Unknown World

二郎マコト

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四話目 Unknown World

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「これだよ。これがさっき話したテレビ。ほら、砂嵐が写ってるでしょ?」

  彼女に案内された先は、三階の端っこにある一つの教室。僕たちが上がってきた階段からは一番離れたところにある。
  教室内の窓際にテレビがあった。窓を背にして、こちらに画面を向けているところに、何か不自然なモノを感じる。

  そして画面には確かに、砂嵐が写っていた。
  あのザーッ、という不快な音はない。ただ灰色と白が流れるように動いているだけ。

 「よく、見つけましたね。ここ、階段から相当離れてるのに・・・」
「あはは、何か使えるものないかな、誰かいないかな、って思ってウロウロしてたら結構奥の方まで入り込んじゃってさ。いつもの悪いクセで・・・」

  彼女は頬をかきながら苦笑いをする。いつもの悪いクセ、ってことはもしかして彼女は、気になるとかなり物事の細部まで深く入り込む性格なのだろうか。あくまで推測だけれど。

「あっ、でも! こうして変なとこ見つけられたから、結果オーライじゃないかな」
「まあ、確かに・・・でもこれがこの世界と何か関係してるかわかるかと言ったら今のところ何とも・・・」
「うーん、そうだけどさ、自分たちなりに調べてみれば何かわかることが何かあるかもしれないじゃん?」
「それはそうですけど・・・」
  続いて、苦笑いから一転。朗らかな笑顔を顔に浮かべる。
  元気だ。よく笑う人だ。こんな風に毎日を過ごせていれば、もう少しは僕も学連生活が楽しく–––––––、
  なっているかはわからないけれど。
  とにかく、僕とは多分、性格的に正反対の人なのだろう。

 まあ、だからというか、なんというか、
 そりがあわなさそうだ、と心の中で呟いた。

 コンセントは・・・ついているみたいだ。まあ、電源がついているのだから当たり前っちゃ当たり前のことなんだけど。とりあえず、何か変わったところがないか、もう少し詳しく調べてみよう。

 そうして、テレビに向かって一歩足を踏み出した。
 その時だった。

 画面が急に暗転する。
 2、3秒ほど画面が真っ暗な状態が続く。そしてブン、という音と共に、画面が眩しく輝いた。
 画面に映るは、青空。綺麗なような、不気味なような青空。その中心に無機質な笑顔を張り付けた、言うなれば道化師のような仮面を被った金髪の少女が立っている。

「何、コレ?」

 突然のことに思考がフリーズしている中で、彼女、静さんが横でそうつぶやくのが微かに聞こえる。
 しばらく画面は一時停止ボタンを押したかのような状態が続いた。そして、

『ありゃ? これってカメラ・・・回ってる? ・・・おおっとぉ!? 回ってたみたいだ! ちぇっ、出端くじいちゃった。でもまあいいか! あははははっっ!』

 不満げなのか高揚してるのかよくわからない声色でそう叫んで何か(多分あの金髪の少女を映しているカメラ)をガチャガチャといじくりまわしたあと、改めまして、というように向き直る。

「さぁてとっ! 気を取り直しまして、初めまして! boy and girl、日暮新クンと明星静さん。そしてようこそ、unkouwn worldへ! 私は君たちをこの世界へ送り込んだ張本人! こう見えて神様なんだ!」

 やたらと高いテンションでなされる自己紹介。さらりと僕たちにとって重要なことが画面の中の少女から明かされる。
 それは目の前に映る彼女が、この事件を起こした張本人だということ。
 そして彼女はこの世界に僕たちを送り込んだ、と言ったことだ。
  僕は、自分たちが住んでいる世界からと思っていたけど、この言葉から推測するに、どうやらそうじゃないらしい。
 ということは、もしかして―――――、
 
「ここは君らが住む世界と限りなく近いところにある世界。地図にも乗らない、誰にも知られていない世界だよ。 そんな世界で、君らには暫くの間、過ごしてもらおうと思ってます! あぁ衣食住に関しては心配いらないよ? 必要なライフラインは全部通るようにしてあるし、食べ物も然るべき場所に置いてあるから!」

 あの世界から消えたのは、僕たちの方。
 ここはいわゆるパラレルワールド的なところだということか。
 まあ僕にとっては嬉しいことこの上ない。だってこの世界は・・・、

『素晴らしいとおもわないかい? うざったい社会とかさ、人間関係とかもさ、この世界ではないんだよ? いわゆる、ストレスフリーってやつさ!』

 ・・・彼女が大まかに説明してくれた。まあ、そういうことだ。
 暫く、なんて言わずに一生でも別に文句はないくらいだ。
 少なくともそうだ。でも、

『あははっ、なんて私って優しい神様なんだろうねー? そんな世界に貴方たちを招待してあげるなんて――――って、おりょ? 不満げな顔をしてる人が若干一名いらっしゃいますね。麗しのお嬢さん?』

 彼女《静さん》はそうじゃないらしい。だってほら、もの言いたげな表情で画面を睨みつけているから。

『あっははははは! イイねその顔! いろいろ言いたげだね? まあ安心しなよ。元居た世界に帰る方法がないわけじゃないんだからさぁ。ま、そうだね。元の世界に変える方法、それは、この世界ができた原因を突き止めること、だよ。そこかしこにヒントが転がってるから、せいぜい必死こいて探してみな?』

 少女は仮面を少し持ち上げて、口元の笑みだけわざとらしく見せつける。その笑みには明らかな挑発の色が宿っていた。
 静さんがきゅっと拳を握る姿を横目で見る。

 僕は正直なところ、元居た世界に帰りたくないと思ってる。
 でも、多分静さんには協力することになるだろうな、と感じた。

 理由は・・・・・彼女に出会ってしまったからとか、この世界に対する好奇心とか。まあ色々だ。

『せいぜい頑張って私を楽しませてよ。新クンと静さん? そのために君たちをここに呼んだんだから! 抗議の目を送っても駄目だよ? 神様は勝手で気まぐれなんだから! じゃあ、今日のところはこれでおしまいっ! てなわけで、see you next time!』

 そして、画面は暗転した。


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