死神幼女に勧誘されて異世界のスライムに転生。早く人間になりたい!

クラーゲン

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序章

プロローグ

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「はじめまして。蘭堂らんどう るい様」

 その幼女は、突然やって来た。

 DVDと漫画とラノベと美少女フィギュアでごった返した俺の部屋に……

 鍵をかけ忘れたかな? いや、ドアにはきちんと鍵がかかっている。

 改めて幼女の姿を見つめた。

 歳は七~八歳ぐらい。黒いおかっぱ頭に、かんざしをつけている。

 出で立ちは和服。七五三の帰りか? 

 ではなさそうだな。

 千歳飴の代わりに、飾りのついた大きな鎌を持っている。

「あたしがどうやってここに入ったのか? と、思っていますね?」
「思っているよ」
「実は、あたしは人間じゃありません」
「人間じゃない? ああ! 分かった」
「分かりましたか? あたしが何者か」
「妖怪サトリだろ」
「違います!」
「違うの? だって、俺の考えた事を言い当てたじゃん」
「このぐらい、サトリじゃなくても分かります。あたしはこれですよ」

 幼女は、鎌を突き出した。

「鎌屋さんか?」
「違います! 死神です」
「死神?」

 死神というと、なんか骸骨のイメージが強いのだが……

 こんな可愛い、幼女の死神もいるのか。

 でも、良かった。

 やっと来てくれたのか。

 これでやっと、この惨めな人生とおさらばできる。

 思えば、ろくな人生じゃなかった。

 幼稚園から小学校、中学校、高校とずっと苛められ、大学では友達も恋人もできず、就職もできずこの部屋に引きこもる日々……

 ようやく、この惨めな人生が終わるのか……

「ありがとう。やっと迎えに来てくれたんだね」

 俺は幼女の手を握りしめ、感謝の意をしめした。

 だが、幼女は困ったような顔をする。

「ううん。ちょっと違うんですけどね」
「違うの?」
「あなたの人生は、まだ二十年残っています」
「なんだってえ!」

 こんな惨めな人生が後二十年も!

「ただし、望むなら一週間後に、人生を終了させる事もできます」
「望む! 望むから、一週間と言わずに今すぐ頼む」
「手続きがあるので、今すぐは無理ですが、望みますか?」
「だから、そう言っているだろ」
「そうですか。ただ、それには条件があります」
「どんな条件?」
「この世界ではなく、別世界に転生してもらう事になるのですが、よろしいですか?」
「え?」

 それって……つまり……異世界転生!

 やった! 俺、異世界で勇者になれるんだ!

「行く! 別世界でも、異世界でも」
「分かりました。では、手続きをしてきます。一週間お待ちください」

 そして一週間後、俺は死んだ。

 死因は心臓麻痺らしいが、寝ている間だったのでほとんど苦痛はなかった。

「ささ。お迎えに参りました」

 自分の死体を上から見下ろしていると、例の鎌幼女が俺を迎えに来てくれた。

 幼女は鎌をふって、俺の肉体と幽体をつないでいる細い紐を断ち切る。 

 そして俺は、幼女に手を引かれて転生先へと向かった。

 しかし……

「なんじゃこりゃあ!」

 俺は転生した自分の姿を見て絶叫した。
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