死神幼女に勧誘されて異世界のスライムに転生。早く人間になりたい！

第五章

糸状体

「なんですと！　アヤメ君の弟が人質に？」

　俺の話を聞いて、じいさんは驚いていた。

「そうなんだ。それで、もうすぐアヤメがここへやって来る。俺の糸状体を見つけようというらしいが、カメレオン能力で隠している糸状体を見破る方法とかあるのか？」
「しばしお待ちを」

　じいさんは、本棚から一冊の本を取り出した。

　じいさんが調べている間に、レジナルドとレンゲが帰ってきたので、二人に事情を説明した。

　その一方で、俺は鳥分体を飛ばしてアヤメの様子を見張っていた。アヤメは一度家に戻って、箒を取り出した。

　その箒に何かを振りかけている。

「ランドール様」

　じいさんから声を掛けられて、俺は人型分体に意識を戻した。

「じいさん、何か分かったか？」
「カメレオン能力で隠している物でも、その上に何か粉がかかってしまえば見えてしまいます」
「粉？　どんな粉でもいいのか？」
「どんな粉でもいいですが、静電気などで糸状体に付着しやすく、かつ目立つ色が付いていれば」
「アヤメの様子を見ていたら、箒に何か振りかけていたぞ」
「おそらく『掃除をさせてくれ』と言って、粉の着いた箒でみんなの周りを掃くつもりでしょう。糸状体に箒が触れれば、糸状体に粉が付着して見つかってしまいます」
「まずいな」
「では、アヤメが来ても追い返しますか？」
「いや、追い返せば、怪しまれるだけだ」
「では」
「掃除をしても糸状体が見つからなければいい」
「しかし、どうやって？」
「糸状体を抜いても、一時間ぐらいなら分体は持つ。アヤメが来たら、俺はすべての糸状体を抜き取ってアヤメが帰るのを待つんだ。それしかない」

　アヤメが調べて糸状体が見つからなければ、かえって疑いが晴れてその後の活動がしやすくなる。