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22.二人の未来(J)
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お父様に呼ばれて執務室に行くと、蒼白になってやや萎れ気味のお父様がいました。
「お父様どうされたの?」
「……国王陛下から書状が届いた」
「まあ、お父様は何をしてしまったの?」
大変だわ。事件の香りがします!
「違うぞ!犯人はお前達だっ!」
「ええっ!いつの間にか容疑者に?」
「……真面目に話すぞ」
「はい、すみません」
どうやら私と遊ぶ余裕は無いみたい。
「陛下はユリシーズ殿を王太子殿下の側近にしたいそうだ」
「……それは白薔薇同盟へのご褒美?」
「真面目な話だと言ったよ?」
「まあ!真面目に話していますのにっ!」
真面目でそれなのかと黄昏れるのは止めて欲しいです。
だって、学園でも殿下とユリシーズ様のダンスのお話で大騒ぎなのですよ?
白百合の会から白薔薇同盟が分裂しただの、どちらも見守る事には変わりがないのでは等と色々と揉めているのです。
私のところにも何人かの令嬢が話を聞きたいと迫って来ましたわ。…ちょっと怖かった。
「だが、それも一因のようだな。騎士のままでは抑え切れないから、騒がれない立場にしてしまおうという考えもあるみたいだ。
騎士が騒ぎを起こすのはちょっとなぁ」
それはユリシーズ様が望んでやっている事ではありませんのに理不尽です。
「もちろん彼の能力の高さから側近に望んでいるのが一番の理由だ。ただ、彼への説得材料として騒ぎの件が使われているのだろう」
「…そうなのですね。殿下とも親しくされているようでしたし、信頼されているのでしょう」
「お前は?ジャスミンはどうあってほしい?」
「私が何でしょう?」
「……騎士の妻に憧れるとか、それとも殿下の側近を蹴るなんて馬鹿みたいだとか、色々あるだろう」
そういうものですか?う~ん、どちらか……
「騎士のユリシーズ様は格好いいですし、側近としてもバリバリと働かれるでしょうし。どちらを選んだとしてもユリシーズ様ならば、精一杯頑張られることでしょう。
私が出来る事なんてほんの少ししかないわ。
頑張ってね!と笑顔で送り出し、お疲れ様と優しくお迎えすることくらいしか出来ません。
ですから、私は彼が彼らしくあってくださればそれだけで十分です」
「……お前からそんな言葉を聞くことになるとはなぁ」
「どういう意味ですの?」
「大人になったな」
そう言ってお父様は嬉しそうに、でもほんの少しだけ寂しそうに笑いました。
♢♢♢
「私は側近の話を受けようと思う」
ユリシーズ様が迷いのない瞳でそう仰いました。
「理由をお聞きしてもいいですか?」
「もちろん」
おいでと手招きされました。
少しドキドキしながら、彼の隣に座ります。
「私が騎士を目指したのは、ただ強くなりたかっただけなんだ。悪夢に打ち勝つため。それだけが理由だった」
…格好良い雰囲気だけど、痴女って言ったわ。
「それでも近衛騎士を選んだのは、自分を望んで下さった殿下を、せめてお護りすることで役に立ちたいと思ったからだ」
ダメよジャスミン、真剣に聞いて。今の台詞は薔薇な理由では無いわ。友愛ですのよ、友愛!
「でも、今一番守りたいのはジャスミン、君だ」
「……え?私ですか」
「当たり前だろう。いくら王太子殿下といえど、婚約者の君に勝てるはずがない」
ごめんなさいっ、脳内で薔薇が咲きかけていましたわっ。急いで刈り取りますね!
「近衛騎士では君を守れないだろう。それなら殿下の側近になって、この国を豊かにする手伝いをしようと思う。君が幸せに暮らせるように。
騎士では無くなるが、付いてきてくれるか?」
「もちろんです。ちゃんと刈り取りましたから!」
「……は?」
「うふふ」
ここは笑って誤魔化しておきましょう!
「……おいコラ小娘。人が真面目に語っている時に何を考えていやがった?」
キャッ、怖いです!
「え~っと?殿下を護る為に近衛騎士になっただなんて、白薔薇同盟の皆様が知ったら、喜びにうち震えるだろうな~…なんて?」
ああっ、何故私は嘘や誤魔化しがこんなにも下手くそさんなんでしょう。
バチコンッ!
「痛っ!何!?めっちゃ痛かったんですけど!」
涙が出ました!
「俺の告白中に、よくも薔薇を咲かせていやがったな?」
「ごめんなさーいっ!」
「許さん。俺はかなり傷付いたぞ」
「えー、許して?」
必殺、小首傾げ!
「……その技、王妃様も得意らしいぞ」
「あら、お母様とお揃いですね。ではこれでどうだ!」
えいっ!と抱き着いてチュッとほっぺにキスをする。
うん、ほっぺつるつる。いくらでもキスできるわ。
「…………いつからこんなにあざとい娘に育ったかな」
「ユリシーズ様限定です」
「…ちょっと足りない」
「え、…お口はちょっと恥ずかしいですよ?」
「ファーロウに一緒に行かないか」
ファーロウ国?
「陛下が来月の訪問に同行して欲しいって言ってて……ジャスミンも連れて行っていいらしい」
「私も!?でも、お仕事ですよね?」
「イヤか?」
「いいえ?嫌じゃありませんけど、学校が」
「陛下が学園も子爵も根回し済。あとは君の返事だけだ」
え、怖いです。
「……まさか陛下と一緒ではないですよね?」
「陛下は行かれないから大丈夫」
よかった……。どうしよう、行けるなら行ってみたい。国外なんて出たことがないし、行けないならせめてと言葉を覚えたのよね。学園もお父様もお許し下さってるなら……
「行ってみたいです」
「やった!」
ギュウッと抱きしめられるのはまだ恥ずかしいですよ?
でも、そろっと手を回してみました。
「あ、お化粧付いちゃうっ」
慌ててバッと離れたら、チュッと口付けされてしまいました。ユリシーズ様は手が早いわ!先に手を出したのは私ですけど!
「楽しみだな」
「はい!」
あら?結婚前の男女が旅行ってしていいものなのかしら?
「お父様どうされたの?」
「……国王陛下から書状が届いた」
「まあ、お父様は何をしてしまったの?」
大変だわ。事件の香りがします!
「違うぞ!犯人はお前達だっ!」
「ええっ!いつの間にか容疑者に?」
「……真面目に話すぞ」
「はい、すみません」
どうやら私と遊ぶ余裕は無いみたい。
「陛下はユリシーズ殿を王太子殿下の側近にしたいそうだ」
「……それは白薔薇同盟へのご褒美?」
「真面目な話だと言ったよ?」
「まあ!真面目に話していますのにっ!」
真面目でそれなのかと黄昏れるのは止めて欲しいです。
だって、学園でも殿下とユリシーズ様のダンスのお話で大騒ぎなのですよ?
白百合の会から白薔薇同盟が分裂しただの、どちらも見守る事には変わりがないのでは等と色々と揉めているのです。
私のところにも何人かの令嬢が話を聞きたいと迫って来ましたわ。…ちょっと怖かった。
「だが、それも一因のようだな。騎士のままでは抑え切れないから、騒がれない立場にしてしまおうという考えもあるみたいだ。
騎士が騒ぎを起こすのはちょっとなぁ」
それはユリシーズ様が望んでやっている事ではありませんのに理不尽です。
「もちろん彼の能力の高さから側近に望んでいるのが一番の理由だ。ただ、彼への説得材料として騒ぎの件が使われているのだろう」
「…そうなのですね。殿下とも親しくされているようでしたし、信頼されているのでしょう」
「お前は?ジャスミンはどうあってほしい?」
「私が何でしょう?」
「……騎士の妻に憧れるとか、それとも殿下の側近を蹴るなんて馬鹿みたいだとか、色々あるだろう」
そういうものですか?う~ん、どちらか……
「騎士のユリシーズ様は格好いいですし、側近としてもバリバリと働かれるでしょうし。どちらを選んだとしてもユリシーズ様ならば、精一杯頑張られることでしょう。
私が出来る事なんてほんの少ししかないわ。
頑張ってね!と笑顔で送り出し、お疲れ様と優しくお迎えすることくらいしか出来ません。
ですから、私は彼が彼らしくあってくださればそれだけで十分です」
「……お前からそんな言葉を聞くことになるとはなぁ」
「どういう意味ですの?」
「大人になったな」
そう言ってお父様は嬉しそうに、でもほんの少しだけ寂しそうに笑いました。
♢♢♢
「私は側近の話を受けようと思う」
ユリシーズ様が迷いのない瞳でそう仰いました。
「理由をお聞きしてもいいですか?」
「もちろん」
おいでと手招きされました。
少しドキドキしながら、彼の隣に座ります。
「私が騎士を目指したのは、ただ強くなりたかっただけなんだ。悪夢に打ち勝つため。それだけが理由だった」
…格好良い雰囲気だけど、痴女って言ったわ。
「それでも近衛騎士を選んだのは、自分を望んで下さった殿下を、せめてお護りすることで役に立ちたいと思ったからだ」
ダメよジャスミン、真剣に聞いて。今の台詞は薔薇な理由では無いわ。友愛ですのよ、友愛!
「でも、今一番守りたいのはジャスミン、君だ」
「……え?私ですか」
「当たり前だろう。いくら王太子殿下といえど、婚約者の君に勝てるはずがない」
ごめんなさいっ、脳内で薔薇が咲きかけていましたわっ。急いで刈り取りますね!
「近衛騎士では君を守れないだろう。それなら殿下の側近になって、この国を豊かにする手伝いをしようと思う。君が幸せに暮らせるように。
騎士では無くなるが、付いてきてくれるか?」
「もちろんです。ちゃんと刈り取りましたから!」
「……は?」
「うふふ」
ここは笑って誤魔化しておきましょう!
「……おいコラ小娘。人が真面目に語っている時に何を考えていやがった?」
キャッ、怖いです!
「え~っと?殿下を護る為に近衛騎士になっただなんて、白薔薇同盟の皆様が知ったら、喜びにうち震えるだろうな~…なんて?」
ああっ、何故私は嘘や誤魔化しがこんなにも下手くそさんなんでしょう。
バチコンッ!
「痛っ!何!?めっちゃ痛かったんですけど!」
涙が出ました!
「俺の告白中に、よくも薔薇を咲かせていやがったな?」
「ごめんなさーいっ!」
「許さん。俺はかなり傷付いたぞ」
「えー、許して?」
必殺、小首傾げ!
「……その技、王妃様も得意らしいぞ」
「あら、お母様とお揃いですね。ではこれでどうだ!」
えいっ!と抱き着いてチュッとほっぺにキスをする。
うん、ほっぺつるつる。いくらでもキスできるわ。
「…………いつからこんなにあざとい娘に育ったかな」
「ユリシーズ様限定です」
「…ちょっと足りない」
「え、…お口はちょっと恥ずかしいですよ?」
「ファーロウに一緒に行かないか」
ファーロウ国?
「陛下が来月の訪問に同行して欲しいって言ってて……ジャスミンも連れて行っていいらしい」
「私も!?でも、お仕事ですよね?」
「イヤか?」
「いいえ?嫌じゃありませんけど、学校が」
「陛下が学園も子爵も根回し済。あとは君の返事だけだ」
え、怖いです。
「……まさか陛下と一緒ではないですよね?」
「陛下は行かれないから大丈夫」
よかった……。どうしよう、行けるなら行ってみたい。国外なんて出たことがないし、行けないならせめてと言葉を覚えたのよね。学園もお父様もお許し下さってるなら……
「行ってみたいです」
「やった!」
ギュウッと抱きしめられるのはまだ恥ずかしいですよ?
でも、そろっと手を回してみました。
「あ、お化粧付いちゃうっ」
慌ててバッと離れたら、チュッと口付けされてしまいました。ユリシーズ様は手が早いわ!先に手を出したのは私ですけど!
「楽しみだな」
「はい!」
あら?結婚前の男女が旅行ってしていいものなのかしら?
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