死神幼女に勧誘されて異世界のスライムに転生。早く人間になりたい！

第三章

捕虜

「捕虜の待遇を要求する」

　ウッド・ゴーレムから引きずり出されたフィリスは、開口一番こう言った。

「捕虜の待遇？　この世界にそんなのあるのか？　あんたの部下は、さっきから河童にボコられているけど」
「水の国の奴らは、そういう事に疎いのだ。お前なら、知っているだろう」
「知らない。俺はこの世界に来たばかりだから」
「……」
「まあ、俺も無暗に人を虐待したり、無益な殺生したりするのは好きじゃない」
「そ……そうか」
「だから、苦痛なく殺してあげる」
「ちょっ……ちょっと待て！　私は貴重な情報を、いろいろと知っているぞ。知りたいだろ？」
「うん。知りたい。だから殺す」
「なぜだあ!?　殺したら、情報を得られないだろ？」
「それが得られるんだな」

　俺はスキャン能力について説明した。

「まて、ランドール。お前がスキャン能力について説明したという事は、私が素直に白状すればそれは使わないでくれるという事だろう」
「そうだよ。話しが早いね」
「では、もっと落ち着いたところに、連れて行ってくれないか？」
「落ち着いたところ？」
「こんな胡瓜畑のど真ん中ではなく、どっか涼しい建物の中とか」

　こいつ……ここから、離れたがっているな。

「いいだろう」

　倒れたウッド・ゴーレムを調べている兵士たちの隊長に耳打ちしてから、俺はフィリスを連れてその場を離れた。

　俺たちが数百メートル離れたあたりで、ウッド・ゴーレムに群がっていた水の国の兵士や、河童たちが離れていく。

　え？　数百メートル離れた俺に、なぜそれが知覚できるかって？　それは……

　ウッド・ゴーレムの操縦室の中で、壁が左右に開いた。

「よし。誰もいないな」

　声の主は、安心して扉から出てくる。

「ふうん。そういう事か」
「ふぎゃあ！」
「操縦室に隠し部屋があると思って、分体を潜ませていたのだよ」

　そう。フィリスがあの場所を、やけに離れたがっているのを俺は妙に思っていた。

　操縦室の扉を開く前に、フィリスは式神を作っていたのではないのか？

　そして本人は隠し部屋に隠れ、俺が式神のフィリスを連れてウッド・ゴーレムから離れるのを待って出てくるつもりではないのか？

　そう思って俺は、フィリスを連れてその場所を離れた。スライム状の分体を残して……

　案の定、俺が連れていたフィリスは人型を残して消えた。

　その直後に隠し扉が開いたのだ。

　俺は早速、本物のフィリスを触手で絡め取って外へ引きずり出す。

「放せえ！」

　え？　こいつ誰？