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第四章

会場前の一幕(2)

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(side ジェフ)


 休日の午前中は、時間の流れがゆったりとしている。
 もっとも今日は、あまりのんびりもしていられないけど。

 よく晴れた空を見上げて、のんびりと伸びをしながら、最近手に馴染んで来た水晶のブレスレットを片腕だけ通す。


 依頼していた封印石は先週届いた。
 お父様が注文して下さったもので、深い色味のサファイアを金の腕輪に嵌め込んだものだったけど、サファイアのカッティングは完璧だし、金属部分の彫刻は実に見事なものだった。
 これを見ると、魔導以外の部分に時間がかかると言っていた意味が十分理解できる。
 宝玉のサイズはそれほど大きくないのに、これを一つ身につけるだけで魔力量を基準まで抑えられたのには驚いた。

 サファイアは、腕輪の水晶よりもずっと小さいのに、この腕輪の方が多くの魔力を吸収でき、しかも長持ちするようで、やはり金額なりに価値はあるようだ。

 これで水晶の腕輪は用済みとなった訳だが、まだ封印石として余力を残したまま廃棄するのも勿体無いので、普段使いとして交互に片方だけ付けて生活をしてみることにした。
 すると、周囲の精霊たちが程々に収まる上、付けたままでも丁度良い具合に低級精霊を呼べることがわかった。

 僕は魔力量が常人よりかなり多いらしく、魔力制御に相当気をつけていないと、自然に中級精霊が召喚されてしまう。

 中級精霊は、人の身でそれを呼べるだけでも『稀代の魔導師だ』と尊敬されるほど、特別な存在だ。
 そして、それを用いた魔導には、常に暴走や魔力切れのリスクを伴うらしい。

 まだ魔導を習い始めたばかりの僕の魔力制御は、完璧とは言えない。
 これだと、突然襲撃を受けたりして思わず魔導を使った場合、周囲を巻き込んでの大惨事になりかねない。

 その点この腕輪を付けていると、使用可能な魔力が減るからか、制御が容易になる。
 となれば、使わない手はない。

 そういえば、一昨日レンさんに会った時に気づいたが、何故か彼も封印石を身につけたようだった。
 周囲の精霊が半分程度に減っていたから。

 それでも、専門学校の魔力が少ない生徒程度には周囲に精霊を残していたし、昨日の打ち合わせでも、単純なものとは言え普通に魔導を使っていた。
 彼の作る封印石は類焼防止というよりも、案外自身の魔力制御を容易にするための物なのかもしれない。

 いずれにしても、腕輪を鑑定した道具商が『それを譲って欲しい』とアメリに頼んだそうだから、彼が魔術師としても有能である事は疑うまでもないな。

 僕は、有能な人間は好きだ。
 僕に不利益が無ければ、という条件付きだけど。

 彼は今のところ、僕にとって役に立つ存在と言っていい。

 聖堂には、花を届けにいくという名目で、週に一度アメリを潜り込ませており、ローズちゃんを取り巻く環境を、レンさん含め、男性職員諸共に調べさせているが、今のところ浮いた話は無いようだし。

 男性職員の間で、じわじわとローズちゃんの人気が上昇しているという情報だけは捨て置けないけれど。

 でも……そうだな、いずれタイミングの良い時に、レンさんに適当な女性を紹介してしまうというのも、良い手かもしれない。

 うん。
 考えておこう。


 それよりも、今は王子殿下の方が気になる問題だ。
 王子殿下の変貌ぶりは、社交界でも話題に上がるほど。
 
 もとが良い上に、ある種の天才の彼だから、後ろを向いていた思考が正常に前を向けば、一気に評価が上がることは分かっていたけれど、ここまで急激とは正直考えていなかった。
 今までの風評が酷すぎたっていうのも、この評価急上昇の要因にはなっているんだろうけど。

 成人の儀の後あたりから、『むやみに逃走しなくなった』とか、『素直に授業を受けたり、剣術を習ったりしている』という話は出ていて、王子殿下の周辺は、『ようやく落ち着いてくれたか』と胸をなでおろしていたらしい。

 と、この辺は、ベル従姉さまからの情報だ。


 そして、あのお茶会。

 殿下は、あの後から劇的に変化したようだ。
 これに関しては、王宮内でちょっとした騒ぎになった。
 使用人筋から漏れ聞こえてくるレベルだから、かなりインパクトがあったのだろう。
 
 これから社交シーズンに入るので、『王子殿下覚醒』の噂は各方面の貴族にも知れ渡るところとなる。

 それ自体は、とても良いことだ。
 むしろ、もっと人気が出ればいい。
 王女殿下が沈黙してしまっている今、王宮の良いニュースになるだろう。

 問題は、殿下の心境だ。
 おそらく、自分の気持ちに気付いたんだろうけど。
 少し突っつきすぎてしまったかな。
 
 殿下は、王族としての立ち居振る舞いもきちんと身についてきたらしいし、社交マナーに関しても、教育を担当したマダムたちが大絶賛したそうだ。
 更に、剣術に関してもかなり筋がいいらしく、それまでは剣術師範が教育を担当していたそうだが、最近は自身の警護を担当する騎士たちにも教えを乞うているという。


 こうなると、殿下はローズちゃんの理想にかなり近づいたことになるんじゃないのかな。

 自分の魔力制御の練習が忙しかったせいで、お茶会から殿下には会えていないんだけど、午後に会うのが正直怖いな。

 わずかに苦笑が頬に浮かんで、両手で顔を覆い筋肉をほぐす。


 殿下がどの程度ローズちゃんにご執心なのかを知りたくて、前回少しからかってしまったけど、さすがに藪蛇だったかな。
 失策だったと反省しきりだ。
 僕が想像していたよりずっと、殿下はローズちゃんを気に入っていたようだ。

 さて。
 今日の午後は、いったいどういった出方をしてくるか。

 殿下の性格は、表向きは傍若無人で尊大。
 いわゆる『俺様』で、言いたいことをはっきり口にする。
 例えそれが、良いことであっても、悪いことであっても。
 そのながれだと、いきなりローズちゃんに、はっきり告白する可能性もある。
 
 でも、殿下って、実はものすごく天邪鬼なんだよな。

 特に、気に入っているものに対して、その反応は顕著。
 僕の知っている限り、王女殿下とベル従姉様に対してはそうだ。

 殿下はあれでいて、実はベル従姉様を結構気に入っている。
 恋愛感情はないんだろうけど、年の離れた姉の様に慕っているのだろう。

 王宮で月一で開かれる婚約者とのお茶会の時などは、いつも素直になれなくて、何となくそっぽを向いてむくれている。
 それでも、話はしっかり聞いているし、苦言を言われても案外素直に聞き入れて同じ轍は踏まないのだ。
 ベル従姉様もそのことには気づいているらしくて、「そこが可愛らしい」と僕に教えてくれたことがある。
 なんだかんだで結構いい組み合わせだから、そこで仲良くしてくれたらいいんだけど。


 殿下は果たして今日、どちらの顔を見せるだろうか。
 成長した姿を見せたいのだったら天邪鬼は封印だろうけど、感情を隠すのがあまり上手くない殿下だからな。

  
 僕は小さく一つ息をつく。

 まぁ。
 考えてばかりいても見てみなければ結局わからないし、僕だってちゃんと成長しているんだから。
 殿下の様に突然急成長というわけにはいかないけれど、ちゃんと前には進んでいる。
 他者と比較して嘆くな!
 
 軽く気合いを入れて、僕は立ち上がる。

 今日は暑くなりそうだけど、さすがにシャツだけってわけにはいかないから。
 アメリに視線を向けると、彼女は涼し気な素材のベストを僕に着せかけてくれた。
 
 
「さて、それじゃ、そろそろ出かけようか」

「かしこまりました」


 アメリが扉を開けると、いつもの護衛の面々が部屋の外に待機している。

 ローズちゃんに会えるんだから、と考えれば、それなりに楽しみな気分になった。
 模擬戦自体は他人事だけど、少しは僕のかっこいいところも見てもらえればいいな。






(side レン)


 朝鍛錬の後、食事を済ませ、一度部屋に戻った。

 制服のポケットにしまった紙袋を取り出すと、袋を開ける。
 中には綺麗に畳まれたハンカチと、水色の袋、簡単に束ねられた黒い革紐が入っていた。

 制服の襟を開いて、首にかけていた革紐を引っ張り出すと、薄茶けたぼろぼろの革紐は、軋んで小さく音を立てた。

 机の上に置くと、赤い石は陽光に透けて僅かに光る。


 まさか見られていたとは思わなかった。
 
 目立たないようにしていたつもりだし、今まで気付いた人もいなかったから、少し気が抜けていたのかもしれない。

 『以前私服の時に』と言っていたから、オレガノ様とお会いした時だろうか?
 『大切な物を無くしてはいけないから』とも言っていたから、石自体も見られたのだろう。

 迂闊だった。

 救いは、『ちらりと見ただけ』と言っていた点か。
 石を持ち上げ陽光にかざすと、石の内側に透彫りが浮かび上がる
 後方に朝日を背負った左片羽根の獅子と、特有の形状のつるぎ
 羽根は鳥の羽根ではなく、蝙蝠や翼竜を思い起こさせる。
 
 こんな物さえなければと、何度思ったか分からないが、どのみちこの容姿。
 これほど、これを受け継ぐのに適任な者もいないだろうと、今となっては半ば諦めてもいた。

 出自に関しては、聖堂のトップは当然知っているし、王族や政治を司る者ならば、顔を見るだけでわかる人もいるだろう。
 だから、今更隠しても意味をなさない事くらいは理解している。
 ……それでも、堂々と曝け出せるようなものでない事は確実で。

 それに、なんとなく……。

 なんとなくローズさんにだけは、あまり知られたくないと思うのは、何故なのか。
 あまり深く考えたくなくて、そこで私は思考を打ち切った。

 見られたとしたら聖堂だろうか。
 それなら暗いし、紋章までは見えなかっただろう。
 そもそも古い時代の話だから、見たって知らないかもしれない。

 大丈夫。

 ぼろぼろの革紐から石を取り外すと、古い紐は処分した。
 十年来の付き合いだが、特に何の愛着もない。

 それよりも、私を心配して用意してくれた、新しい黒の革紐の方が、ずっと大切なもののように感じられた。

 新しい革紐を一度首にかけ、長さを調節すると、キツく縛る。
 石についた金具に紐を通すと、首にかけて開いた襟を閉じた。
 革紐は上等な作りで、丈夫そうなのにとても柔らかく、負担が少ない感じがした。


 次に、水色の袋を開くと、お貸ししたものと似たシンプルな白いハンカチが出てきた。
 仕事にも使えそうだと、返して頂いたハンカチの上に重ねて置く。
 その際、隅に小さく刺繍がされているのが目に入った。
 
 鼓動が跳ねて、思わずそれを再度手に取る。
 よく見ないと気づかないけれど、同色の絹糸で縫い取られた自分のイニシャル。
 自分でも理解出来ない感情が渦巻いて、心臓付近を締め付ける。

 この感情は何だろう?

 ありがたい?嬉しい?
 そのどれとも少し違うような。
 暖かい?懐かしい?
 分からない。知らない。

 いや。
 知っている気がする。

 思い出したのは、セリーヌ様の優しい笑顔と、ローズさんの泣き笑いの顔。
 
 静かに息を吐き出して、心を落ち着ける。
 模擬戦を前に、感情を乱している場合では無い。
 落ち着け。

 返して頂いたハンカチは、いつもの棚に戻したが、何となく頂いた物は一緒に入れる気がしなくて、机の引き出しにそっとしまった。



 今日は通常勤務で、配置は予備要員。

 この配置の時、普段は書類仕事の残務をしている事が多いが、手元の仕事は昨日までに全て済ませている。

 正午に王子殿下が来訪される関係で、その前までに体を温め、食事を済ませるよう、今朝の朝礼で通達があった。
 指定された時間までに、今朝手元に届いた分の雑務をこなし、少し早めに事務室を出る。
 すると、何故か部屋の前の通路の壁に寄り掛かり、エンリケ様が待っていた。


「よぉ~う。レン」


 何も言わずに頭を下げると、彼は整えられた顎髭を指でいじりながら、ニヤニヤと笑う。


「聖女様が激励してくださるらしいから、今から顔貸せや」

「了解しました。ジャンカルロも……」

「あぁ~。そっちはいいや。名指しでのお召しだしな。第一そいつは、アップがあんだろ?」

「…………かしこまりました」


 私も彼と同様の日程なのだが……。
 しかし、聖堂では聖女様が絶対でルール。
 名指しで呼ばれた以上、否やは無い。

 恐らく、聖女様付き聖騎士の補助に入っている関係上、聖女様としても蔑ろにできないと、気遣ってくださったのかもしれない。

 ジャンカルロは通常通りに準備して良いと言うことならば、彼の相手を誰か別の人に頼まなければ。

 踵を返し、事務所に戻ろうとすると、エンリケ様に片手で後頭部を掴まれた。
 彼は事務所に向かって大声をあげる。


「おぉい!ちょっとこいつ借りてくから、誰か仕事変わっとけ」

「私が変わりましょう」

「おう。ライアンか。任せたぜ?」

「お任せください」


 エンリケ様は、満足そうにニヒルな笑みを浮かべ、踵を返すと、私の頭を押して事務所から押し出した。
 事務所の扉を後手に閉めると、エンリケ様は普段通り、私の頭をぐしゃぐしゃと撫で、先導するように前を歩き始める。


「今日の調子はどうだ?」

「平常通りです」

「それなら当然勝てるんだろうな?」

「簡単に仰いますね?」

「何だ。ビビってんのか?」

「相手は英雄の息子さんです」

「いきなり不意打ちの魔導で一撃だろうが」

「……剣術の試合ですが?」

「魔導使ったっていいんだろう?」

「禁止されてはいませんが、邪道かと」

「かってぇなぁ。もっと気楽に考えろぃっ」


 固いとか、そういう問題では無い気がするのだが……。

 でも、このタイミングでエンリケ様と話が出来たのは、私にとってありがたかった。
 お陰で、全身の力が抜けた気がする。
 エンリケ様は、私にとって聖堂内で一番気安く話せる存在だから。

 小さく息を漏らすと、また頭をぐしゃぐしゃと掻き回された。


「あの。髪が」

「女子みたいなこと言ってんじゃねぇぞ。とりすましてないで、少し崩しとけ。ちょっと跳ねてるくらいでいいんだよ」

「そういうわけにも……聖女様からお叱りを受けるのは私なのですが?」

「だからやってんだろうが」

「…………」


 緊張を解くためにしてくれていることは、分かっている。
 そもそも、聖女様付き聖騎士の筆頭が、直々に私を呼びに来る必要などないのに、わざわざ来てくださった。
 恐らく、彼自身も激励に来たのだ。


「あの……ありがとうございます?」

「あぁ。まぁ、やるだけやってみろ。王国騎士だろうが英雄の息子だろうが関係ない。全力で当たれよ!」

「はい」

「ま、お前が勝てなきゃ、誰も勝てん」

「買い被りすぎです」


 聖騎士の剣の使い方を、厳しくも丁寧に教えてくれた師匠であるこの人に、今なら果たして勝てるだろうか?
 以前は随分上に感じていた、今は自分とそれ程変わらない高さにある、エンリケ様の横顔に視線を向けると、彼は笑いながら、また頭をぐしゃぐしゃと撫でた。


 聖女様の部屋の前にたどり着くと、扉を守る聖女様付きの聖騎士に頭を下げる。
 エンリケ様に先導されて部屋の中に入ると、まだ夜間着のままの聖女様が、物憂げな顔でソファーにもたれ、窓の外を見ていた。


「遅いわよ?レン」

「申し訳ありません」


 膝をつき頭を下げると、聖女様はこちらに向き直る。
 下げた視線の隅で、足を組み替えるのが見えたので、視線を下げ、更に深くこうべを垂れた。


「聖女様。その格好じゃぁ若いもんには刺激が強すぎますぁ」


 私の横で、エンリケ様が苦笑混じりに言うと、聖女様はころころと鈴を転がすように笑った。


「一応?聖女付きの末席に名を連ねる貴方が、模擬戦に参加するというから、この私が、わざわざお休みを返上して、観戦してあげることにしたのよ?無様な試合をして私の顔に泥を塗らないようにして頂戴」

「御観覧頂けますこと、心より感謝申し上げます。見苦しい試合にならぬよう、力を尽くす所存です」

「ええ。私のためにせいぜい頑張ることね」

「は」


 短く応えると、部屋の中に沈黙が落ちた。
 聖女様が私を呼びつける時に、ままあることなので、頭を下げたままの姿勢で長い沈黙をやり過ごす。
 普段ならば、この後退出の許可が降りるのだが、今日はいつもと違った。

 聖女様が、立ち上がる気配がした。
 カツカツとヒールを鳴らして、足音が近づき、私の横でピタリと静止する。
 何か不手際があっただろうか?
 不意に気配が近づき、聖女様の細い指先が、私の右耳の後ろから襟足に向かって触れた。

 想像だにしなかったことに驚いたのと、普段人から触れられる事のない場所だったので、反射的に肩が跳ねてしまい、気恥ずかしさからじわじわと耳が熱を持つ。


「髪ぐらいしっかりと梳かしなさい。見苦しい」


 聖女様は、不満げな声で言う。
 部屋に入る前に簡単に直したつもりだったが、まだ跳ねていたらしい。


「申し訳ありません。有難うございます」

「もう良いわ。下がりなさい」

「は」


 踵を返して戻っていく聖女様に、再度深く礼をして、横でにやにや笑うエンリケ様を軽く睨むと、私は聖女様の部屋を後にした。


 


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