死神幼女に勧誘されて異世界のスライムに転生。早く人間になりたい！

第三章

水の国攻防戦４

「お願い。もうこれ以上乱暴はしないで」

　美少女は、涙を流してフィリスに訴えていた。

「いいでしょう。あなたが、大人しく我々と同行していただけるなら」

　ん？　美少女に対するフェリスの話し方、まるで高貴な方に対する口調に変わったぞ。

　フィリスが俺の方を向いた。

「さて、ランドールよ。彼女はこう言っているが、まだ戦う気か？」
「いや、その前に聞きたいことがあるのだが」
「なんだ？」
「フィリス。お前が引き渡せと言っているのは、エリスの事ではないのか？」
「なに？」

　フィリスは、しばらく考え込んでから答えた。

「という事は、ここにエリスがいるのか？　いや、お前がここにいるという事は、いるのだろうな」
「知らなかったのか？」
「今、初めて知った」

　なんてこった。エリスがいることに、気が付いたわけじゃなかったのか。

「ランドールよ。つまりこういう事だな。私が『こむす……』いやいや『お姫様』を引きわせと言ったので、エリスの事だと思って、出てきたのだな？」
「そうだが……おまえさっき『お姫様』じゃなくて『小娘』と言わなかったか？」
「『小便臭い』とも言われました。酷い」

　美少女が涙ぐんでいる。よく分からんが、この女の子、かなり偉い人のようだな。

「め……滅相もない！　そのような失礼な事は言っておりません」
「いや、言っただろ。お前らも聞いたよな」

　俺は他の二機のウッド・ゴーレムに尋ねると、二機とも頷いていた。

「言ってたな」「言ってたよな」

　それぞれのパイロットの声が漏れ聞こえる。

「と……とにかく、今回の私の目的はエリスではない」
「そうなのか？」
「そうなのだ。まあ、これでお互いの誤解も解けたことだし、私はこのお方をお連れしなければならないので、このへんで失礼させていただくよ。ランドール君」
「待てい」

　美少女に手を伸ばしかけたフィリスの前に、俺は立ち塞がった。

「『今回』という事は『次回』はエリスを狙う気だな？」
「まあ、そういう事になるが、次回はまだ何日も後だし、君も疲れているだろう。今はお互い引かないか？」

　明日できることは今日やらない。というのが、前世での俺の生き方だったが……

「ダメよ！　ランドールさん！」

　操縦室の中で、エリスが叫んだ。

「王太子様を守ってあげて」

　なに？　王太子？