死神幼女に勧誘されて異世界のスライムに転生。早く人間になりたい!

クラーゲン

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第七章

船を選ぼう

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 水の国に戻ってから三日後の昼、俺達はマリカの家に集まっていた。

 広間の床には、何枚もの船の絵が並んでいる。

「私はこれが良いと思いますわ。真っ白な帆が、とても綺麗ですし」

 マリカの母、マルティナが指差したのは帆船の絵。横浜みなと博物館に展示されている日本丸を思わせるデザインだ。いかにも教養のある女性が選びそうな船だな。

「俺は、これがカッコいいと思うな」

 マリカの父は選んだのは、ヤマトを思わせる戦艦。やっぱり男だね。

「あたしはこれがいいかな。なんか懐かしくて」

 しいちゃんが選んだのは江戸時代の北前船を思わせる和船。やっぱ、江戸時代の子なんだな。

 何をしているかというと、これから建国予定地であるコリレ島へ行くための船のデザインを考えているのだ。

 何をのんきなと思うかも知れないが、水の国に戻ってから今まで忙しくてこういう事をしている暇がなかったのだ。

 

 三日前、遠征から戻った俺達は、先ずは水の国の王宮に出向き、ことの顛末の報告と今後の防衛体制の相談をした。まあ、これはほとんどアルベルトがやってくれたが、それからも遠征前にコリレ島に送り込んだ調査隊の報告を聞かなきゃならなかった。その報告を聞いている途中、金の国の商人が俺に商談を持ちかけてきた。

 この商人、どこかで俺が捨てた硬質化分体を手に入れたらしく、これを売ってほしいと言うのだ。

 ただ、ダイヤモンド並みの固さを持つ硬質化分体は加工ができない。

 だから、最初からブロック状に成型して大量に出してくれたら、高額で買い取るというのだ。いったい、何に使うのかと聞いたら、高級建材に使うらしい。

 俺としても悪い話ではなかった。新国家建設のために金は欲しい。

 なので、昨日はほぼ一日かけて、ブロック状の硬質化分体を作り続けていた。

 おかけで俺もエリスもへとへとだったが、そのおかけでようやく、じいさんに初給料を払う事ができた。

 そして、今になってコリレ島に行く相談を始めたわけだ。ちなみに船の絵は、水の国の造船業者から借りてきたもの。

 実はこの造船業者も転生者だったらしく、覚えている限り前世にあった船の模型を作ったり絵を描いたりしていたらしい。

「僕、これが良いです」

 アヤメの弟テクトが指差したのは芦ノ湖の海賊船。男の子だね。

「これなんか素敵です」

 マリカが指差したのはヨット。悪くないが、ちょっと小さいな。

 現在のところ、入植希望者が五百人ぐらい集まっている。一度に連れて行けなくても、第一陣は五十人ぐらい連れて行きたい。

「私は、これが良いと思います」

 アヤメが選んだのは漁船。実用的だね。

「あのお、大丈夫なのですか?」

 エリスが心配そうに言う。

「エリス。何か心配なのか?」
「だって、どの船にするにしても、ランドールさんが変化するのですよね。あんまり複雑な形にしたら、ランドールさんが大変じゃないですか?」
「ああ。それは大丈夫だ」
「大丈夫なのですか?」
「ここにある絵を貸してくれた造船業者の家に行けば、これらの精巧な模型があるのだよ。だから、どれにするか決まったら、模型をスキャンさせてもらい、それを拡大コピーすればいい」
「そうだったのですか」
「エリスはどれがいい?」
「そうですね。海賊船とかも楽しそうだけど、この船ってこれから私達が住む家になるのですよね。だから、住みやすい船が良いと思うのです。だから、これかな」

 エリスが一枚の絵を指差した。


 それから一週間後、俺はプール付き豪華クルーザーに変化していた。
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