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15.夜会(Y)
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「Oh my gosh! It's gorgeous!」
「は?」
「you are dazzlingly beautiful!」
「……おい。私に褒めさせろ」
私が贈ったドレスを纏ったジャスミンはとても綺麗だった。
やっば。完全に俺色じゃん……
まったく気付かずにこれに決めていた自分が怖い。
それでもジャスミンにとても似合っている。
だから、綺麗だと伝えたかったのに。
「なぜ君が私を褒めまくるんだ!」
それに言葉がおかしくなってるぞ。
「ハッ!あまりの美しさに取り乱してしまいました」
「本当にな」
「だって!いつもは無造作に下ろしている前髪が!おでこ全開ですよ!」
「それも褒めてるのか?」
「はい!おでこすらも美しいですね!」
おでこって。額と言いなさい。
「Tu es comme une fée des mers」
「へ?」
「C'est beau」
「にゃっ!?」
よし。ちゃんと通じてるな。
どうやらジャスミンは語学が堪能なようだ。
「du bist gemein」
「ти милий」
「もう~~~~っ!!」
「近衛騎士はね、外国語も評価ポイントなんだ。未来の夫は優秀だろう?」
「凄いけど悔しいわ!」
「ハハッ!」
そんな遣り取りを子爵夫妻に見守られていた。
少し恥ずかしいが、居住まいを正して挨拶をする。
「本日はジャスミン嬢のエスコートをお許し下さりありがとうございます」
「ユリシーズ殿。どうか娘を頼む」
子爵の言葉には、真実ジャスミンのエスコートを託す意味合いと、娘がまた何かやらかさないかを見張る保護者の役割の二つの意味がある気がする。
「…ジャスミン嬢、会場では絶対に私から離れないように」
「はい!」
「何か気になる事があったら動く前に必ず私に報告するんだ。必ずだぞ?」
「はーい」
「それから、知らない人に優しくされても絶対にくっついて行くなよ?」
「……私は貴方をママと呼べばいいのかしら」
「ああん?あとでピーピー泣く羽目になっても知らんぞ」
「大きく出過ぎました。白百合の会は思ったよりも怖かったので、ちゃんとユリシーズ様に隠れてますっ!」
忘れていた。そんな厄介なモノもあったわ。
「…悪いな」
「いえ。だって婚約者ですから」
ニコッと衒いなく笑ってくれるジャスミンは本当に得難い女性だと思う。
「では、レディー。行きましょうか」
「はい!」
…あれ?思ったよりも背中が開いていないか?
歩き始めてようやく気付いた。
今日のジャスミンは、髪の毛を綺麗に巻いていて、その半分程を複雑に編み込んだりして纏めている。
ようするに、背中を隠すべき髪の毛量が著しく減っているのだ!
「……寒くないか?」
「今日は暖かいですよ?」
だが、歩くたびに緩やかなウェーブがかかった髪が揺れ、真っ白な背中が見えてしまう。
しまった。なぜ、上に羽織るものを用意しなかったんだ……。
これは絶対に一人にしては駄目なやつ!
「今日は私以外と踊らないでくれ」
その肌に他の男の手が触れるのは気に食わない。
「だから言ったでしょう?ユリシーズ様としか上手く踊れないんですって」
「足を踏まれてでも踊りたいという勇者がいるかもしれないだろ」
ティモシーとかいう第四王子とか。
「いるわけないですよ~」
危機感……いや、いい。本人が了承しているのだ。全て私が断ればいい。
「……ユリシーズ様こそ、私を置いて踊りに行かないで下さいね?」
「クラーケンの悪夢が見たいのか?」
「え、ちょっと見たいかも」
失言だった。ワクワクしないで。
「私も君としか踊れないし踊らない」
「ふふっ、お揃いですね」
「ああ。お揃いだ」
何とかクラーケンから逃げ切れそうだ。
「は?」
「you are dazzlingly beautiful!」
「……おい。私に褒めさせろ」
私が贈ったドレスを纏ったジャスミンはとても綺麗だった。
やっば。完全に俺色じゃん……
まったく気付かずにこれに決めていた自分が怖い。
それでもジャスミンにとても似合っている。
だから、綺麗だと伝えたかったのに。
「なぜ君が私を褒めまくるんだ!」
それに言葉がおかしくなってるぞ。
「ハッ!あまりの美しさに取り乱してしまいました」
「本当にな」
「だって!いつもは無造作に下ろしている前髪が!おでこ全開ですよ!」
「それも褒めてるのか?」
「はい!おでこすらも美しいですね!」
おでこって。額と言いなさい。
「Tu es comme une fée des mers」
「へ?」
「C'est beau」
「にゃっ!?」
よし。ちゃんと通じてるな。
どうやらジャスミンは語学が堪能なようだ。
「du bist gemein」
「ти милий」
「もう~~~~っ!!」
「近衛騎士はね、外国語も評価ポイントなんだ。未来の夫は優秀だろう?」
「凄いけど悔しいわ!」
「ハハッ!」
そんな遣り取りを子爵夫妻に見守られていた。
少し恥ずかしいが、居住まいを正して挨拶をする。
「本日はジャスミン嬢のエスコートをお許し下さりありがとうございます」
「ユリシーズ殿。どうか娘を頼む」
子爵の言葉には、真実ジャスミンのエスコートを託す意味合いと、娘がまた何かやらかさないかを見張る保護者の役割の二つの意味がある気がする。
「…ジャスミン嬢、会場では絶対に私から離れないように」
「はい!」
「何か気になる事があったら動く前に必ず私に報告するんだ。必ずだぞ?」
「はーい」
「それから、知らない人に優しくされても絶対にくっついて行くなよ?」
「……私は貴方をママと呼べばいいのかしら」
「ああん?あとでピーピー泣く羽目になっても知らんぞ」
「大きく出過ぎました。白百合の会は思ったよりも怖かったので、ちゃんとユリシーズ様に隠れてますっ!」
忘れていた。そんな厄介なモノもあったわ。
「…悪いな」
「いえ。だって婚約者ですから」
ニコッと衒いなく笑ってくれるジャスミンは本当に得難い女性だと思う。
「では、レディー。行きましょうか」
「はい!」
…あれ?思ったよりも背中が開いていないか?
歩き始めてようやく気付いた。
今日のジャスミンは、髪の毛を綺麗に巻いていて、その半分程を複雑に編み込んだりして纏めている。
ようするに、背中を隠すべき髪の毛量が著しく減っているのだ!
「……寒くないか?」
「今日は暖かいですよ?」
だが、歩くたびに緩やかなウェーブがかかった髪が揺れ、真っ白な背中が見えてしまう。
しまった。なぜ、上に羽織るものを用意しなかったんだ……。
これは絶対に一人にしては駄目なやつ!
「今日は私以外と踊らないでくれ」
その肌に他の男の手が触れるのは気に食わない。
「だから言ったでしょう?ユリシーズ様としか上手く踊れないんですって」
「足を踏まれてでも踊りたいという勇者がいるかもしれないだろ」
ティモシーとかいう第四王子とか。
「いるわけないですよ~」
危機感……いや、いい。本人が了承しているのだ。全て私が断ればいい。
「……ユリシーズ様こそ、私を置いて踊りに行かないで下さいね?」
「クラーケンの悪夢が見たいのか?」
「え、ちょっと見たいかも」
失言だった。ワクワクしないで。
「私も君としか踊れないし踊らない」
「ふふっ、お揃いですね」
「ああ。お揃いだ」
何とかクラーケンから逃げ切れそうだ。
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