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24.これからもこうして(J)
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『ただ、君が好きで、大切なだけだ』
まるで当たり前の事かのようにサラリと言われた言葉は、確実に私の心臓を射抜いて来た。
「……ヒットマンだわ、近距離攻撃は危険過ぎますっ!」
絶対に顔が赤くなってるっ!鏡を見なくても分かるわ。顔良し、声良し、更にストレートで誤解の仕様もない愛の告白なんて完全に危険物でしょうっ!
「いや、君の攻撃も大概だったぞ」
「ええっ!?」
いつそんな攻撃をしたかしら。
「記憶にございません。ですので、それはただの本心かと」
「奇遇だな。私も本心だ」
「もうっ」
「相子だな」
結局二人して笑ってしまう。どこのバカップルなのかしら。
でも結局は似た者同士なのね。私は貴方が大切で、貴方も私を大切にしてくれている。
「これからもこうして話をしよう。打ち明けられることも、秘密を持ってしまうかもしれないことも」
「そうですね。嬉しいことは伝えたらもっと嬉しくなるし、寂しさは伝えたらきっと消えてしまうもの」
私達はきっと相性がいいのだろう。
脳筋で誠実なユリシーズ様と、知りたがりで嘘が吐けない私は、二人とも自分の気持ちを偽ることが苦手だから、こうして全てを話してしまうんだわ。
でもこれって人によっては情緒が無いとか、明け透け過ぎると言われるのでしょうね。
「情緒か。そのせいで拗れたりすれ違うくらいなら最初から伝えた方がいいと思うが」
「ですよね。報連相は大切です」
恋愛小説を読んでいて常に思う事だわ。なぜモノローグだけ?言葉にすれば即解決するのに!と。
「ああ、特に女性は難解なクイズが好きだよな」
「クイズですか?」
「君も言ったやつだ。『私が何を考えているか分かりますか』」
ああ、聞きましたね。意外です。私以外にもユリシーズ様にダメ出しをする女性がいただなんて。
「ただ君と違うのは、私が分かるはず無いだろうと言っても、『本当は分かっているくせに』と言って答え合わせをしないことだ」
「……嫌がらせですか?」
「そう思うだろ?でもそうやって聞くと、『私から言わせようだなんて狡いです』とか言ってクネクネしたり、酷いと泣くこともある。まったく意味が分からない。だから君が質問の意図を教えてくれた時は少し感動したんだ」
まあ。てっきり不快にさせたかと思いましたのに。
「何が上手く行くか分かりませんね」
「そうだな。まあ、私達は私達らしく生きていこう」
「そうですね」
そんなことを話しながらアレコレと見て回り、殿下にお土産を買って帰りました。
♢♢♢
「……ユリシーズもポンコツだが、ジャスミン嬢もかなりのポンコツだな?」
戻ってから、例の難解なクイズの話になって殿下にも質問してみたところ、そんな事を言われてしまいました。
「まあ。殿下はお分かりになるのですか?」
「彼女達はユリシーズが大好きで、コイツの口から『好き』とか『愛してる』という言葉を言わせたかったのだろう」
「?意味が分かりません。心の伴わないただの言葉に意味があるのですかね」
「……うん。君達が非常にお似合いだということが良く分かった」
「ありがとうございます?」
最初は王子というだけで苦手に感じていましたが、慣れてくると気さくで良い方です。さすがユリシーズ様が仕えたいと思った王子様ですね。
「君達は頭がいいのに、どうして恋愛に関してはポンコツなんだろうね?」
「「いい思い出がないから?」」
あら。ハモってしまいました。
「ユリシーズはともかく、ジャスミン嬢もかい?」
「私は口を開かなければ可愛いのに、とよく言われたので」
「ジャスミンは口を開いた方がより可愛いけどな?」
「そんなことを言って下さるのはユリシーズ様くらいです。
お父様にすら、殿方と会うときはお口を控えめにと言われましたもの」
「……控えてたか?」
「無理でしたね」
私は見た目だけなら儚げらしいです。でも、喋り出すとこんな感じなので、騙されたとか、裏切られたとか言われて大変迷惑なのですよ。
でも結婚したら黙っていられないのだから隠すだけ無駄だと思うわ。
「ああ、確かに。最初はすぐに泣き出すと思ったな」
「そうですか。もしかして儚げでした?」
「3分くらいはな」
「それでもちゃんと伝えて下さってありがとうございました」
懐かしいわね。ユリシーズ様は仏頂面だったわ。それでも美人なのだから狡いと思ったっけ。
「何を伝えたんだ?」
「『爵位と外見に群がってくる女になぞ興味は無い』といった内容です」
「はっ!?初対面の婚約者にそんなこと言ったのか!?」
「本心でしたから」
「……ジャスミン嬢はよく怒らなかったな」
「初対面だから爵位と外見以外に判断できるものなどありません、とケロリとして言われましたね」
そうでした。そんな始まりでしたのに、こんなにも好きになれるとは不思議なものです。
「……うん。君達は本当にお似合いだよ。末永く幸せになってくれ」
「「ありがとうございます」」
まさか殿下からの祝福をいただけるなんて思わなかったわ。
「あっ、ユリシーズ!私に結婚式の招待状が届いていないぞっ!」
「え、来るんですか?」
「当たり前だろう!どうして近衛騎士団長が参列出来て私が駄目なんだっ!」
「警備が面倒だからです」
「面倒とか言うな!」
「薔薇疑惑もありますよ?」
「貴方に式で泣かれるとせっかく消えてきた噂が復活するじゃないですか」
「あら、泣いちゃうんですか?」
「……なぜ嬉しそうなんだ、ジャスミン嬢」
「ほら。こうなるから嫌なんです」
「ちゃんと威厳のある、余裕たっぷりの態度で祝うから!」
殿下は本当にユリシーズ様がお好きよね。
いつまでもこんなふうに、明るく楽しく過ごしていけるといいなぁ。
「こら、ジャスミン。慈愛に満ちた眼差しは止めなさい」
「え~?微笑ましいだけですよ?薔薇だなんて思ってませんから♡」
まるで当たり前の事かのようにサラリと言われた言葉は、確実に私の心臓を射抜いて来た。
「……ヒットマンだわ、近距離攻撃は危険過ぎますっ!」
絶対に顔が赤くなってるっ!鏡を見なくても分かるわ。顔良し、声良し、更にストレートで誤解の仕様もない愛の告白なんて完全に危険物でしょうっ!
「いや、君の攻撃も大概だったぞ」
「ええっ!?」
いつそんな攻撃をしたかしら。
「記憶にございません。ですので、それはただの本心かと」
「奇遇だな。私も本心だ」
「もうっ」
「相子だな」
結局二人して笑ってしまう。どこのバカップルなのかしら。
でも結局は似た者同士なのね。私は貴方が大切で、貴方も私を大切にしてくれている。
「これからもこうして話をしよう。打ち明けられることも、秘密を持ってしまうかもしれないことも」
「そうですね。嬉しいことは伝えたらもっと嬉しくなるし、寂しさは伝えたらきっと消えてしまうもの」
私達はきっと相性がいいのだろう。
脳筋で誠実なユリシーズ様と、知りたがりで嘘が吐けない私は、二人とも自分の気持ちを偽ることが苦手だから、こうして全てを話してしまうんだわ。
でもこれって人によっては情緒が無いとか、明け透け過ぎると言われるのでしょうね。
「情緒か。そのせいで拗れたりすれ違うくらいなら最初から伝えた方がいいと思うが」
「ですよね。報連相は大切です」
恋愛小説を読んでいて常に思う事だわ。なぜモノローグだけ?言葉にすれば即解決するのに!と。
「ああ、特に女性は難解なクイズが好きだよな」
「クイズですか?」
「君も言ったやつだ。『私が何を考えているか分かりますか』」
ああ、聞きましたね。意外です。私以外にもユリシーズ様にダメ出しをする女性がいただなんて。
「ただ君と違うのは、私が分かるはず無いだろうと言っても、『本当は分かっているくせに』と言って答え合わせをしないことだ」
「……嫌がらせですか?」
「そう思うだろ?でもそうやって聞くと、『私から言わせようだなんて狡いです』とか言ってクネクネしたり、酷いと泣くこともある。まったく意味が分からない。だから君が質問の意図を教えてくれた時は少し感動したんだ」
まあ。てっきり不快にさせたかと思いましたのに。
「何が上手く行くか分かりませんね」
「そうだな。まあ、私達は私達らしく生きていこう」
「そうですね」
そんなことを話しながらアレコレと見て回り、殿下にお土産を買って帰りました。
♢♢♢
「……ユリシーズもポンコツだが、ジャスミン嬢もかなりのポンコツだな?」
戻ってから、例の難解なクイズの話になって殿下にも質問してみたところ、そんな事を言われてしまいました。
「まあ。殿下はお分かりになるのですか?」
「彼女達はユリシーズが大好きで、コイツの口から『好き』とか『愛してる』という言葉を言わせたかったのだろう」
「?意味が分かりません。心の伴わないただの言葉に意味があるのですかね」
「……うん。君達が非常にお似合いだということが良く分かった」
「ありがとうございます?」
最初は王子というだけで苦手に感じていましたが、慣れてくると気さくで良い方です。さすがユリシーズ様が仕えたいと思った王子様ですね。
「君達は頭がいいのに、どうして恋愛に関してはポンコツなんだろうね?」
「「いい思い出がないから?」」
あら。ハモってしまいました。
「ユリシーズはともかく、ジャスミン嬢もかい?」
「私は口を開かなければ可愛いのに、とよく言われたので」
「ジャスミンは口を開いた方がより可愛いけどな?」
「そんなことを言って下さるのはユリシーズ様くらいです。
お父様にすら、殿方と会うときはお口を控えめにと言われましたもの」
「……控えてたか?」
「無理でしたね」
私は見た目だけなら儚げらしいです。でも、喋り出すとこんな感じなので、騙されたとか、裏切られたとか言われて大変迷惑なのですよ。
でも結婚したら黙っていられないのだから隠すだけ無駄だと思うわ。
「ああ、確かに。最初はすぐに泣き出すと思ったな」
「そうですか。もしかして儚げでした?」
「3分くらいはな」
「それでもちゃんと伝えて下さってありがとうございました」
懐かしいわね。ユリシーズ様は仏頂面だったわ。それでも美人なのだから狡いと思ったっけ。
「何を伝えたんだ?」
「『爵位と外見に群がってくる女になぞ興味は無い』といった内容です」
「はっ!?初対面の婚約者にそんなこと言ったのか!?」
「本心でしたから」
「……ジャスミン嬢はよく怒らなかったな」
「初対面だから爵位と外見以外に判断できるものなどありません、とケロリとして言われましたね」
そうでした。そんな始まりでしたのに、こんなにも好きになれるとは不思議なものです。
「……うん。君達は本当にお似合いだよ。末永く幸せになってくれ」
「「ありがとうございます」」
まさか殿下からの祝福をいただけるなんて思わなかったわ。
「あっ、ユリシーズ!私に結婚式の招待状が届いていないぞっ!」
「え、来るんですか?」
「当たり前だろう!どうして近衛騎士団長が参列出来て私が駄目なんだっ!」
「警備が面倒だからです」
「面倒とか言うな!」
「薔薇疑惑もありますよ?」
「貴方に式で泣かれるとせっかく消えてきた噂が復活するじゃないですか」
「あら、泣いちゃうんですか?」
「……なぜ嬉しそうなんだ、ジャスミン嬢」
「ほら。こうなるから嫌なんです」
「ちゃんと威厳のある、余裕たっぷりの態度で祝うから!」
殿下は本当にユリシーズ様がお好きよね。
いつまでもこんなふうに、明るく楽しく過ごしていけるといいなぁ。
「こら、ジャスミン。慈愛に満ちた眼差しは止めなさい」
「え~?微笑ましいだけですよ?薔薇だなんて思ってませんから♡」
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