32 / 185
第二章
水妖6
しおりを挟む
声の方に目を向けると、川面に浮かび上がった河童の甲羅の上に、エリスがちょこんと座っていた。可哀想に、服はびしょびしょだ。
そして、そのすぐ隣にもう一匹の河童が浮かび、その甲羅の上にはエリスより少し背の低い、長い黒髪をおさげにした女の子が座っていた。それはいいのだが、その女の子の服装……なぜスク水? ていうか異世界なのに、なぜスク水が?
女の子の着ている紺のスク水の胸のあたりには、四角い白い布が貼ってあってカタカナで「マリカ」と書かれていた。
マリカというのが、この女の子の名前だろか?
俺は舟の舳先を顔に変形させて話しかけた。
「エリス。どういう事だ? 河童は敵じゃないって?」
「話せば長くなるのだけど、この……」
エリスは、隣の女の子を指差した。
「マリカちゃんはあたしのお友達で、それで河童さんたちは、マリカちゃんのお友達で、早い話が、あたしが敵に捕まっていると勘違いして……」
「ああ、だいたいわかった。つまり、こちらのマリカちゃんは、エリスが敵に捕まったと勘違いして、河童といっしょに助けにきたのだね」
すると、マリカは俺に深々と頭を下げた。
「ごめんなさい! 私、てっきりあなたがウドウ王子の手の者かと……」
ウドウ王子? 誰だ? いや、考えるまでもない。数あるエリスの追手の一人だろう。それにしても……こんな事を、前世で友達一人もいなかった俺が言うのもなんだが……
「エリスに、友達がいたのか?」
「あたしだって、友達の一人ぐらいいます」
はい。すみません。いるでしょうね。普通は……いない俺が普通じゃないのであって……
「いや。寺院にずっと幽閉されていたというから、同じ年頃の子とは出会えないのではないかと……」
「マリカちゃんは、あたしのお世話をしてくれていた女官の娘なのです」
マリカは下げていた頭を上げて俺を見つめた。
「初めまして。私、エリスちゃんのお世話役をさせて頂いいた女官マルティナの娘でマリカと申します」
「あ、これはどうも。ランドールと申します。俺は……」
俺の事はなんて説明すりゃいいんだ? 『今スライムやっています』は変だし……いや、その前に聞くべきことが……マリカは女官の娘という事は……
「するとエリス達が木の洞に隠れている時に、助けを呼びに行ったというのは君か?」
「はい。私です」
話を聞いてみると、どうやらマリカとマルティナの母娘は、元々水の国の出身で、マリカは子供のころから河童と友達だったというのだ。一年ほど前、マルティナが木の国の寺院で女官を募集している事を知って応募した。採用が決まってから、マリカを連れて木の国行って母娘でエリスの世話をしていたというのだ。
ところが数日前、寺院にウドウ王子率いる軍勢が攻め込んできた。マルティナとマリカはエリスを連れて、抜け穴から脱出したというのである。
「でも、マリカちゃんが無事でよかったよ。みんな、マリカちゃんが敵に捕まったと心配していたのよ」
エリスは嬉しそうにマリカの手を握る。
「ゴメンね。エリスちゃん。私、木の洞から出た後、川を筏で下って水の国に向かったの。でも、途中で何度も筏が引っかかって……河童さんたちを連れてきたときには、洞には誰もいなくて」
襲撃された後だったのか。
「あきらめて水の国へ戻る途中で、森の上を変な家が動いているのが見えて」
あれを、見られていたのか。やはり目立つな。なんとかしないと……
「家が中洲に降りたから、様子を見ていたらエリスちゃんがいるのが分かって……助けなきゃと思って……」
「ありがとう。マリカちゃん。助けに来てくれて」
エリスはマリカを抱きしめた。
そして、そのすぐ隣にもう一匹の河童が浮かび、その甲羅の上にはエリスより少し背の低い、長い黒髪をおさげにした女の子が座っていた。それはいいのだが、その女の子の服装……なぜスク水? ていうか異世界なのに、なぜスク水が?
女の子の着ている紺のスク水の胸のあたりには、四角い白い布が貼ってあってカタカナで「マリカ」と書かれていた。
マリカというのが、この女の子の名前だろか?
俺は舟の舳先を顔に変形させて話しかけた。
「エリス。どういう事だ? 河童は敵じゃないって?」
「話せば長くなるのだけど、この……」
エリスは、隣の女の子を指差した。
「マリカちゃんはあたしのお友達で、それで河童さんたちは、マリカちゃんのお友達で、早い話が、あたしが敵に捕まっていると勘違いして……」
「ああ、だいたいわかった。つまり、こちらのマリカちゃんは、エリスが敵に捕まったと勘違いして、河童といっしょに助けにきたのだね」
すると、マリカは俺に深々と頭を下げた。
「ごめんなさい! 私、てっきりあなたがウドウ王子の手の者かと……」
ウドウ王子? 誰だ? いや、考えるまでもない。数あるエリスの追手の一人だろう。それにしても……こんな事を、前世で友達一人もいなかった俺が言うのもなんだが……
「エリスに、友達がいたのか?」
「あたしだって、友達の一人ぐらいいます」
はい。すみません。いるでしょうね。普通は……いない俺が普通じゃないのであって……
「いや。寺院にずっと幽閉されていたというから、同じ年頃の子とは出会えないのではないかと……」
「マリカちゃんは、あたしのお世話をしてくれていた女官の娘なのです」
マリカは下げていた頭を上げて俺を見つめた。
「初めまして。私、エリスちゃんのお世話役をさせて頂いいた女官マルティナの娘でマリカと申します」
「あ、これはどうも。ランドールと申します。俺は……」
俺の事はなんて説明すりゃいいんだ? 『今スライムやっています』は変だし……いや、その前に聞くべきことが……マリカは女官の娘という事は……
「するとエリス達が木の洞に隠れている時に、助けを呼びに行ったというのは君か?」
「はい。私です」
話を聞いてみると、どうやらマリカとマルティナの母娘は、元々水の国の出身で、マリカは子供のころから河童と友達だったというのだ。一年ほど前、マルティナが木の国の寺院で女官を募集している事を知って応募した。採用が決まってから、マリカを連れて木の国行って母娘でエリスの世話をしていたというのだ。
ところが数日前、寺院にウドウ王子率いる軍勢が攻め込んできた。マルティナとマリカはエリスを連れて、抜け穴から脱出したというのである。
「でも、マリカちゃんが無事でよかったよ。みんな、マリカちゃんが敵に捕まったと心配していたのよ」
エリスは嬉しそうにマリカの手を握る。
「ゴメンね。エリスちゃん。私、木の洞から出た後、川を筏で下って水の国に向かったの。でも、途中で何度も筏が引っかかって……河童さんたちを連れてきたときには、洞には誰もいなくて」
襲撃された後だったのか。
「あきらめて水の国へ戻る途中で、森の上を変な家が動いているのが見えて」
あれを、見られていたのか。やはり目立つな。なんとかしないと……
「家が中洲に降りたから、様子を見ていたらエリスちゃんがいるのが分かって……助けなきゃと思って……」
「ありがとう。マリカちゃん。助けに来てくれて」
エリスはマリカを抱きしめた。
0
「死神幼女に勧誘されて異世界のスライムに転生。早く人間になりたい!」エロ要素を抜いてこちらのサイトに載せてみました。よろしければブックマークなどの応援お願いします。
お気に入りに追加
290
あなたにおすすめの小説
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる