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男の娘 (三人称)

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「男の子が、こんな恰好したら、変態さんだもんね」
「おば……お姉さんが、無理やりこんな恰好させたんじゃないですか!」
「だって、シェルターの中には、男の子服がなかったのだからしょうがないでしょ」

 数時間前、Jアラートが鳴り響いた時、律子は甥っ子の諒を連れてシェルターに逃げ込んだのだ。

 ちなみに他の家族は、律子の父で諒の祖父にあたる人物の葬儀に出かけていた。

 この二人も葬儀場に出かけていたのだが、諒が途中で気分が悪くなったために律子が車に乗せて家に引き返していたのだ。

 Jアラートが鳴ったのはそのときの事。

 だが、急いで逃げ込んだ諒は着替えがなく、喪服のまま。

 喪服が汚れると言われて、先ほど律子に無理やり着替えさせられたのだ。

「ここに男の子の服はないから、このワンピースで我慢してね」

 諒は、ようやく叔母の手から逃れた。

「なんで、女の子の服は都合よくあるんですか?」
「それは、私の昔の服よ」
「だからって、鬘まで被らなくても」
「だって、せっかく可愛い服を着たのだから、髪も可愛くしないともったいないでしょ」

 諒のサラサラロングヘアーの正体はヘアピースだったのだ。

「なんでそんな服をシェルターの中に……」
「シェルターの中で、私に娘ができるかもしれないじゃない。その時のために」

 ならばなぜ、息子に備えて男の子の服も用意しない?

 律子の言っている事は嘘である。

 シェルターの中にそんな服は元々なかった。

 ただ、シェルターに入るときに諒を先に行かせた後、自分は部屋に入って着替えを取ってくるついでに少女時代に買ってタンスの肥やしになっていた服をいくつかとヘアピースを持ってきたのだ。

 もちろん、諒に着せる目的で……
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