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出逢い
夏の少年
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「ん~気持ちー!やっぱり人間界っていいな~!」
夏は深呼吸をし、大きく伸びをした。
『やぁ、夏。久しぶりだね』
後ろから、おっとりとした優しい声が聞こえてきた。夏が振り返ると、そこには燦然と輝いている太陽がいた。
「太陽さん、久しぶり!今年もよろしくね~」
『こちらこそよろしく。やっぱり夏の笑顔はいいねぇ』
太陽は夏につられて楽しそうに笑い、ゆっくりと去っていった。
その時、夏の横を雀が通り過ぎようとした。
「あ、雀さん!」
呼び止められた雀は夏の手の平に乗った。
「呼び止めちゃってごめんね。この辺に弥々って女の子がいるはずなんだけど、雀さん知らない?」
雀は仲間と少し話し合った後、心当たりのある場所の近くまで連れて行ってくれた。
『あの大きな杉の木の下にある家の女の子が弥々っていう名前だよ』
「ありがとう!」
夏は親切に教えてくれた雀に、にこっと笑って心からお礼を言った。
雀が去った後、夏は弥々がいる家に向かった。
(あそこにいるんだ⋯)
春が戻ってきた時、すれ違い様に教えてくれた。
「僕達の姿が見える子がいたよ」
そこまで詳しく話を聞いたわけではなかったが、やけに嬉しそうな春の様子に少しだけその子に興味が湧いた。
(僕らの姿が見える子かぁ⋯どんな子なんだろう)
夏はわくわくとした気持ちで弥々の家へと向かった。そ~っと⋯夏は家の中を覗いたが、誰もいない。
「うちに何か用?」
「うわぁっ!!」
思わぬところから急に話しかけられた夏は、驚いてしりもちをついてしまった。
「大丈夫?!」
「うん、ありがとう⋯⋯弥々、ちゃん⋯?」
助け起こしてくれた女の子に夏はお礼を言った。
「何で私の名前、知ってるの?」
驚いた様子の弥々、その当然の問いかけに夏は簡単に事情を話した。
「へぇ~あなた、春の仲間なんだー」
「うん、春が僕らが見える子がいるって言ってたから⋯弥々ちゃんに会いにきたんだ!」
夏と弥々はのんびりとした、子供っぽい性格が似ていたらしく、様々な所で気が合った。
ふたりでたくさん遊んだ。かくれんぼ、鬼ごっこ、水遊びに泥遊び、宝物探しなんかもした。木陰で寝っ転がって休み、吹き抜ける涼しい風が気持ちよくてそのまま寝てしまったこともあった。
一日中、時間を忘れるくらい遊び続けた。
一緒に過ごした時間の中で、ふたりは最高の友達になった。
――そして「夏」の終わりが近づき、別れの時期になった。
「弥々ちゃん、楽しかったよ!ありがとう!!」
「こちらこそ、なっちゃんのおかげで本当に楽しかった!」
弥々の言葉に夏は今までで一番の笑顔をその顔に浮かべ、最後の最後まで手を振りながら去っていった。
夏は深呼吸をし、大きく伸びをした。
『やぁ、夏。久しぶりだね』
後ろから、おっとりとした優しい声が聞こえてきた。夏が振り返ると、そこには燦然と輝いている太陽がいた。
「太陽さん、久しぶり!今年もよろしくね~」
『こちらこそよろしく。やっぱり夏の笑顔はいいねぇ』
太陽は夏につられて楽しそうに笑い、ゆっくりと去っていった。
その時、夏の横を雀が通り過ぎようとした。
「あ、雀さん!」
呼び止められた雀は夏の手の平に乗った。
「呼び止めちゃってごめんね。この辺に弥々って女の子がいるはずなんだけど、雀さん知らない?」
雀は仲間と少し話し合った後、心当たりのある場所の近くまで連れて行ってくれた。
『あの大きな杉の木の下にある家の女の子が弥々っていう名前だよ』
「ありがとう!」
夏は親切に教えてくれた雀に、にこっと笑って心からお礼を言った。
雀が去った後、夏は弥々がいる家に向かった。
(あそこにいるんだ⋯)
春が戻ってきた時、すれ違い様に教えてくれた。
「僕達の姿が見える子がいたよ」
そこまで詳しく話を聞いたわけではなかったが、やけに嬉しそうな春の様子に少しだけその子に興味が湧いた。
(僕らの姿が見える子かぁ⋯どんな子なんだろう)
夏はわくわくとした気持ちで弥々の家へと向かった。そ~っと⋯夏は家の中を覗いたが、誰もいない。
「うちに何か用?」
「うわぁっ!!」
思わぬところから急に話しかけられた夏は、驚いてしりもちをついてしまった。
「大丈夫?!」
「うん、ありがとう⋯⋯弥々、ちゃん⋯?」
助け起こしてくれた女の子に夏はお礼を言った。
「何で私の名前、知ってるの?」
驚いた様子の弥々、その当然の問いかけに夏は簡単に事情を話した。
「へぇ~あなた、春の仲間なんだー」
「うん、春が僕らが見える子がいるって言ってたから⋯弥々ちゃんに会いにきたんだ!」
夏と弥々はのんびりとした、子供っぽい性格が似ていたらしく、様々な所で気が合った。
ふたりでたくさん遊んだ。かくれんぼ、鬼ごっこ、水遊びに泥遊び、宝物探しなんかもした。木陰で寝っ転がって休み、吹き抜ける涼しい風が気持ちよくてそのまま寝てしまったこともあった。
一日中、時間を忘れるくらい遊び続けた。
一緒に過ごした時間の中で、ふたりは最高の友達になった。
――そして「夏」の終わりが近づき、別れの時期になった。
「弥々ちゃん、楽しかったよ!ありがとう!!」
「こちらこそ、なっちゃんのおかげで本当に楽しかった!」
弥々の言葉に夏は今までで一番の笑顔をその顔に浮かべ、最後の最後まで手を振りながら去っていった。
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