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第二章
ウドウ王子
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じいさんはさらに話を続けた。
「マルティナは、ウドウ王子に捕らえられております」
また、ウドウ王子?
「そのウドウ王子とは何者?」
「木の国の第二王位継承者でございます」
「木の国? しかし、エリスのいた寺院も、木の国だろ」
「王子は以前から、寺院にエリスの引き渡しを要求しておりました。しかし、寺院はずっとそれを拒んでいたのです」
「それで、ついに強行手段に出たわけか」
「さようです」
「で、じいさんは、なぜそれを知っているの?」
「まだ話していませんでしたが、フィリスはウドウ王子のエージェントです。私はそのフィリスに雇われた身でした」
「なるほど」
「ウドウ王子も最初は軍を使ってエリスを手中にしようとしましたが、粗暴な軍人どもではエリスを殺しかねない。そこで式神使いのフィリスを雇った次第です。しかし、あの女もかなり間抜けでしてな」
確かに……
「木の洞にエリスが隠れているのを確認したまではいいのですが、そこから逃げ出したエリスを全力で追いかけてしまったのです」
それ身代わりになった女官の方だな。
「私はエリスにしては大きいのでは? と言ったのですが、あの女は聞く耳持ちません。護衛の兵士が疲れて動けなくなるまで式神で攻め続けて、動けなくなったところを無傷で捕えたのはよかったのですが、それは身代わりだったのです。それが分かった時には、フィリスは魔力切れでした。洞に戻ると、エリスは逃げた後。私がダウジングでエリスが森へ逃げたことを突き止めたのですが、もうフィリスには追いかける力がありませんでした」
「それで、捕えた女官と兵士はどうしたの?」
「我々に随行していた兵士に引き渡しました。木の国の都に連行されたはずです」
「じゃあ、マルティナは木の国の都にいるんだね?」
「はい。恐らく。ウドウ王子の私邸でしょう。ただ、この事をエリス殿が知ったら、ランドール殿に奪還をお願いするのは目に見えております。そして、あなたはエリス殿に頼まれたら断れない」
「だから、あの二人に聞かせたくなかったのか」
「さようです。言っておきますが、ランドール殿。マルティナを取り返すとなると、ウドウ王子と事を構える事になります。やるからには、それなりの覚悟が必要ですぞ」
ううむ……じいさんとしては、俺が軽率な行動をとらない様にしようとして、二人に話さないで俺としいちゃんにだけ話したわけか。
「しいちゃんはどう思う?」
「あたしとしては、あんたがこの世界に定着するまで死なれちゃ困るんだけどな」
だろうね。
「でも、ランドールは助けたいのでしょ」
「そりゃあ、助けられるものなら……しいちゃんは反対なのでしょ?」
「闇雲にいくなら反対よ。でもきちんとプランを練ってやるなら賛成。さあ、どうする?」
「少し考えさせてくれ」
「マルティナは、ウドウ王子に捕らえられております」
また、ウドウ王子?
「そのウドウ王子とは何者?」
「木の国の第二王位継承者でございます」
「木の国? しかし、エリスのいた寺院も、木の国だろ」
「王子は以前から、寺院にエリスの引き渡しを要求しておりました。しかし、寺院はずっとそれを拒んでいたのです」
「それで、ついに強行手段に出たわけか」
「さようです」
「で、じいさんは、なぜそれを知っているの?」
「まだ話していませんでしたが、フィリスはウドウ王子のエージェントです。私はそのフィリスに雇われた身でした」
「なるほど」
「ウドウ王子も最初は軍を使ってエリスを手中にしようとしましたが、粗暴な軍人どもではエリスを殺しかねない。そこで式神使いのフィリスを雇った次第です。しかし、あの女もかなり間抜けでしてな」
確かに……
「木の洞にエリスが隠れているのを確認したまではいいのですが、そこから逃げ出したエリスを全力で追いかけてしまったのです」
それ身代わりになった女官の方だな。
「私はエリスにしては大きいのでは? と言ったのですが、あの女は聞く耳持ちません。護衛の兵士が疲れて動けなくなるまで式神で攻め続けて、動けなくなったところを無傷で捕えたのはよかったのですが、それは身代わりだったのです。それが分かった時には、フィリスは魔力切れでした。洞に戻ると、エリスは逃げた後。私がダウジングでエリスが森へ逃げたことを突き止めたのですが、もうフィリスには追いかける力がありませんでした」
「それで、捕えた女官と兵士はどうしたの?」
「我々に随行していた兵士に引き渡しました。木の国の都に連行されたはずです」
「じゃあ、マルティナは木の国の都にいるんだね?」
「はい。恐らく。ウドウ王子の私邸でしょう。ただ、この事をエリス殿が知ったら、ランドール殿に奪還をお願いするのは目に見えております。そして、あなたはエリス殿に頼まれたら断れない」
「だから、あの二人に聞かせたくなかったのか」
「さようです。言っておきますが、ランドール殿。マルティナを取り返すとなると、ウドウ王子と事を構える事になります。やるからには、それなりの覚悟が必要ですぞ」
ううむ……じいさんとしては、俺が軽率な行動をとらない様にしようとして、二人に話さないで俺としいちゃんにだけ話したわけか。
「しいちゃんはどう思う?」
「あたしとしては、あんたがこの世界に定着するまで死なれちゃ困るんだけどな」
だろうね。
「でも、ランドールは助けたいのでしょ」
「そりゃあ、助けられるものなら……しいちゃんは反対なのでしょ?」
「闇雲にいくなら反対よ。でもきちんとプランを練ってやるなら賛成。さあ、どうする?」
「少し考えさせてくれ」
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「死神幼女に勧誘されて異世界のスライムに転生。早く人間になりたい!」エロ要素を抜いてこちらのサイトに載せてみました。よろしければブックマークなどの応援お願いします。
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