死神幼女に勧誘されて異世界のスライムに転生。早く人間になりたい!

クラーゲン

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第七章

しいちゃんの痣

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 湖に浮かんだクルーザーに、俺は意識を移した。

 晴れ渡った青空の下、湖の上を多数の艀や河童達が人や物資を湖岸からクルーザーへ運んでいる。

 島へ渡る第一陣五十人とその荷物だ。

「すごい荷物だね、エリスちゃん。積み切れるのかな?」
「そのために、七日かけて船を大きくしたのだから」 

 エリスとマリカが、積み込み作業を眺めていたのは船橋ブリッジでの事。

 俺は二人の背後の床から人型分体を出した。

「今、帰ったぞ」

 二人の少女が振り返る。

「お帰りなさい」「どうでした?」
「挨拶で済ますつもりだったが、ウドウ王子とフィリスの内緒話を聞いてしまった。あいつ、当分こっちへ攻めてくる気はないらしい」

 だからと言って、防御を怠る気はない。向こうも間者を放っているだろうから、こっちが防衛を怠っていたら予定を変更して攻めてくるだろう。攻めてくる気を起こさせないだけの防衛体制は整えるつもりだ。

「ランドール。ちょっといい」

 背後から、しいちゃんが声をかけてきた。
 
「ん?」

 振り向くと、しいちゃんは死神の鎌を床に置いて、着物を少しはだけて右肩を出していた。

「しいちゃん。なんのつもりだ?」
「エロい事考えないでね。ちょっと、あたしの肩を見てほしいだけだから」

 しいちゃんの肩には、五芒星ペンタグラムの印があった。

「これ、どうしたの?」

 しいちゃんは着物を元に戻し肩を隠した。

「さっき、あたし、この惑星の女神様に会ってきたの」
「なんだって?」
「魂がかなり集まったから、今の仕事が終わったら地球に帰っていいって言われたのよ」
「え? しいちゃん。地球に帰っちゃうの?」
「帰らない」
「え?」
「あんたやアルベルトや、その他に何百人もの魂を運んで来た惑星よ。このまま地球に帰るのも、なんだかなって……ここで働かせてほしいと頼んだけど、人手……いや死神手は間に合っているらしいの。だから、あたしは転生することにしたわ」
「転生?」
「もちろん、転生したら死神だった時の記憶はなくしちゃうけどね。でも、あんた達が見たら分かるような印を付けてほしいって頼んだの」
「それが、今の五芒星ペンタグラム?」
「そう。まあ、あんたが人化するまではここにいるけど、人化した後あたしはこの惑星で転生する。だから、その後で肩に五芒星ペンタグラムの痣がある赤子が生まれたら、可愛がってあげてくれないかな」
「分かった。約束するよ」
「ありがとう。ランドール」

 程なくして、積み込み作業は終了した。

「出発!」

 水中ジェットを噴射して、クルーザーは発進した。多くの夢と希望を乗せて…… 
 

(次で最終回になります)
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