死神幼女に勧誘されて異世界のスライムに転生。早く人間になりたい！

第一章

俺は平和主義者なのだけどな

　アルベルトが俺の前に跪いた。なんだろう？　いきなりかしこまって……

「ランドール殿。是非私を雇って下さい」
「え？」

　雇ってって？　つまり就職活動って事？　そんな事言ったって、俺は会社を経営しているわけじゃないし……

「いや、無理無理……俺、報酬出せないし」
「お金はいりません。報酬として、私に地位を与えて頂ければ」
「地位って……いや、俺はただのスライムだし……」
「ただのスライムではありません。絶大な力を持ったスライムです。そして、いずれは私のように人間になる」
「絶大な力？」

　しいちゃんの方に顔を向けた。

「俺、絶大な力なんか持っていたっけ？」
「持っているわよ。普通のスライムには、こんな移動要塞みたいな物にはなれないから」
「移動住宅って言ってほしいな。装甲があるわけじゃないし、武器だってないし」
「あんたなら、武器なんていつでも作れるでしょ」
「まあ、そうだけど……」

　俺はアルベルトの方へ向き直った。

「なんで、俺に雇われたいの？」
「ランドール殿。あなたはその能力を何に使われるおつもりか？」
「なにって……そりゃとりあえず、生き延びるために」
「もったいない。それだけの力が、あれば国を一つ手に入れる事もできますぞ」
「それって、国を侵略するって事？　俺、平和主義者なのだけどな……」
「平和主義ですと？」
「無益な殺生はしたくないし、弱い者いじめもしたくない。力だって、防御以外に使いたくないし」

　これで、諦めてくれるかな？

「素晴らしい」
「へ？」
「素晴らしいお考えの持ち主だ。ますます、あなたには王になって頂きたい」
「いや……俺、王様なんかになりたくないし」
「なんと無欲な」

　いや、別に無欲わけじゃなくて……

「それにさ、アルベルトさんは、フィリスに仕えていたのではないの？　いいの？　裏切っちゃって」
「あの女には、金で雇われただけです。それに、私を見捨てて逃げました。もう、従う義理はありません」
「そうなの……でも、俺はあんたを雇わないよ」
「では、こういうのはどうでしょう？　ランドール殿も転生したばかりで、この世界の事にあまり詳しくない。そこで、数日間私がランドール殿に、この世界の社会や文化をレクチャーするというのは？」
「まあ、そうしてもらえると助かるけど、それに対して俺の払う対価は？」
「その間だけ、私をこの屋敷に住まわせて頂き、食事を分けて頂くというのは？」
「まあ、そのぐらいなら」
「三日間私の話を聞いて、やはり王になりたいと心変わりされた時は、いつでも申し出て下さい。私はそのお手伝いをさせて頂きます」

　そうはならないと思うな……