜中に歩くことになるなんてね」
深山がキョロキョロとしながらそう言った。
「正直気味が悪いな」
夜の森だからなのか、どこか不気味だ。
なんの鳴き声がしてるのかは分からないが様々な鳴き声や物音がする。
「灯りがあるだけマシね」
「それはそうかもしれない」
俺の初級魔法は魔力消費量が少ない。
元々英雄スキルを持つ新堂と同じメニューで鍛錬をさせられていた為か、ステータスも召喚直後より伸びており、スキルを継続して使ったとしてもあまり減っていかないのだ。
と、ふとそこで何か違和感を感じる。
背後からガサガサという音がしてるのだ。
「…物音がするぞ」
「え?」
俺の言葉に深山が振り返った直後、ガサガサという物音が止まった。
「何もしないじゃない」
「…いや、確かにしたんだよ」
だが、瞬間。
ドドドという音共に何かが迫り来る。
「え、マズくない?」
「いいから走るぞ!」
顔を引き攣らせながらそんな事を言う深山に俺はそう返して走り出す。
久しぶりにこんな全速力で走るからか、自分の体がいつもより軽い事に気付いた。
しかし、
「待って…!」
深山のスピードがどんどんと下がっていく。
少し立ち止まって後ろの様子を伺うと、そこには熊の様な生き物が猛スピードで迫っていた。
「絶対に振り返ったらダメだ!!」
「それ言われると余計怖くなるけど!?」
追いついた深山にそう言ってその手を引いていく。
しかし、後ろから迫る物音がどんどんと近くなっていく。
「…あっ」
「深山!?」
後ろから迫る物音に焦ってしまい、思わずスピードを上げた所で深山がそれについていけずに足をもつれさせて転んでしまった。
「大丈夫か!?すまん、スピード上げ過ぎた…!」
「な、なんとか…ひっ」
そこで体を起こした深山が背後から迫る主の方を見て、声にならない悲鳴をあげて固まる。
「逃げないと…!」
「分かってる…!」
しかし、深山が立とうとするも足が震えてしまって立ち上がれない。
既に物音の主は数メートルにまで迫っていた。
「ごめん、怖くて…動けない」
ふとその時、ある考えが頭に浮かぶ。
「待って…クマと同じなら動くものに反応するはず。なるべく動かずにじっとして過ごせば…」
「そ、そんなの無茶よ」
「そう言われても、もう他に手が無いんだ」
そして、その直後、熊がすぐ近くに来るなりゆっくりとコチラへと迫ってくる。
俺と深山のふたりはなるべくその場から動かない様にじっとして熊の様子を伺う。
「…っ」
そのクマはすぐ目の前に来ると、俺の匂いを嗅ぎ始める。
その獣の臭さに思わずウッとなるが、それを堪えて我慢する。
すぐに熊は興味を失ったように深山の方へと体を向ける。
そして俺と同様熊は深山へと顔を近付けた時、それは起こってしまった。
「…ひぃ…」
数センチまで迫ったその熊に深山が恐怖に顔を引き攣らせて背後に後ずさってしまったのだ。
その瞬間、熊の様子が変わり立ち上がって一吠えする。
鼓膜を震わせるその低音の声に俺も思わず顔をしかめる。
熊が深山に向かってその両手を挙げたのを見て、思わず叫ぶ。
「やめろ!!」
大きな声で叫ぶと、熊がのっそりとこちらを見たのを見た。その双眸がハッキリとコチラを捉える。
「深山!目を閉じて!」
深山にそう言い、俺は魔力量を上げて魔法を使う。
「こんな事しかできないけど!」
そして熊の目の前に飛び切りの光属性を放つ。
もちろんダメージなんてほぼ無いだろうが、目眩しとしては使えるはずだ。
すると、それをモロにくらい、グォォと熊が怯んだのを見て俺はすぐ様深山へと駆け寄る。
「深山!」
「ごめん、ごめん…怖くって…!」
深山は動いてしまったことに謝罪しながらも恐怖から震えて涙を流していた。
「俺も怖い、あんな無理な提案してしまってごめんな」
その言葉に頷き、肩を貸しながら立ち上がらせる。
後ろの熊は目が見えているのか分からないが、鼻をヒクつかせつつ俺達を探す様に頭を左右に動かしている。
「逃げよう…この先に行くんだ」
「うん」
そして俺達が動き出すと物音に反応したのか熊が一吠えして暴れ出す。
だがまだ目が見えてない様で、周囲をひたすらに攻撃している。
なんとか再度走り出す事に成功した俺達はその場から少しでも離れようとひたすらに前に進むのだった。
城内に居た時に聞こえた爆音は既に止まっており、とても静かだった。
「この先はどうするんだ?」
深山にそう訪ねると、出口から真っ直ぐ先を指さす。
「この先森の中に開けた所があるらしいの、そしたらそこに仲間になる人達がいるって書いてあったわ」
「森の中に?…変な生き物がいないといいな」
「フラグって知ってる?やめてよね、ホント」
俺の言葉にそう言って深山はウインドウを開きなにやら操作している。
すると、俺の視界端にパーティ申請の通知が届き、承認と拒否の文字が浮かぶ。
「これは承認すればいいのか?」
「うん、あくまで私の判断だけどそうした方がお互いの状態が分かると思って」
「わかった」
深山の言葉に頷いて承認を押すと、視界端に自分のステータス(主にレベルと体力、スキルを使用するのに必要な魔力)以外にもうひとつ表示される。
深山 舞愛という名前と共に、レベル・体力(HP)・魔力(MP)が表示された。
「え」
そしてそこで初めて知る。
既に深山の魔力が半分近くになっていた。
「魔力…かなり消費してないか?」
「私のスキル、かなり燃費悪いし元々の魔力量も低いから仕方ないわ」
基本的にステータスというのはレベルアップ、ジョブチェンジかクラスアップ、そして一度の戦闘毎で上がるとこの世界の講習で教わった。
更にはスキルの熟練度やレベルアップに伴って一度に消費する魔力量も下がっていく。
魔力を回復するには時間経過、専用の薬品とレベルアップが必要だ。
「なるべく魔力切れを起こさないように気をつけるわ」
「ああ」
深山が立ち上がったので俺も立ち上がり、先へと進んでいく。
「こんな道をこんな真夜中に歩くことになるなんてね」
深山がキョロキョロとしながらそう言った。
「正直気味が悪いな」
夜の森だからなのか、どこか不気味だ。
なんの鳴き声がしてるのかは分からないが様々な鳴き声や物音がする。
「灯りがあるだけマシね」
「それはそうかもしれない」
俺の初級魔法は魔力消費量が少ない。
元々英雄スキルを持つ新堂と同じメニューで鍛錬をさせられていた為か、ステータスも召喚直後より伸びており、スキルを継続して使ったとしてもあまり減っていかないのだ。
と、ふとそこで何か違和感を感じる。
背後からガサガサという音がしてるのだ。
「…物音がするぞ」
「え?」
俺の言葉に深山が振り返った直後、ガサガサという物音が止まった。
「何もしないじゃない」
「…いや、確かにしたんだよ」
だが、瞬間。
ドドドという音共に何かが迫り来る。
「え、マズくない?」
「いいから走るぞ!」
顔を引き攣らせながらそんな事を言う深山に俺はそう返して走り出す。
久しぶりにこんな全速力で走るからか、自分の体がいつもより軽い事に気付いた。
しかし、
「待って…!」
深山のスピードがどんどんと下がっていく。
少し立ち止まって後ろの様子を伺うと、そこには熊の様な生き物が猛スピードで迫っていた。
「絶対に振り返ったらダメだ!!」
「それ言われると余計怖くなるけど!?」
追いついた深山にそう言ってその手を引いていく。
しかし、後ろから迫る物音がどんどんと近くなっていく。
「…あっ」
「深山!?」
後ろから迫る物音に焦ってしまい、思わずスピードを上げた所で深山がそれについていけずに足をもつれさせて転んでしまった。
「大丈夫か!?すまん、スピード上げ過ぎた…!」
「な、なんとか…ひっ」
そこで体を起こした深山が背後から迫る主の方を見て、声にならない悲鳴をあげて固まる。
「逃げないと…!」
「分かってる…!」
しかし、深山が立とうとするも足が震えてしまって立ち上がれない。
既に物音の主は数メートルにまで迫っていた。
「ごめん、怖くて…動けない」
ふとその時、ある考えが頭に浮かぶ。
「待って…クマと同じなら動くものに反応するはず。なるべく動かずにじっとして過ごせば…」
「そ、そんなの無茶よ」
「そう言われても、もう他に手が無いんだ」
そして、その直後、熊がすぐ近くに来るなりゆっくりとコチラへと迫ってくる。
俺と深山のふたりはなるべくその場から動かない様にじっとして熊の様子を伺う。
「…っ」
そのクマはすぐ目の前に来ると、俺の匂いを嗅ぎ始める。
その獣の臭さに思わずウッとなるが、それを堪えて我慢する。
すぐに熊は興味を失ったように深山の方へと体を向ける。
そして俺と同様熊は深山へと顔を近付けた時、それは起こってしまった。
「…ひぃ…」
数センチまで迫ったその熊に深山が恐怖に顔を引き攣らせて背後に後ずさってしまったのだ。
その瞬間、熊の様子が変わり立ち上がって一吠えする。
鼓膜を震わせるその低音の声に俺も思わず顔をしかめる。
熊が深山に向かってその両手を挙げたのを見て、思わず叫ぶ。
「やめろ!!」
大きな声で叫ぶと、熊がのっそりとこちらを見たのを見た。その双眸がハッキリとコチラを捉える。
「深山!目を閉じて!」
深山にそう言い、俺は魔力量を上げて魔法を使う。
「こんな事しかできないけど!」
そして熊の目の前に飛び切りの光属性を放つ。
もちろんダメージなんてほぼ無いだろうが、目眩しとしては使えるはずだ。
すると、それをモロにくらい、グォォと熊が怯んだのを見て俺はすぐ様深山へと駆け寄る。
「深山!」
「ごめん、ごめん…怖くって…!」
深山は動いてしまったことに謝罪しながらも恐怖から震えて涙を流していた。
「俺も怖い、あんな無理な提案してしまってごめんな」
その言葉に頷き、肩を貸しながら立ち上がらせる。
後ろの熊は目が見えているのか分からないが、鼻をヒクつかせつつ俺達を探す様に頭を左右に動かしている。
「逃げよう…この先に行くんだ」
「うん」
そして俺達が動き出すと物音に反応したのか熊が一吠えして暴れ出す。
だがまだ目が見えてない様で、周囲をひたすらに攻撃している。
なんとか再度走り出す事に成功した俺達はその場から少しでも離れようとひたすらに前に進むのだった。
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