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第四章
模擬戦イベント開幕(3)
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(sideオレガノ)
団長と共にロータリーで、王都内で働く職員の集合を待つ。
集まった観客は、ざっくりと三つのグループに分かれている。
一つは門兵。
もう一つは王宮内で働く騎士たち。
最後の一つは王宮内の事務方の職員。
各十人程度の集まりだ。
その中で事務方の職員は、若い女性が八割。
彼女たちは、剣術の模擬戦など見て楽しいのだろうか?
まさか、第三旅団のように、人数調節のために無理矢理集められたんじゃないだろうな?
あり得そうな予想に、肩身が狭くなる。
他の旅団の観客が増えたのだから、王宮で強制参加させた枠を、他に譲ってしまえば良かったのに……。
先程から、断続的に視線を感じる気がして、そちらを見ると目を逸らされる、という状態が続いており、何というか……どうにも気まずい。
折角の休日を潰されたことに腹を立てているのだろうか。
それなら是非とも無理をしないで頂きたい。
小さく息を吐いて、思考を打ち切る。
考えても無駄なことは、考えないに限る。
出迎えなどさっさと終わらせて、体を温めたいところだ。
とりあえず、人数確認を……。
「初めまして。オレガノ様」
ふいに話しかけられて、目の前に立つ門兵を見る。
身長は自分より低いが、年齢的には上だろうか?
髪を後ろに無造作に束ねていて、ゆるっとした雰囲気なのに、なんとも色気のある男性だ。
「お会いできて幸栄です。おれはユリシーズ=パルヴィン。第一南門の門兵をしています。ユーリーとお呼び下さい。宜しく」
「初めまして。ユーリーさん。自分も敬称は結構です。今日は足を運んで下さり、ありがとうございます」
「いえ。実は妹さんから事前に聞いていて、とても興味深いイベントだったので、楽しみにしていたんですよ」
「?!」
ローズの知り合い?
南門の門兵が?
いったい、どんな接点で知り合ったのだろうか?
先程も思ったが、彼は色気の滲み出るような好青年だ。
あいつは全く……!
あちらこちらで男性と親しくなるのを、どうにか出来ないものだろうか。
俄かに、胃に痛みが走った気がした。
「しかし、思った以上のビッグイベントになって。まぁ、おかげで堂々と見に来ることが出来て僥倖でしたが」
「ええと。その……ローズとは、どのような?」
ユーリーさんは、一瞬キョトンとした顔をした後、爽やかに笑った。
「あぁ。綺麗な妹さんを持つと、お兄さんは気苦労が絶えなくて大変だ」
「いえ」
「ご心配なく。聖騎士に知り合いがいてね。彼に会いに聖堂に来た時に会っただけだから」
「そうでしたか」
なるほど。立ち話をした程度か。
胸を撫で下ろした矢先、
「まぁ。その時は、彼に急な仕事が入ったから、代わりに食事をご一緒させて頂いたけど」
「は?」
年上の方に失礼とか考える以前に、声が出てしまった。
誰だ!
その聖騎士は~~!!
紹介した聖女候補を、他の男性に任せるとか、有り得ないだろうっっ!!
憤っていると、ユーリーさんは堪えきれないと言ったように、その場で笑い出した。
「アッハッハ。あぁ、いや失礼。大丈夫!勿論、妹さんにも許可を頂いたし、他の聖騎士も一緒だったから……」
「あぁ……そうですか……」
そういうことなら、無いことも無いか。
ユーリーさんは笑いが収まらないのか、目元にうっすら涙を浮かべている。
どうやら、揶揄われたらしい。
イラッとしたのが表情に出ていたのか、ユーリーさんは何とか笑いをおさめて頭を下げた。
「失礼。悪気はないんだ。良いお兄さんだなぁと思って」
「…………」
「ごめんね?」
「いえ」
悪びれず謝ってくる姿勢に、今度は完全に毒気を抜かれてしまった。
いつの間にか話口調も敬語ではなくなっているけど、彼の持つ雰囲気のせいか、それも何となく許せてしまう。
不思議な人だな。
「オレガノ!人数が揃ったからテントへ誘導開始してくれ」
「了解です!」
人数を数えてくれたらしい団長から指令が来たので、前に立って歩き始めると、ユーリーさんは横に並んで歩き始めた。
「妹さんはとても人気があるようだし、お兄さんは大変だね?」
「人気ですか?」
「あれ?知らない?聖堂でもその他でも、かなり人気を集めてるってラルフ君が言ってたよ?あ、ラルフ君っていうのは……」
「はい、知ってます。聖騎士の背の高い……」
「そうそう。いつも腹ペコの……」
食事をしている最中の彼の幸せそうな顔を思い出し、思わず笑うと、ユーリーさんも横で笑っていた。
「彼だって、気に入っていそうだし?」
その可能性はあるだろうなぁ。
でも、案外聖騎士界隈で選んでくれると、こちらは気が楽だ。
王子殿下のドヤ顔と、ジェファーソン様の裏のありそうな微笑みが脳裏をよぎって、げんなりとする。
「でも、血は争えないな。君も人気者のようだし?」
「??」
言われていることの意味が分からずユーリーさんに顔をむけると、彼は苦笑いを浮かべた。
「そういうところも良く似ているみたいだ」
「どういうところですか?」
「他の人に気遣いしすぎて、自分のことは後回しなところかな?」
良くわからない。
もう少し詳しく聞こうと思ったが、テントについてしまったのであきらめる。
「それじゃぁ、期待しているから頑張ってね」
「はい。ありがとうございます」
ユーリーさんは、ひらひらと手を振りながら、門兵たちの輪に戻っていった。
王宮関係者のテントは王子殿下のテントと横並びだ。
もうすぐ開幕となるが、少しだけ時間に余裕があるようなので、テント後方で準備運動を始める。
そういえば、ユーリーさんって、どこかで聞いたような名前だな?
さて、何だったか?
簡単に思い出せそうでいて、なかなか出てこず、もやもやしながら屈伸運動をしていると、空砲が鳴り響いた。
王子殿下と聖女様がこちらに向かわれる合図だ。
すぐさま王子殿下のテントの決められた位置に戻り、立ったまま待機。
前方を見ると、聖女様のテントの横で、ジャンカルロ君がこちらを見ながら、不敵な笑みを浮かべて立っている。
その後方に並んでいるのは彼の家族だろうか?
似ているから、おそらくそうだろう。
テントの中で、彼の両親と妹らしき少女が、物珍しそうに会場を見ている。
家族を招待したのか。
やる気十分だな。
その横のテントには聖女候補の面々。
ローズを含む、華やかにドレスアップした少女たち。
その後方には、神官らしき男女(女性の割合が多く見える)が席についている。
救護テント横の布テントの中には、子どもたちが集まっていた。
聖堂の孤児院の子たちだろうか?
おそろいの帽子が可愛らしい。
ステージの正面。
ジェファーソン様は三つあるテントの中央にいる。
この炎天下の中、何故か涼し気で快適そうだが、何か仕掛けでもあるのだろうか?
今日も麗しい微笑を欠かさないジェファーソン様は、一緒に座るご学友たちと談笑されているようだ。
右横のテントには、女性のご学友。
あえて分けているあたりに、彼の意図を感じてしまうのは、考えすぎだろうか……。
左横のテントには、持参したらしい豪華な設えの椅子に、なかなかに肉付きのいい少年が鎮座しており、その周辺を護衛らしき使用人がぐるりと囲っている。
間違いなく、何処かの高位貴族のご令息だろう。
その横は第七旅団……などと思いながら眺めていると、聖女様のテントの後方に動きがあった。
そちらに視線を移すと、神官長と補佐が厳かに入場してくるところだった。
その後方に、目立たないよう距離をとって、レン君とラルフ君。
それぞれが、高級そうな布で包まれた棒状の物を持ち、テントの中のテーブルにおろしている。
いや。
何で、君は雑用をやらされているんだ。
今日の競技者じゃないのか?
ジャンカルロ君との扱いの差に思わず眉を寄せていると、こちらの視線に気づいたらしいレン君と目があった。
彼が静かに頭を下げたので、こちらも挨拶を返す。
結構距離が離れているんだが……気配にかなり敏感なんだな。
驚いているところに、もう一度空砲がなった。
他の聖騎士と僅か装いが異なる聖騎士が先導し、しずしずと美しい女性が入場してくる。
会場内で座っていた観客たちが一斉に立ち上がった。
凄まじい存在感と、カリスマ性。
あれが、『聖女様』か……。
◆
(side ローズ)
聖女様が入場されると、競技場は水を打ったように静まり返った。
あまりの神々しさに、皆固唾を呑んで彼女の動く先を見つめている。
日々お見かけしているのに、どうしても同じ人間とは思えないような、圧倒的な存在感。
今日も本当にお美しいわ。
あちらこちらで感嘆のため息が落ちる。
聖女様は自らのテントの前に立つと、振り返り、優しく微笑みながら会場全体を見渡して手をふった。
ーーわぁっ!!!
歓声が湧き上がり、会場内が一気に盛り上る。
特に第六と第七の団員さんたちが、異常な盛り上がりを見せているんだけど、その辺は警護を担当する関係かしら?
何というか……ちょっとしたファンクラブ状態だ。
そこに、もう一つ空砲がなる。
会場は一度静まり、ステージを挟んで反対側に視線がうつった。
そこを悠然とした態度で入場されたのは、エミリオ王子殿下。
先程正面入り口まで来られた時もそうだったけれど、背筋をしっかり伸ばし、指先まで神経が行き届いた姿勢はとても美しく、それでいて堂々とした態度は、まさに王族といった様相。
凄い!
カリスマ性十分じゃないですか!!
各騎士団の騎士たちも、その姿を見て感嘆のため息をこぼしている。
王子殿下は、決められたテントまで歩くと振り返り、右手を上げた。
会場は再び歓声に包まれる。
王宮関係者と各旅団の人たちはもちろんの事、わたしの横でもリリアさんが絶叫している。
大歓声が収まらない中、ステージに上がったのは神官長。
しばらくの間、誰もその存在に気づかず、ステージ上でぽつんとしていたけど、聖女様と王子殿下がテントに入って椅子にかけたことで、ようやく視線がそちらに向かった。
あぁ。
すごく嬉しそう。
「これより、王国騎士聖騎士対抗模擬試合を開催いたします!」
にこにこ笑顔で高らかに開会宣言を行った。
ここ一週間ほどの、声を張る練習が報われて何よりでした。
他国から取り寄せたという、高級蜂蜜の効果も十分ですね?
「この度は、大勢の皆様にお集まり頂き……」
あ……。
引き続き、神官長挨拶でしたっけ?
あー。長くなる予感がする。
聖堂関係者は、今、みんな多分似たような半眼になっていると思う。
『この炎天下の中で長時間のご挨拶は、御免被りたいです!』なんて心の中で思ってみたって、わたしたちにはどうする事も出来ないけど……。
神官長が、自らの自己紹介を長々と話し、一息ついて次の話にうつろうとした時、ステージの下から拍手の音が響いた。
もちろん、まだお話の途中だと誰もが分かるタイミング。
周囲は一瞬静まり返った。
神官長相手に、こんな事をして許されるのはこの場に二人しかいない。
拍手の主は聖女様だった。
彼女は、優しい笑みを口元に湛えたまま、拍手を続けている。
次の瞬間、今度は反対側から拍手が加わった。
王子殿下だ!
周囲の大人たちが、何が起こったのかと唖然としてしまっている中、今の一瞬の間で、聖女様の意図を理解し、直ぐ様追従なさったんだわ。
凄い!
高い位にある二人が拍手をしているのだから、当然周囲もそれに加わる。
会場中から拍手が沸き起こってしまえば、流石の神官長も話し続けるのは難しいよね。
拍手が落ち着いた頃、神官長は呆けたように一つ礼をして、ステージから降りた。
言おうと思っていた事とか、全部とんでしまったのかもしれない。
聖堂関係者は、笑いを堪えるのに必死。
神官長にはお気の毒だけど、今日は暑いし、お話しは手短にお願いしたいよね!
「マヌエル神官長、ありがとうございました。それでは変わりまして、聖女様よりお言葉を頂戴致します」
ミゲルさんの司会で、聖女様がテントから前へ進み出る。
ステージでお話しすることになっていたのだけど……
「皆様。今日はとても暑いですわね?長話は今日の企画に似つかわしく無いですから、こちらから一言二言お話しさせて頂きますわ」
その場でお話しを始めた聖女様の澄んだ声音に、会場の人々は聞き漏らさぬように、と耳を傾ける。
「まず、この試合を企画して下さった王子殿下と王宮の皆様に感謝を。私もとても楽しみにしていましたのよ?」
周囲から短く拍手が起こり、話の先を促すよう、すぐに静まる。
「この企画は、王宮、聖堂両騎士の技量を高め、かつ親睦をはかる為の良い機会になるでしょう。くれぐれも怪我の無いように。皆さま、一緒に楽しみましょう!」
聖女様は、そこまで一気に宣言すると、微笑みながら一歩後退した。
会場は拍手喝采だ。
大いに盛り上がる中、ミゲルさんが司会を続ける。
「聖女様ありがとうございました。それでは続きまして、当企画の立案者である、エミリオ王子殿下よりご挨拶いただきます」
王子殿下は前に進み出ると、やはり聖女様と同様、その場で口を開く。
「今日は忙しい中、集まってくれてありがとう。俺も聖女様にならい、この場で簡単に挨拶をしたいと思う」
もちろん、ステージ上でお話しをする手はずになっていたけど、またしても臨機応変に対応なさった。
すごいわ!
とても十歳の判断とは思えないけれど、周囲の大人が助言を与えているような素振りはなかった。
自分がおかれた状況を瞬時に判断し、その場にふさわしい行動を選ぶなんて、大人でも難しいのではないかしら?
「まず、この企画に協力してくれた聖堂関係者各位、並びに聖女様に感謝申し上げる」
ここで、ひときわ大きく短めの拍手。
何というか、堂々とお話しをなさる姿は、既に王子の風格十分。
数週間お会いしない間に、こんなにも成長なさるなんて!
きっと、たくさん勉強なさったんだろうな。
感動のあまり目頭が熱くなってしまう。
「思いつきで始めた企画だったが、選手に選ばれた者たちは、互いに全力を出しきる白熱した試合を見せてくれると期待している。観客諸君、共に剣技の競演を楽しもう!」
会場は一瞬静まり返り、すぐに大歓声に包まれた。
王子殿下は右手を上げると、一度テントに下がり、後ろに控えていた団長から剣を受け取る。
そして、前に進み出ると、ミゲル神官長補佐に視線を送った。
ミゲル神官長補佐は、はじかれた様に我にかえると、司会を進行する。
「王子殿下、ありがとうございました。それでは、引き続き王子殿下の剣術披露へと移らせていただきます」
王子殿下は、団長を従えて競技場へと上がる。
初めてのことで緊張しそうなものなのに、そんな素振りも見せない。
大人顔負けだわ。
どんな状況にも動じない状況判断能力、そして、すぐに行動につなげられる頭の良さと胆力。
『天才』という言葉が脳裏に浮かぶ。
ヒロインが王子殿下に夢中だったのは、彼の天才的な王者としての素質だったのかもしれない。
会場中の誰もが、王子殿下に釘付けになっている。
もし、彼がこの先、同様のスピードで成長を遂げていったら……!!
守ることができるかもしれない。
この国の人たちを!
それならば、私こそ頑張らなければ!!
胸が熱くなって視界が涙で滲んだ。
頬を涙が伝う前に、慌ててハンカチで抑える。
しまった。
感動のあまり泣いてしまった。
ふいに気恥ずかしくなって、周囲に視線を向けると、案外どこも同じような状況だったみたい。
王子殿下付きのテントの中では、男泣きに泣いている騎士さんたちがちらほらいたりして、これならちょっとくらい泣いちゃったからって、平気かな?などと、思ったけど、やっぱりそうでもなかった。
「やだぁ。マリーさん、大丈夫?」
隣に座っていたリリアさんに、盛大に突っ込まれてしまった。
「大丈夫よ。ありがとう。王子殿下が、その、随分ご立派になられていたから……」
「感動しちゃったの?お姉さんみたい。でも、本当に素敵さに磨きがかかったよね~!」
「そうね」
そうか。
これは、弟の成長に感動した姉のような心境なのかもしれない。
リリアさんに言われて、妙に納得してしまった。
競技場の上では王子殿下が、団長さんと抜き身の剣を合わせている。
いよいよ王子殿下の剣術披露だわ。
どうか、ケガなどしないように!
胸がドキドキと高鳴るのを鎮めるように、わたしは両手を組んで競技場を見守った。
団長と共にロータリーで、王都内で働く職員の集合を待つ。
集まった観客は、ざっくりと三つのグループに分かれている。
一つは門兵。
もう一つは王宮内で働く騎士たち。
最後の一つは王宮内の事務方の職員。
各十人程度の集まりだ。
その中で事務方の職員は、若い女性が八割。
彼女たちは、剣術の模擬戦など見て楽しいのだろうか?
まさか、第三旅団のように、人数調節のために無理矢理集められたんじゃないだろうな?
あり得そうな予想に、肩身が狭くなる。
他の旅団の観客が増えたのだから、王宮で強制参加させた枠を、他に譲ってしまえば良かったのに……。
先程から、断続的に視線を感じる気がして、そちらを見ると目を逸らされる、という状態が続いており、何というか……どうにも気まずい。
折角の休日を潰されたことに腹を立てているのだろうか。
それなら是非とも無理をしないで頂きたい。
小さく息を吐いて、思考を打ち切る。
考えても無駄なことは、考えないに限る。
出迎えなどさっさと終わらせて、体を温めたいところだ。
とりあえず、人数確認を……。
「初めまして。オレガノ様」
ふいに話しかけられて、目の前に立つ門兵を見る。
身長は自分より低いが、年齢的には上だろうか?
髪を後ろに無造作に束ねていて、ゆるっとした雰囲気なのに、なんとも色気のある男性だ。
「お会いできて幸栄です。おれはユリシーズ=パルヴィン。第一南門の門兵をしています。ユーリーとお呼び下さい。宜しく」
「初めまして。ユーリーさん。自分も敬称は結構です。今日は足を運んで下さり、ありがとうございます」
「いえ。実は妹さんから事前に聞いていて、とても興味深いイベントだったので、楽しみにしていたんですよ」
「?!」
ローズの知り合い?
南門の門兵が?
いったい、どんな接点で知り合ったのだろうか?
先程も思ったが、彼は色気の滲み出るような好青年だ。
あいつは全く……!
あちらこちらで男性と親しくなるのを、どうにか出来ないものだろうか。
俄かに、胃に痛みが走った気がした。
「しかし、思った以上のビッグイベントになって。まぁ、おかげで堂々と見に来ることが出来て僥倖でしたが」
「ええと。その……ローズとは、どのような?」
ユーリーさんは、一瞬キョトンとした顔をした後、爽やかに笑った。
「あぁ。綺麗な妹さんを持つと、お兄さんは気苦労が絶えなくて大変だ」
「いえ」
「ご心配なく。聖騎士に知り合いがいてね。彼に会いに聖堂に来た時に会っただけだから」
「そうでしたか」
なるほど。立ち話をした程度か。
胸を撫で下ろした矢先、
「まぁ。その時は、彼に急な仕事が入ったから、代わりに食事をご一緒させて頂いたけど」
「は?」
年上の方に失礼とか考える以前に、声が出てしまった。
誰だ!
その聖騎士は~~!!
紹介した聖女候補を、他の男性に任せるとか、有り得ないだろうっっ!!
憤っていると、ユーリーさんは堪えきれないと言ったように、その場で笑い出した。
「アッハッハ。あぁ、いや失礼。大丈夫!勿論、妹さんにも許可を頂いたし、他の聖騎士も一緒だったから……」
「あぁ……そうですか……」
そういうことなら、無いことも無いか。
ユーリーさんは笑いが収まらないのか、目元にうっすら涙を浮かべている。
どうやら、揶揄われたらしい。
イラッとしたのが表情に出ていたのか、ユーリーさんは何とか笑いをおさめて頭を下げた。
「失礼。悪気はないんだ。良いお兄さんだなぁと思って」
「…………」
「ごめんね?」
「いえ」
悪びれず謝ってくる姿勢に、今度は完全に毒気を抜かれてしまった。
いつの間にか話口調も敬語ではなくなっているけど、彼の持つ雰囲気のせいか、それも何となく許せてしまう。
不思議な人だな。
「オレガノ!人数が揃ったからテントへ誘導開始してくれ」
「了解です!」
人数を数えてくれたらしい団長から指令が来たので、前に立って歩き始めると、ユーリーさんは横に並んで歩き始めた。
「妹さんはとても人気があるようだし、お兄さんは大変だね?」
「人気ですか?」
「あれ?知らない?聖堂でもその他でも、かなり人気を集めてるってラルフ君が言ってたよ?あ、ラルフ君っていうのは……」
「はい、知ってます。聖騎士の背の高い……」
「そうそう。いつも腹ペコの……」
食事をしている最中の彼の幸せそうな顔を思い出し、思わず笑うと、ユーリーさんも横で笑っていた。
「彼だって、気に入っていそうだし?」
その可能性はあるだろうなぁ。
でも、案外聖騎士界隈で選んでくれると、こちらは気が楽だ。
王子殿下のドヤ顔と、ジェファーソン様の裏のありそうな微笑みが脳裏をよぎって、げんなりとする。
「でも、血は争えないな。君も人気者のようだし?」
「??」
言われていることの意味が分からずユーリーさんに顔をむけると、彼は苦笑いを浮かべた。
「そういうところも良く似ているみたいだ」
「どういうところですか?」
「他の人に気遣いしすぎて、自分のことは後回しなところかな?」
良くわからない。
もう少し詳しく聞こうと思ったが、テントについてしまったのであきらめる。
「それじゃぁ、期待しているから頑張ってね」
「はい。ありがとうございます」
ユーリーさんは、ひらひらと手を振りながら、門兵たちの輪に戻っていった。
王宮関係者のテントは王子殿下のテントと横並びだ。
もうすぐ開幕となるが、少しだけ時間に余裕があるようなので、テント後方で準備運動を始める。
そういえば、ユーリーさんって、どこかで聞いたような名前だな?
さて、何だったか?
簡単に思い出せそうでいて、なかなか出てこず、もやもやしながら屈伸運動をしていると、空砲が鳴り響いた。
王子殿下と聖女様がこちらに向かわれる合図だ。
すぐさま王子殿下のテントの決められた位置に戻り、立ったまま待機。
前方を見ると、聖女様のテントの横で、ジャンカルロ君がこちらを見ながら、不敵な笑みを浮かべて立っている。
その後方に並んでいるのは彼の家族だろうか?
似ているから、おそらくそうだろう。
テントの中で、彼の両親と妹らしき少女が、物珍しそうに会場を見ている。
家族を招待したのか。
やる気十分だな。
その横のテントには聖女候補の面々。
ローズを含む、華やかにドレスアップした少女たち。
その後方には、神官らしき男女(女性の割合が多く見える)が席についている。
救護テント横の布テントの中には、子どもたちが集まっていた。
聖堂の孤児院の子たちだろうか?
おそろいの帽子が可愛らしい。
ステージの正面。
ジェファーソン様は三つあるテントの中央にいる。
この炎天下の中、何故か涼し気で快適そうだが、何か仕掛けでもあるのだろうか?
今日も麗しい微笑を欠かさないジェファーソン様は、一緒に座るご学友たちと談笑されているようだ。
右横のテントには、女性のご学友。
あえて分けているあたりに、彼の意図を感じてしまうのは、考えすぎだろうか……。
左横のテントには、持参したらしい豪華な設えの椅子に、なかなかに肉付きのいい少年が鎮座しており、その周辺を護衛らしき使用人がぐるりと囲っている。
間違いなく、何処かの高位貴族のご令息だろう。
その横は第七旅団……などと思いながら眺めていると、聖女様のテントの後方に動きがあった。
そちらに視線を移すと、神官長と補佐が厳かに入場してくるところだった。
その後方に、目立たないよう距離をとって、レン君とラルフ君。
それぞれが、高級そうな布で包まれた棒状の物を持ち、テントの中のテーブルにおろしている。
いや。
何で、君は雑用をやらされているんだ。
今日の競技者じゃないのか?
ジャンカルロ君との扱いの差に思わず眉を寄せていると、こちらの視線に気づいたらしいレン君と目があった。
彼が静かに頭を下げたので、こちらも挨拶を返す。
結構距離が離れているんだが……気配にかなり敏感なんだな。
驚いているところに、もう一度空砲がなった。
他の聖騎士と僅か装いが異なる聖騎士が先導し、しずしずと美しい女性が入場してくる。
会場内で座っていた観客たちが一斉に立ち上がった。
凄まじい存在感と、カリスマ性。
あれが、『聖女様』か……。
◆
(side ローズ)
聖女様が入場されると、競技場は水を打ったように静まり返った。
あまりの神々しさに、皆固唾を呑んで彼女の動く先を見つめている。
日々お見かけしているのに、どうしても同じ人間とは思えないような、圧倒的な存在感。
今日も本当にお美しいわ。
あちらこちらで感嘆のため息が落ちる。
聖女様は自らのテントの前に立つと、振り返り、優しく微笑みながら会場全体を見渡して手をふった。
ーーわぁっ!!!
歓声が湧き上がり、会場内が一気に盛り上る。
特に第六と第七の団員さんたちが、異常な盛り上がりを見せているんだけど、その辺は警護を担当する関係かしら?
何というか……ちょっとしたファンクラブ状態だ。
そこに、もう一つ空砲がなる。
会場は一度静まり、ステージを挟んで反対側に視線がうつった。
そこを悠然とした態度で入場されたのは、エミリオ王子殿下。
先程正面入り口まで来られた時もそうだったけれど、背筋をしっかり伸ばし、指先まで神経が行き届いた姿勢はとても美しく、それでいて堂々とした態度は、まさに王族といった様相。
凄い!
カリスマ性十分じゃないですか!!
各騎士団の騎士たちも、その姿を見て感嘆のため息をこぼしている。
王子殿下は、決められたテントまで歩くと振り返り、右手を上げた。
会場は再び歓声に包まれる。
王宮関係者と各旅団の人たちはもちろんの事、わたしの横でもリリアさんが絶叫している。
大歓声が収まらない中、ステージに上がったのは神官長。
しばらくの間、誰もその存在に気づかず、ステージ上でぽつんとしていたけど、聖女様と王子殿下がテントに入って椅子にかけたことで、ようやく視線がそちらに向かった。
あぁ。
すごく嬉しそう。
「これより、王国騎士聖騎士対抗模擬試合を開催いたします!」
にこにこ笑顔で高らかに開会宣言を行った。
ここ一週間ほどの、声を張る練習が報われて何よりでした。
他国から取り寄せたという、高級蜂蜜の効果も十分ですね?
「この度は、大勢の皆様にお集まり頂き……」
あ……。
引き続き、神官長挨拶でしたっけ?
あー。長くなる予感がする。
聖堂関係者は、今、みんな多分似たような半眼になっていると思う。
『この炎天下の中で長時間のご挨拶は、御免被りたいです!』なんて心の中で思ってみたって、わたしたちにはどうする事も出来ないけど……。
神官長が、自らの自己紹介を長々と話し、一息ついて次の話にうつろうとした時、ステージの下から拍手の音が響いた。
もちろん、まだお話の途中だと誰もが分かるタイミング。
周囲は一瞬静まり返った。
神官長相手に、こんな事をして許されるのはこの場に二人しかいない。
拍手の主は聖女様だった。
彼女は、優しい笑みを口元に湛えたまま、拍手を続けている。
次の瞬間、今度は反対側から拍手が加わった。
王子殿下だ!
周囲の大人たちが、何が起こったのかと唖然としてしまっている中、今の一瞬の間で、聖女様の意図を理解し、直ぐ様追従なさったんだわ。
凄い!
高い位にある二人が拍手をしているのだから、当然周囲もそれに加わる。
会場中から拍手が沸き起こってしまえば、流石の神官長も話し続けるのは難しいよね。
拍手が落ち着いた頃、神官長は呆けたように一つ礼をして、ステージから降りた。
言おうと思っていた事とか、全部とんでしまったのかもしれない。
聖堂関係者は、笑いを堪えるのに必死。
神官長にはお気の毒だけど、今日は暑いし、お話しは手短にお願いしたいよね!
「マヌエル神官長、ありがとうございました。それでは変わりまして、聖女様よりお言葉を頂戴致します」
ミゲルさんの司会で、聖女様がテントから前へ進み出る。
ステージでお話しすることになっていたのだけど……
「皆様。今日はとても暑いですわね?長話は今日の企画に似つかわしく無いですから、こちらから一言二言お話しさせて頂きますわ」
その場でお話しを始めた聖女様の澄んだ声音に、会場の人々は聞き漏らさぬように、と耳を傾ける。
「まず、この試合を企画して下さった王子殿下と王宮の皆様に感謝を。私もとても楽しみにしていましたのよ?」
周囲から短く拍手が起こり、話の先を促すよう、すぐに静まる。
「この企画は、王宮、聖堂両騎士の技量を高め、かつ親睦をはかる為の良い機会になるでしょう。くれぐれも怪我の無いように。皆さま、一緒に楽しみましょう!」
聖女様は、そこまで一気に宣言すると、微笑みながら一歩後退した。
会場は拍手喝采だ。
大いに盛り上がる中、ミゲルさんが司会を続ける。
「聖女様ありがとうございました。それでは続きまして、当企画の立案者である、エミリオ王子殿下よりご挨拶いただきます」
王子殿下は前に進み出ると、やはり聖女様と同様、その場で口を開く。
「今日は忙しい中、集まってくれてありがとう。俺も聖女様にならい、この場で簡単に挨拶をしたいと思う」
もちろん、ステージ上でお話しをする手はずになっていたけど、またしても臨機応変に対応なさった。
すごいわ!
とても十歳の判断とは思えないけれど、周囲の大人が助言を与えているような素振りはなかった。
自分がおかれた状況を瞬時に判断し、その場にふさわしい行動を選ぶなんて、大人でも難しいのではないかしら?
「まず、この企画に協力してくれた聖堂関係者各位、並びに聖女様に感謝申し上げる」
ここで、ひときわ大きく短めの拍手。
何というか、堂々とお話しをなさる姿は、既に王子の風格十分。
数週間お会いしない間に、こんなにも成長なさるなんて!
きっと、たくさん勉強なさったんだろうな。
感動のあまり目頭が熱くなってしまう。
「思いつきで始めた企画だったが、選手に選ばれた者たちは、互いに全力を出しきる白熱した試合を見せてくれると期待している。観客諸君、共に剣技の競演を楽しもう!」
会場は一瞬静まり返り、すぐに大歓声に包まれた。
王子殿下は右手を上げると、一度テントに下がり、後ろに控えていた団長から剣を受け取る。
そして、前に進み出ると、ミゲル神官長補佐に視線を送った。
ミゲル神官長補佐は、はじかれた様に我にかえると、司会を進行する。
「王子殿下、ありがとうございました。それでは、引き続き王子殿下の剣術披露へと移らせていただきます」
王子殿下は、団長を従えて競技場へと上がる。
初めてのことで緊張しそうなものなのに、そんな素振りも見せない。
大人顔負けだわ。
どんな状況にも動じない状況判断能力、そして、すぐに行動につなげられる頭の良さと胆力。
『天才』という言葉が脳裏に浮かぶ。
ヒロインが王子殿下に夢中だったのは、彼の天才的な王者としての素質だったのかもしれない。
会場中の誰もが、王子殿下に釘付けになっている。
もし、彼がこの先、同様のスピードで成長を遂げていったら……!!
守ることができるかもしれない。
この国の人たちを!
それならば、私こそ頑張らなければ!!
胸が熱くなって視界が涙で滲んだ。
頬を涙が伝う前に、慌ててハンカチで抑える。
しまった。
感動のあまり泣いてしまった。
ふいに気恥ずかしくなって、周囲に視線を向けると、案外どこも同じような状況だったみたい。
王子殿下付きのテントの中では、男泣きに泣いている騎士さんたちがちらほらいたりして、これならちょっとくらい泣いちゃったからって、平気かな?などと、思ったけど、やっぱりそうでもなかった。
「やだぁ。マリーさん、大丈夫?」
隣に座っていたリリアさんに、盛大に突っ込まれてしまった。
「大丈夫よ。ありがとう。王子殿下が、その、随分ご立派になられていたから……」
「感動しちゃったの?お姉さんみたい。でも、本当に素敵さに磨きがかかったよね~!」
「そうね」
そうか。
これは、弟の成長に感動した姉のような心境なのかもしれない。
リリアさんに言われて、妙に納得してしまった。
競技場の上では王子殿下が、団長さんと抜き身の剣を合わせている。
いよいよ王子殿下の剣術披露だわ。
どうか、ケガなどしないように!
胸がドキドキと高鳴るのを鎮めるように、わたしは両手を組んで競技場を見守った。
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