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エピローグ

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「さあて、準備万端! 今日も見るよ~」

 この前ビデオ屋さんで見かけた作品〝アンクイモータル〟。略して〝あんきも〟。
 アンクイモータル→アンクィモータル→あんきも。
 ってちょっと無理はあるけど、私がルールだから許して。むん。

 今日見る回は、前回の失敗を踏まえてあんきもの三人が新しい戦いに向かっていく~っていう回なんだよね。
 仲間だと思ってた人たちが操られて、ノルくんたちを襲ったときはどうなるのかと思ったけど。
 なんやかんやあって、ピンチを乗り切って丸く収まる方向に持っていったんだよ。

『ふたりとも、準備はいいか!?』
『もっちろん! ね、グラフィス?』
『やれやれ。どうせ、まだだと言っても進むんでしょう。あなたたちは』

 で。
 この日もいつものように、三人でしか出せない空気を醸し出してダンジョンへと向かう。
 みんなが首から下げているのは、パーティーの象徴でもある不死のアンク。
 これがある限り、三人は不滅だよってことでノルくんが買ったんだっけ。

『早速ダンジョン攻略に……って言いたいところだけど、その前に』

 踵を返し、ノルくんが私と目が合うように振り返った。
 ノルくんに倣って、グラさんとヒイロちゃんまで。
 え、なになに? どうしたんだろう。

 ──コヤケさん、本当にありがとう。

 確かに、呼んだ。私の名前を。
 え、聞き間違いじゃないよね? 絶対に小宅って言ったよね!?
 でもなんでだろう。私はあくまでも一視聴者だし、感謝されることなんてなにもしてないよ?

 むしろ、いつも元気をもらってる私の方が感謝を──

「え……?」

 自然、私の頬を温かいなにかが伝った。
 拭っても拭っても、とめどなく溢れて、視界がぐしゃぐしゃになる。
 
 でも、嫌な感じがしない。悲しい感情が零れたんじゃない。むしろ、その逆。
 とても不思議で、それでいて暖かくて。
 
 私の心の中で、確かに迸る紅蓮。
 二度と消えることのない、情熱の炎。

 オタクとして、人として。
 かけがえのない経験をした気がした。
 なぜかわからない、本当に直感みたいなもの。
 
 この灯りを胸に抱いて、私は今日も生きていくんだ。
 明日も、明後日も、この先も、ずっとずっと。

 そしてオタクとして生きていくうえで、はっきりしてるものがもう一個あるんだよ。
 せっかくだから、声を大にして言わせてもらうね。

 ──嗚呼、今日も推しが尊い……。
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