ケモノ

五十嵐 柚木

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3.仕事

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 「ヤクザですか?」
雪ちゃんの容赦のない言葉に、
「違うわい。ヤクザやったらこんなバレバレなところいないよ」
そう返答する。
「お仕事って何されてるんです?」
雪ちゃんの質問に僕は、
「コレ」
そう言って自室に置いてあった仕事道具をゆきちゃんに見せる。
「ギター、ケース?」
「そそ、一応バンドマンやってるからね~」
「そうだったんですか」
「うん。流れに身を任せてたらいつの間にかこんなことになっちゃってた」
自嘲気味に笑う僕に雪ちゃんは、
「どんな曲弾いていらしてるんですか?」
そんな質問を投げかけてくる。
「うーん、ロック?バラード?」
「なんで疑問系なんですか」
「だって色々歌うもん。僕のところのボーカル大抵の曲歌えるから。お陰で僕らの仕事量増えるんだけどね」
そう言って僕は、スマホに手を伸ばし、録音してあった音源を一つ再生する。
 「凄い。お上手ですね」
感嘆の声を上げる雪ちゃん。そんな彼女に、
「僕のとこのボーカルはまだまだこんなものじゃないよ」
そう言ってスマホをしまう。
 「あ、そうだ」
とあることを思いついた僕は、雪ちゃんにとある提案をする。
「ついてくる?」
ポカンとわかりやすく混乱してる雪ちゃんの手を引き、僕の自室に連れ込む。
「いやいや、いいです。言っても迷惑でしょう」
「いいからいいから、昨日着てた服はまだ乾かないし、しかもそのパジャマで家出れないでしょ?」
「うっ、、、」
抵抗しようとする雪ちゃんに、僕は諭すように戸棚から引き摺り出した服を押し付ける。
 少しして、着替え終えた雪ちゃんが出てくる。
「うん、やっぱり。それ似合うね」
僕が渡したのは黒い革ジャン、白いTシャツ、ジーパンのコーデ。
「こんな一昔前のギャルみたいな服、よくありましたね」
「んー、お姉ちゃんの趣味かな」
「なるほど、納得しました」
「納得?」
えぇ。と言って部屋の隅にある仏壇を指差す雪ちゃん。
「あちらの方がお姉さんですよね?」
「そうだよ~。僕を残したお姉ちゃんだよ~」
「お姉さんの遺影の服装と、私がもらった服装の雰囲気が同じでしたので」
確かに、お姉ちゃんと雪ちゃんに渡した服はたまたま似たような雰囲気の服装だ。
「まま、早く行こう。じゃないと僕が怒られちゃうし」
そう言って雪ちゃんの手を引き、玄関の方へと歩く。
 「さて、スタジオ目指してしゅっぱーつ」
そう言って僕たちは、僕の仕事場であるとあるスタジオを目指すのだった。
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