ケモノ

五十嵐 柚木

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2.養子

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 「雪ちゃんさ」
そして僕は、告げる。
「僕の養子にならない?」
雪ちゃんは、その場でポカンと口を開け僕を見ている。
「貴方、馬鹿なんですか?なんで見ず知らずの私に、そこまでするんですか。貴方と関わりがある訳でもないのに」
捲し立てるように、言葉を紡がれる。
「んー、雪ちゃんに同情してないって言ったら、まぁ、嘘になっちゃうけど。それでも、僕は、雪ちゃんがちょっと気に入ったからね」
「なんなんですか急に、気持ち悪いですよ」
少し仰け反りながら言う雪ちゃん。
「まぁ、この話は頭の片隅に少し置いておいて、考えておいてね」
分かりました、と言ってコップに注がれてあった水を一気に煽る雪ちゃん。
「僕、明日仕事だからそろそろ寝るね、寝室はあそこだから好きに使って」
「寝室はあそこって、、、貴方はどこで寝るんですか」
「ん?ソファーだけど」
そんな、悪いですよ。と言うゆきちゃんを横目に僕は、とあることを思い出し、雪ちゃんに質問する。
「雪ちゃん、施設には帰らなくていいの?」
「一応、、、施設の方には、『友達の家に泊まる』と伝えてます」
「ん、わかった。じゃぁ、おやすみ」
そう告げて僕はソファーに寝転がる。

 けたたましい電子音が耳に入り、僕は、眠気眼を擦る。少し空いたカーテンの隙間から朝日が差し込み、小鳥の囀りも聞こえてくる。
「ん~~。久しぶりにソファーで寝ると体が痛いなぁ~」
そんな事をぼやきながら体を起こし、朝食を取ろうとして立ちあがろうとする。
 かすかに足に違和感、地面が柔らかく暖かいのだ。足元に目をやると、そこには床で静かに寝息を立てる雪ちゃん。
「あら~~こうなっちゃったか~」
雪ちゃんを起こさぬよう小声でそう言い、静かに台所の方にむかい、2人分の朝食を作る。
 ガサガサと物音がし、むくりと雪ちゃんが体を起こす。
「おはよう。よく寝れた?」
首を縦に振る雪ちゃん。
「朝ごはん、あと少しでできるからもうちょっと待っててね」
「私も手伝います、、、」
目を擦り眠たそうに大きなあくびをする雪ちゃん。
「まだまだお眠じゃん。雪ちゃんコーヒーは飲める?」
「飲めます」
「ブラックにする?ミルク入れる?」
「ブラックでお願いします」
「あいよ~♪」
戸棚からコーヒー豆を取り出して、ゆっくりとコーヒーを淹れる。
 「そういえばさ、雪ちゃん、昨日の寝る前の話考えてくれた?」
「考えましたけど」
「けど?」
「本当に、本当に私を養子にする気ですか?」
「本気も本気。大マジだよ」
鼻歌を歌いながら朝食を雪ちゃんの前に置く。
「さ、召し上がれ」
「い、いただきます?」
手を合わせ、おずおずと言う雪ちゃん。
 私は席を立ち、
「んじゃ私仕事行く準備するから。何かあったら聞いてね」
そう言って仕事道具を手に取って自室に籠る。
 近くにあるジャケットを手に取り、羽織って姿鏡の前に立つ。
「やっぱりお姉ちゃんみたいにはならないか」
そう呟いて仕事の格好に着替える。
 扉を開けると雪ちゃんが洗い物をしており、僕の姿を見るなり、
「ヤクザか何かですか?」
そんな言葉を投げかけてくるのだった。
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