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第五章

相次ぐ予定の変更で、王国内は浮き足立っていた

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 (side ジェフ)


 盛大に行われた公爵家のサロンは、予定を大幅に変更して、日が完全に落ちる前にお開きとなった。

 客人方は多少消化不良気味だったようだけど、迎賓館貴賓棟にいる高位貴族たちが一斉に帰り出したから、文句のつけようもない。
 
 公爵家が上手だったのは、提供される予定だった食品を、客人に、お土産として持たせたこと。

 料理の旨さで定評のある公爵家のディナーを、持ち帰ることが出来るとあって、招かれた庶民たちは大喜びだったらしいし、公爵家側としても、ロスになるよりずっと良かったそうだ。

 で、僕だけど、並んでくれたレディーたちとは、当然、全員ときっちり踊りきった。

 もちろん、すごく疲れたとも。
 それでも、約束だからね。

 その後、全てのレディーたちが帰路に着いたのを確認して、最後に少しだけ、ベル従姉様とも話ができた。

 今回は、相当派手にぶつかり合ってしまったから、少しだけ心配をしていた。
 しばらくの間は、避けられるかな?って。

 でも、従姉様はいつも通りに話してくれたから、ひとまず安心。
 まぁ、腹の中で、何を考えているかわからないけど。
 

 ステファニー様からの伝言は、比較的早い段階で伝えておいた。
 既に、先発のミュラーソン公爵は王宮に向かった後で、夫人と従姉様は、すぐに追いかけるそうだ。


 これから王宮内で会議が行われる。


 一緒についてくるように誘われたけど、うちの両親の動きが読めなかったから、僕は一度領館に戻ることにした。
 結局、全員で王宮に向かうことになったんだけどね。

 会議は両親が参加し、僕は他の令嬢、令息方と、別室で待った。
 
 深夜近くまで続いた会議は、結局マグダレーン男爵が戻ってくるまで中断ということになり、僕たちはそのまま、王宮で避難生活ということになった。

 それなら寧ろ、ローズちゃんを非難させてほしい。
 殿下もきっと、同じことを考えているに違いないけど、それが出来ないことも理解していた。
 ここには、王族と血のつながりがある人間しか入れない。
 
 暗がりに沈む窓の外を見ながら、ふと、考えた。

 それなら、僕がここから出れば良いのかな?
 出来るだけ近くで守るとするなら、専門学校の寮が良い?
 いや、それともいっそ、レンさんあたりに無理を言って、寮に泊めて貰うのも良いかもしれない。
 オレガノ様が大丈夫なら、僕だって……。

 思い立って立ち上がった時、誰かが扉をノックした。

 父に視線で許可を取り、扉を開けると、そこには魔導士長様が。


「ジェファーソン様。夜分申し訳ない。
 明後日に迫った降臨祭の護衛だがね。
 可能であれば、君にも参加してほしいのだ」
 

 僕にとっては、願ったり叶ったりだ。
 ちらりと、父に視線を送ると、小さく頷いてくれる。


「かしこまりました」

「まだ学生のうちから、危険に晒してすまない。
 だが、君の戦力は必要なのだ。
 明日、聖堂での打ち合わせにも参加して貰うが、良いかな?」
 
「仰せのままに」

 
 運が良い。
 これなら、殿下に止められることもなく、君のそばで守ってあげられる。

 魔導士長様を見送ったあと、僕は急いで借り物のベッドに潜り込んだ。

 体をしっかり休めておかなければ。

 今晩は、何事もおきませんように。
 早く明日が来ますように。

 女神様に祈りながら、僕は無理矢理、意識を眠りの淵に落とした。

 



 ◆


 (side ローズ)


 翌日。

 朝礼で、午前中から予定されていた降臨祭の打ち合わせ会が、午後からになった旨伝えられた。

 それだけで、昨日の知らせが、ただ事では無かったことが分かるよね。
 まぁ、降臨祭中止なんて事態にならなかっただけ、良かったとも言えそうだけど。

 昨晩、王宮からの呼び出しに応じていた補佐たちの顔色は、目に見えて悪い。


 会を終えて、退室するべく戸口に連なる列に混じりゆっくり進んでいると、マルコ補佐がレンさんを呼び止める声が聞こえた。


「昨晩は、ご苦労さんだったなぁ。すまなかった」

「いえ。確認を怠った、こちらに非がありますので。
 書類は、小会議室に配置しましたが、この後大会議室こちらに移しておきます」

「ああ。そのことなんだが、実は、人員だけで無く参加組織も増えた。今日の今日ですまないが、午後までに、何とか もう五部複写を頼む」

「かしこまりました」


 え。
 流石にそれは……。
 
 昨日お休みだったレンさんは、今日は当直。つまり、今日の朝から明日の朝までお仕事なわけで。
 しかも、昨日は早朝から外出していたそうだし、昨晩は押し付けられた仕事をこなして……多分、丸一日ほとんど寝てない。

 それだけでも十分厳しいと思うのに、午前中休憩時間も取れないような仕事の上乗せって、酷すぎる。

 レンさんも、たまには断っても……!
 そう思ったんだけど、マルコ補佐の顔を見て、何も言えなくなった。

 いつも にこにこ笑顔を浮かべている丸顔のマルコ補佐が、げっそりとやつれていたから。


「申し訳ないな。君にばかり押し付けてしまって。だが、こういった作業は、他の者では心許なく……」

「構いません。今日は事務仕事ですし。それより、補佐は午後まで、少し横になられたほうが」

「ああ。有難う。そうさせてもらう」


 腰をトントンと叩く補佐の背中を、レンさんは優しくさすりながら、小声で呪文を唱えているみたい。

 晩餐会の晩、わたしにかけてくれた、癒しの魔導かな?
 あの時、恐怖心とかが一気に和らいで、熟睡できたのよね。

 優しいな。
 お爺さんと孫のような二人の姿にほっこりしつつ、わたしは二人に歩み寄った。


「他に仕事が無ければ、わたしにもお手伝いさせて下さい」


 午前中の打ち合わせに参加予定だったから、その分ぽかっと時間が空いてしまったのよね。
 午後の打ち合わせは、警備担当の聖騎士、王国騎士が、当日の流れや配置場所を実際に確認することになっていたから、聖女候補はお茶だしなどの仕事を振られていて、特に前倒しでしなければならない仕事もないし……。


「ふむ。今日、聖女候補は何人いたかな?」
 
「リリアさんとわたしの二人です。本当は、プリシラさんも勤務の予定でしたが……」

「ああ、そうだった。彼女は、今日午後からだったね。
 昨日のサロンで、何かハプニングがあったとか何だとか?
 ……そう言えば、昨日、ローズマリーさんもサロンに出席していたと思ったが、何か知っているかい?」

「っえ? ……いえ! わたしは昨日、プリシラさんと話をしておりませんので」

「そうかい。まぁ、彼女は少し、自尊心が高いところがあるからね。気に入らないことでも、あったのやもしれんな」


 ため息を落としながら呟くマルコ補佐に、曖昧な笑みを返した。


 ええと、ごめんなさい!
 嘘をついたわけでは、ないのです。

 でも、プリシラさんの言うハプニングがどれを指すのか、正確には分からないし、一度向こうから声をかけて来たという事実はあるけれど、会話らしい会話をしていないのも、また事実。

 客観的に見た内容をうっかり話して、プリシラさんのイメージを悪くすると、更に恨まれそうだし。
 
 でも……。でもね?
 『何で、そちらが被害者みたいな態度なんです?』って、若干の憤りを 感じたりもしているのよね。

 ジェフ様にばっさり振られたのは、彼女の態度に問題があったと周囲に認識されていたし、スティーブン様とのゴタゴタは、そもそも彼女が、わたしに恥をかかせようとしたのが原因だ。

 それなのに、昨晩は、聖堂に無断で自身の家の領館に戻り、今朝になって、『昨日サロンで、思わぬハプニングに見舞われたから、気が動転してしまった』と連絡して来たらしいのよね。
 その上、会議の時間がずれた話しを聞くと、午前中の仕事をしれっとお休み。

 あれ?
 何だか、ちょっとムカムカして来た。
 よく考えると、フォローしてあげる必要なくない?

 勝手に苛立っていたところに、


「社交の場で、自分の思い通りにことを進めるのは、とても難しいのでしょうね。対人のストレスもありましょうし……午後には、落ち着かれていると良いのですが。
 ローズさんも、同じイベントに参加されたのなら、お疲れではないですか? どうか、無理はなさらないで下さい」


 レンさんが穏やかな声で、この上なく優しい言葉をかけてくれた。
 それだけで、刺々した気分が和らいでいく。
 
 この人は、なんて優しい人なんだろう。
 この優しさを、ほんの少しで良いから、彼自身に向けてあげてほしいと思ってしまう。


「ご心配頂き、ありがとうございます。私は元気いっぱいですので、大丈夫ですよ?」


 右腕を曲げて、力瘤を作って見せると、レンさんは僅かに目元を和らげ、マルコ補佐は優しく微笑んだ。


「それでは、ローズマリーさんとリリアーナさんには、クルス君の組の手伝いをお願いします」



 そんなわけで、リリアさんに声をかけたんだけど、かなり不満そうな顔をされた。
 曰く、『そんなの、平民の聖騎士の仕事じゃん! 私ら やる必要なくない? ちょー面倒。私疲れているんだけど?』ですって。
 
 困った時は、お互い様じゃない?って思ったんだけど、『聖騎士と同じ部屋で仕事とか、暑苦しいし、臭そう』などと言い出したから、それ以上誘うのはやめた。

 夏場の男性なんて、ある程度体臭あるものじゃない?
 エミリオ様だって、今後、大人の男になっていくのだから、同じだと思うんだけど。

 それは、大勢の男性が狭くて締め切った部屋に集まっていれば、色々混ざって大変なことになりそうだけど、今回は大会議室にレンさんの組の三人だけよ?
 窓だって開いているし……。
 臭そうって! ~~~っ! ぶれいものっ!
 レンさんなんか、うっかりすると、女性陣より体臭薄かったりするんだからね!

 ムカムカしながら大会議室に入ると、昨日と同様、レンさんがペンを動かしていた。
 その横、机に突っ伏しているのはラルフさん。

 あちゃー。
 ラルフさんも、昨晩徹夜したのかな?
 グロッキー状態なのか、簡単には起きなさそう。


「やぁ。手伝ってくれるそうだね。助かるよ。俺は書類を取りに行ってくるから、しばらくそこに座って待っていてくれるかい?」


 声をかけてくれたのは、ニコさん。
 会議室も移動になったから、書類の移動をしてくれるみたい。


「では、わたし、お茶をいれますね」

「本当かい? わるいなぁ。そしたら、レンが眠くならないくらい濃くて渋いヤツ頼むよ」

「はいっ!お任せください」


 そんなこんなで、午前中は複写作業に追われた。

 それにしても、レンさんの仕事。
 早い早いとは聞いていたけど、わたしが一部作成する間に、三部終わらせていたのには驚いちゃったよね。

 最後の一部を作ってくれている間に、ニコさんと二人で、誤字脱字チェック。
 流石! これだけのボリュームで、数えるほどしかミスが無いわ。

 終わったところでラルフさんを起こして、四人で会議場の設営。
 正午まで小一時間の余裕を残して作業を終えることが出来た。


「お疲れ様でした!」


 労いつつ、休憩用のお茶とお菓子を持って会議室に戻ると、レンさんが席を外していた。
 ニコさん曰く、『目元に酷いクマが出来ていたからで、仮眠に行かせた』とのこと。

 午後はずっと会議で夜勤もあるから、多少でも寝る時間が取れて良かった。

 二人にお茶を振る舞いながら、わたしは、ふと思いついた。
 

 昨日はタルトをご馳走になったし、今日はお礼にお夜食を用意しようかな。



 
 
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