死神幼女に勧誘されて異世界のスライムに転生。早く人間になりたい！

第五章

こちらの損害は？

「お皿が、割れちゃいました！」

　リビングの人型分体に意識を移すと、エリスとマリカと河童が割れた食器の欠片を箒で集めているところだった。

　硬質化分体の装甲は破られなかったが、損害皆無というわけにはいかなかったか。

「みんな、怪我はなかったか？」

　エリスが振り向く。

「私達は大丈夫でしたけど、マリカちゃんが持ってきたお皿やコップが……」
「済まなかった」

　やはり、これから戦いに出かけるというのに陶磁器の食器を持ってきたのは間違えだったな。

「マリカ。他に損害は無かったかい？」
「お鍋がひっくり返って、せっかく作ったお魚のシチューが台無しです」
「そうか。マリカ、戦闘中は振動が激しくなるから、炊事は戦闘が終わるまで待っていてくれ」
「ええ！　今夜は戦勝記念に御馳走にしようと思っていたのに……」
「すまん。その楽しみは、マリカの母さんを救い出した時まで取っておこう」
「わっかりました。今夜は簡単なものにしておきますね」
「たのんだよ」

　意識を鳥分体に移した。

　ウッド・ゴーレムはＡ・Ｂ二体とも、原生林に中で姿勢を低くして姿を隠していた。

　時折、ウドウ砲を撃ってくるが、近くに落ちるだけ。牽制のつもりだろう。
　　
　奴らの狙いは、ヒヨ湖に偵察に向かった歩兵達から俺の目を逸らすことだから。

　もっとも、それは見事に失敗している。

　偵察に向かった歩兵の一人の背中に、俺の分体を張り付かせているのだから。

　偵察隊の動きは、ヒヨ湖にいる偽装工作隊に逐一伝えている。そっちでは、偵察部隊の歓迎準備が整っていた。

　偵察部隊がヒヨ湖に到着するまで、まだ三十分ほどかかりそうだ。

　その間に……

　俺は監禁部屋に意識を移した。