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13.絵本の世界
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建国記念式典に向けて忙しさが増す。
当日の式典の流れを確認しながら警備体制を見直す。
今日の陛下の護衛担当は俺じゃないので、何となくホッとした。
愛妾を迎えても表向きは王妃様との仲は以前と変わらずだ。今もお二人で話している姿は自然で、お互いに信頼しあっているように見える。
絵本の王子様がそのまま歳を重ねたかのような、金髪碧眼の美丈夫。それでもって頭も良くて、あんなに人の心を理解出来ないのに、貴族達を上手くまとめて、国民にも人気があって、他国ともいい関係を築けてて。
妻である王妃様はもと公爵令嬢。美人なだけじゃなく、学園でも常に三位以内をキープする才媛だったらしい。人に媚びず言いたいことをはっきり言う性格で、意外にも女性人気が高いのは学生の頃からだとか。
更に王子殿下達はお二人に良く似ていて、聡明で顔も良し。
もうね、何が文句あるのっていうくらいのお素敵人生だよな。本当に絵本の中の主人公かよって思えるくらい幸せそうに見えるのに。
「何がそんなに不満なのかね」
バシッ
「いてっ」
「よそ見するな」
「申し訳ありません!」
やってしまった。俺が陛下の考えを気にしても仕方がないのに。ちゃんと仕事に集中しろ!
「続きな。プレヴァン王国からも国王陛下夫妻がお越し下さるが、今は情勢不安が噂されている。他国で問題を起こすことはないと思うが、頭に入れておけ。
あと、式典後のパーティーでは王太子殿下が陛下と共に行動する事になった。王太子として正式に国賓の方々との挨拶の場に出られるのは今回が初めてだ。陛下のようにこちらの動きを確認しながら行動することは難しいと思われる。こちらも気を付けるように」
警護され慣れてる陛下の護衛はやりやすい。
だが、殿下は国賓への挨拶に集中しているだろうから、陛下と同じに考えては駄目だな。
「ほか、何かあるか」
「はい。あの、プレヴァンの使者がハイメス公爵と接触したようです」
「……確かか?」
「はい。あと、ハイメス公爵邸には他にも同門の貴族が頻繁に訪れているようですね」
「わかった。こちらでも確認する」
絵本の王国には愛妾はいないし、恋人ができた途端、その座を奪おうとする兄弟もいないけど。やっぱり物語のようにめでたしめでたしな人生は無いようだ。
「トリスタン」
「はい」
解散後、団長に呼び止められる。
「彼女は出席するのか?」
「いえ、その様な話しは聞いていません」
「何か変更があったらすぐに教えろよ。ハイメス公爵を刺激し過ぎたのか動きがおかしい。まさか、他国と接触するとは思っていなかった」
「わかりました」
そう。だいたいね、言っちゃうとなるんだよ。駄目だよ、嫌だから止めてねっていうと絶対にそれはおきるんだよ!
「これは………」
「建国記念式典の為のドレスだ。正確にはその後のパーティーだな」
待って待って。初めて聞いたけど!
問題ありありなパーティーに今まで隠してたセレスティーヌを出席させるのか?!
「……私が参加するのですか?」
「ああ、残念ながら私はエスコートは出来ない。トリスタンも護衛として会場入りしているから、私の側近に任せることになるな」
「あの、なぜ私が参加しなくてはいけないのでしょう」
「建国記念だよ?貴族なら参加するだろう?」
「………」
「お父上も来られるよ」
「えっ?!」
……やられた。これはセレスティーヌがうんって言っちゃうやつ。先に話しておけばよかった!
心配するかと思って黙っていたのが裏目に出た。
絶対に団長に叱られる……
「すでに馬車も手配してあるし、衣装も送ったよ。久しぶりにご家族に会いたいだろう?弟妹はパーティーには出席出来ないが、ここで会えるようにしよう。どうだ?」
賭けは続行中。陛下はこれでもかと溺愛しまくっているし、今までと違い、彼女の喜びそうな方向にシフトチェンジしている。
「……この様にお気遣い下さり、感謝申し上げます。ありがたく、参加させていただきます」
だよね。これは受けちゃうよね。
セレスティーヌは仕方がないよね。何も知らないんだから。でもさ、陛下は団長達から話を聞いてるんじゃないのか?!
「本当は私がエスコートしてダンスも踊りたかったが、今回は諦めるよ。今度二人だけの時にダンスに付き合ってくれる?」
「…………」
「おや、そこはブレずに不快を表すんだ。もう少し絆されてくれてもいいのになぁ」
「…………」
「わかった、駄目なんだね。いいよ、今はそれで。
でも、いつか。いつか私と踊ってくれると嬉しい」
そう言って少し切なげに微笑むのはやめて。
悪いのは陛下なのに、何となく罪悪感が。
いや、誘われたのは俺じゃないし、無視してるのも俺じゃない。
……甘いなぁ。顔がいいってアレだよね。
騙されないで俺、ソイツはただの鬼畜だから。
でも、ご家族に会うことが出来たら……笑顔全開になるんじゃないのか?
家族には会わせてあげたいけど、笑顔を見せると丸一日……
卑怯だ!アンタは卑怯な男だよ!!
金と権力があるなんて本当にズルいっ!!
それと警備の見直しがかなり──
あ~~~~っっ、団長ごめんなさい。
当日の式典の流れを確認しながら警備体制を見直す。
今日の陛下の護衛担当は俺じゃないので、何となくホッとした。
愛妾を迎えても表向きは王妃様との仲は以前と変わらずだ。今もお二人で話している姿は自然で、お互いに信頼しあっているように見える。
絵本の王子様がそのまま歳を重ねたかのような、金髪碧眼の美丈夫。それでもって頭も良くて、あんなに人の心を理解出来ないのに、貴族達を上手くまとめて、国民にも人気があって、他国ともいい関係を築けてて。
妻である王妃様はもと公爵令嬢。美人なだけじゃなく、学園でも常に三位以内をキープする才媛だったらしい。人に媚びず言いたいことをはっきり言う性格で、意外にも女性人気が高いのは学生の頃からだとか。
更に王子殿下達はお二人に良く似ていて、聡明で顔も良し。
もうね、何が文句あるのっていうくらいのお素敵人生だよな。本当に絵本の中の主人公かよって思えるくらい幸せそうに見えるのに。
「何がそんなに不満なのかね」
バシッ
「いてっ」
「よそ見するな」
「申し訳ありません!」
やってしまった。俺が陛下の考えを気にしても仕方がないのに。ちゃんと仕事に集中しろ!
「続きな。プレヴァン王国からも国王陛下夫妻がお越し下さるが、今は情勢不安が噂されている。他国で問題を起こすことはないと思うが、頭に入れておけ。
あと、式典後のパーティーでは王太子殿下が陛下と共に行動する事になった。王太子として正式に国賓の方々との挨拶の場に出られるのは今回が初めてだ。陛下のようにこちらの動きを確認しながら行動することは難しいと思われる。こちらも気を付けるように」
警護され慣れてる陛下の護衛はやりやすい。
だが、殿下は国賓への挨拶に集中しているだろうから、陛下と同じに考えては駄目だな。
「ほか、何かあるか」
「はい。あの、プレヴァンの使者がハイメス公爵と接触したようです」
「……確かか?」
「はい。あと、ハイメス公爵邸には他にも同門の貴族が頻繁に訪れているようですね」
「わかった。こちらでも確認する」
絵本の王国には愛妾はいないし、恋人ができた途端、その座を奪おうとする兄弟もいないけど。やっぱり物語のようにめでたしめでたしな人生は無いようだ。
「トリスタン」
「はい」
解散後、団長に呼び止められる。
「彼女は出席するのか?」
「いえ、その様な話しは聞いていません」
「何か変更があったらすぐに教えろよ。ハイメス公爵を刺激し過ぎたのか動きがおかしい。まさか、他国と接触するとは思っていなかった」
「わかりました」
そう。だいたいね、言っちゃうとなるんだよ。駄目だよ、嫌だから止めてねっていうと絶対にそれはおきるんだよ!
「これは………」
「建国記念式典の為のドレスだ。正確にはその後のパーティーだな」
待って待って。初めて聞いたけど!
問題ありありなパーティーに今まで隠してたセレスティーヌを出席させるのか?!
「……私が参加するのですか?」
「ああ、残念ながら私はエスコートは出来ない。トリスタンも護衛として会場入りしているから、私の側近に任せることになるな」
「あの、なぜ私が参加しなくてはいけないのでしょう」
「建国記念だよ?貴族なら参加するだろう?」
「………」
「お父上も来られるよ」
「えっ?!」
……やられた。これはセレスティーヌがうんって言っちゃうやつ。先に話しておけばよかった!
心配するかと思って黙っていたのが裏目に出た。
絶対に団長に叱られる……
「すでに馬車も手配してあるし、衣装も送ったよ。久しぶりにご家族に会いたいだろう?弟妹はパーティーには出席出来ないが、ここで会えるようにしよう。どうだ?」
賭けは続行中。陛下はこれでもかと溺愛しまくっているし、今までと違い、彼女の喜びそうな方向にシフトチェンジしている。
「……この様にお気遣い下さり、感謝申し上げます。ありがたく、参加させていただきます」
だよね。これは受けちゃうよね。
セレスティーヌは仕方がないよね。何も知らないんだから。でもさ、陛下は団長達から話を聞いてるんじゃないのか?!
「本当は私がエスコートしてダンスも踊りたかったが、今回は諦めるよ。今度二人だけの時にダンスに付き合ってくれる?」
「…………」
「おや、そこはブレずに不快を表すんだ。もう少し絆されてくれてもいいのになぁ」
「…………」
「わかった、駄目なんだね。いいよ、今はそれで。
でも、いつか。いつか私と踊ってくれると嬉しい」
そう言って少し切なげに微笑むのはやめて。
悪いのは陛下なのに、何となく罪悪感が。
いや、誘われたのは俺じゃないし、無視してるのも俺じゃない。
……甘いなぁ。顔がいいってアレだよね。
騙されないで俺、ソイツはただの鬼畜だから。
でも、ご家族に会うことが出来たら……笑顔全開になるんじゃないのか?
家族には会わせてあげたいけど、笑顔を見せると丸一日……
卑怯だ!アンタは卑怯な男だよ!!
金と権力があるなんて本当にズルいっ!!
それと警備の見直しがかなり──
あ~~~~っっ、団長ごめんなさい。
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