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玖
潜入工作員
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竜二は、足を引きずりながら移動していた。
やがて、一軒の家の前に来て表札を確認してから庭に入っていく。
この家は? 地図と照らし合わせると金氏家だった。
二件目に訪問したシェルターじゃないか?
竜二はシェルター入り口の前に来た。
「最悪の事態に、なったかも知れないわね」
「え?」
俺はキララ=中野刑事の方に視線を向けた。
「小淵沢君。君に黙っていた事があるの」
「なんでしょう?」
「さっき、君は北の工作員の話をしたわね」
「ええ」
「この金氏家の人間こそ、公安がずっとマークしていた北の国の潜入工作員よ」
「ええ?」
「竜二がここへ入ろうとしているという事は、工作員と窃盗団が結びついていたようね」
「どうなるのでしょう? その場合」
「工作員の目的は北の国が日本侵略に動き出した場合、日本内部から攪乱する事。そのための兵隊を確保するのに、窃盗団に目を付けた可能性があるのよ」
「しかし、北の国はすでに米軍によって壊滅させられたはず」
「彼らは、自分達を欺くために日米が流した偽情報だと考えているのよ」
「そうだとしても、北の国の国力で海を渡って攻めてくるなんて無理です」
「無理かどうかは関係ない。そういう事態があった時のために用意する。それが彼らに与えられた使命だから」
「そうだとして、窃盗団にはどんなメリットがあるのです?」
「隠れ場所と、武器を提供してもらえる。このシェルターも、工作員が核戦争に備えて確保したらしいの。実は金氏家だけでなく、荒らされていなかった無人シェルターのいくつかも、オーナーが潜入工作員なのよ」
「工作員と分かっていて、なぜ逮捕しないのです?」
「どうやって? スパイ防止法がなかったのに」
「いえ、戦前はそうですが、今は法律が改正されたでしょ?」
「そうだとしても、ここにいる保安官は君一人よ。君一人でできるの?」
「う……」
そうだった。チンピラ相手ならともかく、訓練積んだ工作員相手に、俺が勝てるわけない。
やがて、一軒の家の前に来て表札を確認してから庭に入っていく。
この家は? 地図と照らし合わせると金氏家だった。
二件目に訪問したシェルターじゃないか?
竜二はシェルター入り口の前に来た。
「最悪の事態に、なったかも知れないわね」
「え?」
俺はキララ=中野刑事の方に視線を向けた。
「小淵沢君。君に黙っていた事があるの」
「なんでしょう?」
「さっき、君は北の工作員の話をしたわね」
「ええ」
「この金氏家の人間こそ、公安がずっとマークしていた北の国の潜入工作員よ」
「ええ?」
「竜二がここへ入ろうとしているという事は、工作員と窃盗団が結びついていたようね」
「どうなるのでしょう? その場合」
「工作員の目的は北の国が日本侵略に動き出した場合、日本内部から攪乱する事。そのための兵隊を確保するのに、窃盗団に目を付けた可能性があるのよ」
「しかし、北の国はすでに米軍によって壊滅させられたはず」
「彼らは、自分達を欺くために日米が流した偽情報だと考えているのよ」
「そうだとしても、北の国の国力で海を渡って攻めてくるなんて無理です」
「無理かどうかは関係ない。そういう事態があった時のために用意する。それが彼らに与えられた使命だから」
「そうだとして、窃盗団にはどんなメリットがあるのです?」
「隠れ場所と、武器を提供してもらえる。このシェルターも、工作員が核戦争に備えて確保したらしいの。実は金氏家だけでなく、荒らされていなかった無人シェルターのいくつかも、オーナーが潜入工作員なのよ」
「工作員と分かっていて、なぜ逮捕しないのです?」
「どうやって? スパイ防止法がなかったのに」
「いえ、戦前はそうですが、今は法律が改正されたでしょ?」
「そうだとしても、ここにいる保安官は君一人よ。君一人でできるの?」
「う……」
そうだった。チンピラ相手ならともかく、訓練積んだ工作員相手に、俺が勝てるわけない。
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