死神幼女に勧誘されて異世界のスライムに転生。早く人間になりたい!

クラーゲン

文字の大きさ
上 下
6 / 185
第一章

洞窟の中2

しおりを挟む
「あたし逃げて来たのです」

 エリスはようやく口を開いた。

「逃げてきた? 誰から?」

 しいちゃんの問いにエリスは首を横にふる。

「分かりません」
「心当たりはないの?」
「いいえ。心当たりは一杯あります。あり過ぎて分からないのです」

 あり過ぎの方かい!

「心当たりがあり過ぎって……あんた、何をやらかしたのよ?」
「何もやっていません。ただ、あたしが狙われるのには理由があるのです。ですが、それは言えません」
「どうして? 言ったら、あたしもあんたを狙うとでも? あたしみたいな子供が怖いの?」
「あなた……人間じゃありませんね」

 図星を突かれて、しいちゃんは少し狼狽えた。

「これは驚いた。それが分かるって事は、あなた見かけ通りの村娘じゃないわね。追手の目を誤魔化すために、そんな恰好をしていた。違うかしら?」
「……」

 エリスは無言で俯いた。

「まあ、言いたくなきゃ言わなくてもいいわ。それより、どうもお客さんが来たみたいだけど」
「お客さん?」
「武装した男たちが、この洞窟に入って来たわ」

 ちなみにそれが分かったのは、糸状に伸ばした俺の身体を洞窟中に張り巡らせてあったから。

 その糸状体の近くに人が通ると振動で分かる。それで振動を感知すると、糸状体を変化させて目や耳のような機能を持つ器官にして侵入者の情報を得るのだ。

 そしてしいちゃんは、その感覚を俺からリンクして受け取っている。テレパシーのようなものだが、思考までは読み取れていないらしい。
 
 しいちゃんは、さらに言葉を続けた。

「エリスを追ってきたみたいだけど引き渡してほしい?」
「だ……ダメです」
「では、やっつけて欲しい?」
「できれば、そうしてほしいのですが……できますか?」
「できるわよ。まあ、やるのはあたしの部下だけど」

 部下って、俺の事かい!

「ただし、タダではやっつけられないわね」
「お金でしたら、この通り」

 エリスは懐から皮袋を取り出した。

「ううん……お金じゃダメなのよね」
「では……なにを……?」
「あなたの精気」
「え?」
「あたしの部下が戦うには魔力が必要なの。その魔力の源である精気を分けて欲しいの。大丈夫。死ぬことはないから」
「精気って……まさか!」

 エリスは突然周囲を見回した。

 そして、今まで自分の座っていたマットレスから飛び上がる。

 さらにテーブルや揺り椅子に手を触れた。

「やはり……」

 エリスは、しいちゃんを睨みつけた。

「あら? エリスちゃん、気がついちゃった」
「森の中で、あたしを襲ったスライム。あなたの部下ですね」
「ばれちゃったわよ。ランドール。姿を現して」

 そんな事言ってもなあ……

「姿なんて、最初から隠していないけどなあ……」
「そうだったわね。じゃあ本来の姿に戻って」
「俺には本来の姿はまだないって、しいちゃんが言ったんだけど」
「そうだった。それじゃあ転生前の姿……と言っても転生直前だとエリスちゃんが怖がるから……」

 悪かったな。

「十六歳ぐらいの姿で」
「やってみる」

しおりを挟む
「死神幼女に勧誘されて異世界のスライムに転生。早く人間になりたい!」エロ要素を抜いてこちらのサイトに載せてみました。よろしければブックマークなどの応援お願いします。
感想 1

あなたにおすすめの小説

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

安全第一異世界生活

笑田
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん) 異世界で出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて 婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の冒険生活目指します!!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...