上 下
14 / 32

14話 都落ち

しおりを挟む

 ダンジョン攻略を早々に切り上げ、ギルド本部まで戻ってきた。
 相変わらずここは賑やかで、たくさんの人が集まるよね。
 だけど、今日はいつもと少しだけ雰囲気が違った。

「お前、無事だったのかよ!? 急にどっか行っちまうから心配したんだぞ!?」

 大工のおじさんの知り合い、かな。
 私たちが帰ってくるなりまず大工のおじさんの方へ、親しげにおじさんが駆け寄る。

 ふたりの関係はわからないけど、相当心配してたんだってことはわかる。
 ちゃんとケガもなく送り届けれてよかったよ、ほんと……。

 みんなで顔を合わせて、そんな様子に安堵して笑い合った。
 今日の収穫は少ないけど、わかったことはちゃんとある。
 そのことも踏まえて、バドさんたちと作戦会議でも──

「お前ら、今すぐ離れろ! サグズ・オブ・エデンとグルのアンラッキーモータリティだ! さっき、アイツらに襲われたんだ!」

 駆け出した大工のおじさんが、突然そんなことを言い出した。

 ………………。
 …………。
 ……。

 いやいやいや、待って待って待って!!
 なんか、話が全然違う方向に行ってない!?
 みんなの視線が、一気に私たちに集まる。

 普通なら、いきなりすぎておかしな話だと思う。
 だって、私たちが大工のおじさんを送ったのに、その私たちが大工のおじさんを襲うなんてありえないもん。
 でも──

「お前ら……! 最近悪さばかりすると思ってたが、まさか俺のダチにまで手を出しやがって……!」
「善人ヅラしてこんなひでえことしやがって! お前らのこと、見直しかけてたってのによ!」

 次々に言葉を並べる大人たち。
 冒険者、鍛冶職人、ギルドの職員まで。
 ここ最近の行いで塗りつぶして、寄ってたかって目の前にいる人たちへ攻撃する。
 集団心理ってものなのかな。悪意の塊はどんどん大きく、醜くなってく。

 たくさんの人がおじさんの言葉を鵜呑みににして、私たちに言葉を吐き捨てた。

「ノーブルくんがそんなことするわけないじゃない!」
「グラフィス様とコヤケさんだって! 勝手なこと言わないで!」
 
 傷ついた一般のおじさんの味方をする、ギルドのみんな。
 ノルくんたちを支持してきたファンのみんな。
 その人たちが一斉に口喧嘩を始めた。
 まさに、一触即発。
 今すぐにでも乱闘が始まりそうな勢いだった。
 
 濡れ衣を着せられ、イメージダウンしつつあるサグズ・オブ・エデン。
 彼らの味方をする人なんて、誰ひとりとしていなかった。
 
「みんな落ち着いて! 私たちの話を──」

 間に入ってみたけど、もうそれどころじゃなかった。
 気がつけば、どうしようもなくなってた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった

ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」  15歳の春。  念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。 「隊長とか面倒くさいんですけど」  S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは…… 「部下は美女揃いだぞ?」 「やらせていただきます!」  こうして俺は仕方なく隊長となった。  渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。  女騎士二人は17歳。  もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。   「あの……みんな年上なんですが」 「だが美人揃いだぞ?」 「がんばります!」  とは言ったものの。  俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?  と思っていた翌日の朝。  実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた! ★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。 ※2023年11月25日に書籍が発売!  イラストレーターはiltusa先生です! ※コミカライズも進行中!

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

悪役令嬢に転生したので、剣を執って戦い抜く

秋鷺 照
ファンタジー
 断罪イベント(?)のあった夜、シャルロッテは前世の記憶を取り戻し、自分が乙女ゲームの悪役令嬢だと知った。  ゲームシナリオは絶賛進行中。自分の死まで残り約1か月。  シャルロッテは1つの結論を出す。それすなわち、「私が強くなれば良い」。  目指すのは、誰も死なないハッピーエンド。そのために、剣を執って戦い抜く。 ※なろうにも投稿しています

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

処理中です...