『シェルターに逃げ込んだら、中に家出少女が棲みついていたのだが、どうすればいい？』

玖

「愛国魔法少女隊」と書いて「ウィッチーズ」とルビを入れる

　ミクちゃんを抱きしめたまま余韻に浸っているところへ、香菜ちゃんを湯の中を泳いで近寄ってきた。

「お兄さん」
「ん？　交代か？」
「いえ、ちょっと相談したい事が」
「なに？」
「私達、学校で演劇を始めたのですけど」

　やっぱりその話かい……

「タイトルが『魔法少女プリティカナン』というのですけど、このタイトル変更した方がいいかなって思ったのですけど」
「え？　タイトル？」

　必殺技じゃなかったのか？

「最初、魔法少女は私が変身するカナンだけだったのですが、ミクちゃんも亜衣ちゃんも魔法少女やりたいというので、結局魔法少女は三人になって、三人そろわないと敵を倒せないという設定にしたのです」
「ちょっとまって。亜衣ちゃんが絡んでいるという事は……」
「はい。亜衣ちゃんが生きていたころに、シェルターの中で三人集まって考えた遊びです。私のお兄様がその話を聞いてシナリオを書いてくれたのですが、亜衣ちゃんが亡くなってしまってから……私達、その遊びをしていなかったのです」
「そうだったのか」
「そのシナリオは、ずっとスマホに保存していて私が時々読むだけだったのですが、この前シェルター村に行ったときに、上野原さんに読まれてしまって」
「上野原？　リンちゃんに？　それともお姉さんの恋さん？」
「お姉さんです。そしてら、恋さんが凄く気に入って、私たちに演劇部作ってやりなさいって。一人足りないと言ったら、副会長さんも入部させられちゃって、さらにアキラさんが高校の演劇部だったから舞台作りに協力させられて……でも、魔法少女が三人になったのにタイトルが『プリティカナン』のままでいいのかな？　て思って」
「いや、気にする事ないと思うけどな。ミクちゃんどう思う？」
「あたしも変える必要ないと思うよ。元々香菜ちゃんが主役だったし」
「そうかな？　ミクちゃんが良くても、上野原さんが嫌じゃないかな？」

　リンちゃんは、そんな事気にする子じゃないと思うけどな。

「香菜ちゃん。どうしても気になるなら『魔法少女プリティカナン』の前に、チーム名を入れてみたらどうかな？　魔法少女隊とかウィッチーズとか」
「あ！　あたしもそれがいいと思う」

　結局タイトルは『愛国魔法少女隊ウィッチーズ～魔法少女プリティカナン』になった。そして、考えている間に、俺たちはすっかり逆上せてしまい、必殺技の話は出てこなかった。