真昼の月面着陸

五十嵐 柚木

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プロローグ

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 燦々と照りつける太陽、長く、手入れの行き届いた、黒髪が靡く。彼女は、とある学校の屋上にいた。
 一歩、また一歩と前進する彼女。あと一歩を踏み出せば落ちると言うところまで行く彼女を、誰もが見ていることしかできない。
 それもそのはずだ。彼女は僕を人質にして投身自殺を図っているのだから。
「ごめんね、こんなことに巻き込んじゃって」
そんなことを言う彼女の声は震えていて、何かに怯えているようだった。
「そんなことないよ、僕は君と一緒にいれて本望さ」
彼女を諭すように、恐怖心を取り払うように言葉をかける。
 皆は考えたことがあるだろうか、真昼の月の位置を。
 そう、真昼の月は太陽と真反対、真反対と言うと語弊があるが、まぁ、今はどうでもいいだろう。
 僕らはこれから、真昼の月へ向かって空へ落ちる。言うなれば真昼の月面着陸だ。
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