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二話目 回想と遭遇
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僕、日暮新は、元来、人づきあいという類のものは、あんまり得意じゃなかった。
小さい頃から人前に出ると、口数が少なくなるタイプだったらしい。上手く間合いが掴めずに、黙っていたのだけはかすかに記憶がある。
現に今通っている大学のゼミでだって仲良い友達なんて限られてるし、じゃあその友達と休日何処かに遊びに行くかと言ったら、まぁ、クエスチョンマークだ。
部活内でも、あんまり発言する方ではない。どちらかというとできないって言った方が正しいだろうか。
それでも、そんな僕が学生連合なんていう人との関係が密接な組織に入ることになったのは、
まあ、ひとえに消去法というか、
他にやる人がいなくてやむなく行ったというか、
断りきれずに押し付けられたというか、
とにかくなんとでも言えよう。こんなこと。
まぁあとは、察してほしい。やりたくて始めたことじゃない上に、かなりの激務だったんだから。僕にはその時、かなりのストレスが溜まっていた。
もう、嫌だった。何処かに行けるものなら行ってしまいたかった。できることなら誰にも、誰とも関わりたくはなかった。
世界がこうなる5日前。
今まで溜まっていたものが吹き出すように、物を吐き出して、ついに倒れた。
みんなの声が遠くなり、視界が真っ暗に染まった時、
頭の中から、とある声が聞こえた。
『神の気まぐれ、貴方の元へ届く時、
貴方の世界は、瞬く間もなく豹変する』
女性の声。少し幼げだけど、どこか底の知れなさを感じた。
今、思えば、シグナルだったのかも知れない。
世界から人が消える、世界が止まるシグナル。
薄れる意識の中で、それだけはハッキリと聞こえたのだから。
・・・回想は終わりにしておこう。
どこまでも静かな道路の真ん中を、風の音を聞きながら歩く。先程出たショッピングモールを横目に、なだらかにカーブする坂を下っていく。
右手には制服屋さんやら、整骨院やらがある。中高とお世話になったところだ。よく訪れるたびに話題を振ってくれていたが、店長さんたちは僕のことを覚えてくれているだろうか。
ひゅん、と唐突に風がまた強く吹いた。思わず目を細めて、頭が右に流れる。その時不意に見た先で–––––––、何か、ものが動いた気がした。
人くらいの大きさの、何かが動いた気がした。
見た先は中学校。市内の中学校だ。最も、僕の母校ではないのだが。
気になって、そこまで走っていってみる。たっ、たっ、たっ、と小刻みなリズムが地面から聞こえる。
フェンスをまたいで、テニスコートがある。フェンスに手をかけ、見ると、
テニスコートの真ん中に人が1人、いた。
瑠璃色の髪に、整った顔立ち。かなり可愛い。
2、3歩程歩いて、辺りを見回している。
しばらくして、こちらに気づいたのか、くるりとこちらを見て、大きな瞳を、はっと見開いた。
「いた。見つけた」
ポツリと呟いた声はよく響いて。
それに呼応するかのように、先程よりも更に強い風が僕を後ろから殴っていく。
人1人いないせいか、彼女が綺麗なせいか、はてまた別の理由によるものなのかはわからないけど、
彼女にはやけに、存在感があった。
小さい頃から人前に出ると、口数が少なくなるタイプだったらしい。上手く間合いが掴めずに、黙っていたのだけはかすかに記憶がある。
現に今通っている大学のゼミでだって仲良い友達なんて限られてるし、じゃあその友達と休日何処かに遊びに行くかと言ったら、まぁ、クエスチョンマークだ。
部活内でも、あんまり発言する方ではない。どちらかというとできないって言った方が正しいだろうか。
それでも、そんな僕が学生連合なんていう人との関係が密接な組織に入ることになったのは、
まあ、ひとえに消去法というか、
他にやる人がいなくてやむなく行ったというか、
断りきれずに押し付けられたというか、
とにかくなんとでも言えよう。こんなこと。
まぁあとは、察してほしい。やりたくて始めたことじゃない上に、かなりの激務だったんだから。僕にはその時、かなりのストレスが溜まっていた。
もう、嫌だった。何処かに行けるものなら行ってしまいたかった。できることなら誰にも、誰とも関わりたくはなかった。
世界がこうなる5日前。
今まで溜まっていたものが吹き出すように、物を吐き出して、ついに倒れた。
みんなの声が遠くなり、視界が真っ暗に染まった時、
頭の中から、とある声が聞こえた。
『神の気まぐれ、貴方の元へ届く時、
貴方の世界は、瞬く間もなく豹変する』
女性の声。少し幼げだけど、どこか底の知れなさを感じた。
今、思えば、シグナルだったのかも知れない。
世界から人が消える、世界が止まるシグナル。
薄れる意識の中で、それだけはハッキリと聞こえたのだから。
・・・回想は終わりにしておこう。
どこまでも静かな道路の真ん中を、風の音を聞きながら歩く。先程出たショッピングモールを横目に、なだらかにカーブする坂を下っていく。
右手には制服屋さんやら、整骨院やらがある。中高とお世話になったところだ。よく訪れるたびに話題を振ってくれていたが、店長さんたちは僕のことを覚えてくれているだろうか。
ひゅん、と唐突に風がまた強く吹いた。思わず目を細めて、頭が右に流れる。その時不意に見た先で–––––––、何か、ものが動いた気がした。
人くらいの大きさの、何かが動いた気がした。
見た先は中学校。市内の中学校だ。最も、僕の母校ではないのだが。
気になって、そこまで走っていってみる。たっ、たっ、たっ、と小刻みなリズムが地面から聞こえる。
フェンスをまたいで、テニスコートがある。フェンスに手をかけ、見ると、
テニスコートの真ん中に人が1人、いた。
瑠璃色の髪に、整った顔立ち。かなり可愛い。
2、3歩程歩いて、辺りを見回している。
しばらくして、こちらに気づいたのか、くるりとこちらを見て、大きな瞳を、はっと見開いた。
「いた。見つけた」
ポツリと呟いた声はよく響いて。
それに呼応するかのように、先程よりも更に強い風が僕を後ろから殴っていく。
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彼女にはやけに、存在感があった。
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