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遺書

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『僕はもうすぐ警察に捕まるだろう。それは仕方ないことだ。僕は、この国の法律を犯してしまったのだから。だが、それを決して羽瀬理ちゃんのせいだなんて思わないでほしい。君といられた時間は、とても幸せだった。それは何にも代えがたい時間だった。最初、羽瀬理ちゃんが僕は尋ねてきた時、僕は拒絶したが本当は嬉しかった。しかし、君を受け入れると僕は犯罪者になってしまう。だから拒絶するしかなかった。しかし、拒絶するうちに悲しくなってきた。なぜ、愛する人と一緒にいることが、許されないのか。そして僕は君を受け入れた。いずれ破局が来ることを知りながら。僕が警察に捕まるのは覚悟していた。だから、これは羽瀬理ちゃんのせいでも、君のお母さんのせいでもない。すべては僕の自業自得だ。だけど、僕は愛する人と一緒にいることのできないこの世界に絶望した。もうこんな世界では生きていたくない。よって僕は死を選ぶ。僕は死んだ後、猫に転生して羽瀬理ちゃんのところへ行くだろう。その猫は、いつか君に相応しい男を見つけて君のところへ導くだろう。だから羽瀬理ちゃんは幸せになってくれ』

「これは?」

 俺はスマホを返した。

「最後の猫云々は、私に後追い自殺を思い留まらせるために書いたのだと思います。でも、五年前にパイが家にやってきて、そして今日卓也さんがパイと一緒に家に来た。偶然とは思えなかったのです」

そういう事だったのか。

 俺は羽瀬理ちゃんを抱きしめた。

「卓也さん」
「羽瀬理ちゃん。僕は君に相応しい男か分からない。でも、なるべく相応しくなれるように努力するよ」
「はい。ありがとうございます」

 俺は羽瀬理ちゃんと唇を重ねた。
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