死神幼女に勧誘されて異世界のスライムに転生。早く人間になりたい!

クラーゲン

文字の大きさ
上 下
103 / 185
第五章

木の国の都

しおりを挟む
 じいさんの裏切りがばれていないのは好都合。おかげで、すんなりと木の国に入れた。

 馬車の中をじっくり調べられても、じいさんの私物以外は俺の身体を変形させた物ばかりで、怪しい物は何もないけど、二つだけ調べられると厄介なのがある。

 じいさん一人では怪しまれると思って、俺の人型分体を馬車の中に乗せてあるが厄介というのはそれではない。

 湖の本体から馬車まで伸びている糸状体と、途中の中継体も見つかれば厄介だが、カメレオン能力で見えなくしてあるので、見つかる心配はあまりない。

「ランドール殿。上手くいきましたな」

 俺の人型分体にそう話しかけた男こそ、その厄介なものその一だ。

 親衛隊長レジナルド。クマのような印象はないが、馬車の中で俺の分体と迎え合わせに座っている。

 もちろん、彼はウドウ王子から指名手配されている身なので、できれば連れてきたくはなかったのだが、本人が強く希望したので強引に押し切られた。

「隊長。まだ安心できません」

 レジナルドの横でそう言ったのが、厄介なものその二。

 レジナルドの部下で女戦士レンゲ。当然指名手配されている。レジナルドだけも厄介なのに……

 もちろん、この二人は変装している。俺の分体を顔に張り付け、造形能力で別人の顔になっていたのだ。

 そうでもしなければ、いくらぞんざいな検査でもばれていただろう。

 ちなみに設定上は、俺たちは森の民……森の中に住む国に属さない人達……の家族という事で、レジナルドが長男、俺が次男、サクヤが長女でレジナルドの妹で俺の姉。

 森の中を彷徨っていたじいさんを助けたので、じいさんがそのお礼に俺達を木の国の都に連れてきたという筋書きになっていた。

 それにしても……

 窓の外を流れる景色に目をやった。

 俺が転生して、二度目に見るこの世界の文明。

 異世界と言うから、中世ヨーロッパ風の町を想像していたが、目に前にある景色はまるで違っていた。

 木の国と言うだけあって、木造建築ばかり。江戸時代の日本を思わせる街並み。

 ただし、窓は紙ではなくガラスが使われている。

「やはり人通りが少ないですね」

 レンゲが呟くように言った言葉に、レジナルドは一言「うむ」と頷く。

 確かに通りに人の姿をあまり見かけない。昼だと言うのに……

「普段は、もっと人通りが多いのか?」

 俺の質問にレンゲが答える。

「いつもはもっと、賑やかな町です。原因はあれでしょう」

 赤い鎧を纏った兵士達を指差す。ウドウ王子の私兵か。

 時々、この私兵に馬車が呼び止められるが、関所で発行された書類を見せるとすんなりと通行できた。

「まるで戒厳令下の町だな」
「ランドール殿。まるでではなく、事実戒厳令が敷かれているのです」
「そうなの?」
「まだ、一部の国軍兵士が潜伏して抵抗を続けているのですよ。今回我々がランドール殿に同行を申し出たのは、彼らの状況を見るためです」
「なるほど」

 そうこうしている内に、馬車は一軒の家に入っていった。
しおりを挟む
「死神幼女に勧誘されて異世界のスライムに転生。早く人間になりたい!」エロ要素を抜いてこちらのサイトに載せてみました。よろしければブックマークなどの応援お願いします。
感想 1

あなたにおすすめの小説

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...