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6.二度目はカフェで(J)
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やらかしてしまったわ。
カフェで大爆笑するなんて酷過ぎる……
それでも、ユリシーズ様は不機嫌な顔はされても怒りはしなかった。それどころか、何も注文出来なかったことを謝罪されてしまいました。
大人だなぁ。
「どうした、急に大人しくなって」
「……反省していました」
「今頃か」
だって。会話が途切れたら気になってしまったのですもの。
今も花束はユリシーズ様の手にある。
あれだけ笑ってしまったのに、嵩張るからと持って下さっているのです。
「やっぱり百合が似合いますね」
あ。正直な感想が飛び出してしまいました。
「……君は本当に我慢が出来ないらしい」
よかった。呆れてはいるけれど、嫌味だとは思わなかったみたい。
「だって本当に似合ってますよ?」
「…すまん。君のイメージでは無いと思ったのだが、絶対にこれだと言われて拒否出来なかった」
「わたしのいめーじ……。タンポポとか?」
「タンポポで花束が作れるのか?…あ、そうだ。ちょっとあの店に寄ってもいいかな」
「え?」
彼が言っているのはあの雑貨屋さんでしょうか。
「はい、もちろん」
店内はそんなにも広くはなく、でも落ち着いた雰囲気のお店です。
「ああ、まだあった」
どうやらユリシーズ様のお目当ての物が見つかったようですけど何かしら。
「これだ。君のイメージは」
そう言って見せてくれたのは、ガラスの中に咲く可愛らしい淡いピンクの花々。
「…可愛いです」
こんなにも可愛らしい物が私のイメージ?
だってピンクですよ。それもとっても繊細な。
「嘘です。ユリシーズ様は女誑しですね?」
「いや?ふわふわですぐに吹き飛ばされそうなのに、本当は全然流されない所がピッタリだ」
……花だけでなく、ペーパーウェイト丸々が私ですか!?
ショックを受けた私にニヤリと笑うと、そのまま会計を済ませて私に渡してきました。どうやらプレゼントしてくれるみたいです。
「…ありがとうございます」
「それさ、どうやって作るんだろうな」
「え?」
「だって透明なガラスの中にそんなにも綺麗な花があるんだぞ。不思議だろう?」
「あ、確かに!」
「そういう、何でか分からんあたりも似てる」
なんでそこで優しい顔で微笑んじゃうかな!
ユリシーズ様のファンが無駄に多い理由が少し分かった気がします。
この人、無自覚に口説いちゃってるっ!
……天然怖いよ。乙女を無駄にキュンキュンさせているんですもの。
え、こんな人が婚約者なの?恋愛未経験者なのに?私なんかじゃ無理じゃないかな…。
「何で変な顔してるんだ」
「え、あ!どうしてコレがあるって知っていたのかなって」
「ああ、先輩の買い物に付き合わされたんだ。彼女へのプレゼント探し。アクセサリーだとありきたりだからってこの店に来たんだよ。その時にこれを見て、凄いなって思ったんだ。
だけどさすがにピンクの花だと使えないから諦めたんだけど」
「そうですね。白百合の方が断然似合います」
あら、眉間にシワが。
パシッ
「だっ!暴力反対!」
またデコピンされました!
「イジメ反対。これからはその話題を出す度にデコピンな」
「素直な感想だったのに~」
今のは虐めじゃないもん!
優しかったり誑しだったりいじめっ子だったり。ユリシーズ様はズルい。何が狡いのか分からないけれど、とにかく狡いわ。
それからは少し街をブラついて二度目の顔合わせは終わりました。
百合の花束を抱えて家に帰ると、お母様が微妙な顔をしています。分かってます。私に百合は似合わないと思っているのでしょう?
「お母様、ただいま帰りました」
「おかえりなさい。どうだったの?今日は」
隠しても仕方がないので、最初から最後までペロリとお話しをしたら呆れられました。
「貴方って子は。まさか破談狙いでは無いのよね?」
「…嫌ならちゃんと言うわ」
「狙っていないのにソレ?よく許して下さったわ」
そうですね。私へのプレゼントを爆笑するなんて、かなり失礼でした。本当に反省しています。
「でも、白百合の花束を抱えた白百合の騎士様……、フフ、見たかったわ~」
…私の性格は絶対にお母様似だと思います。
「それ。綺麗ね」
「うん」
お花のペーパーウェイトは本当に綺麗。
「良い方みたいで安心したわ」
「……私みたいなお子ちゃまでガッカリしていないかしら」
「あら。あらあらあらあら」
「…どうしてそんなに『あら』が多いの?」
「だって。ジャスミンちゃんが女の子しているのですもの」
私はいつでも女の子していますが?
思わずスンッとしていると、お母様はとっても楽しそうな顔をしました。
「婚約はこのままでいいのね?」
「…断れるものだったの?」
「貴方が本気で嫌ならお母様だって頑張りますよ」
本気でイヤ?……どうかしら。
「ユリシーズ様は嫌いじゃないわ。ただ、自分が結婚することがピンと来ないの。現実味が無いというか」
そうなのです。だってこの私が人妻になるなんて考えられないわ。
「それはこれからのお付き合いで自覚していくものよ。まだ一年。だけど、たったの一年しかないとも言えるわ。
頻繁に会えるわけでもないのだから、機会を無駄にしないようにね」
「……はい」
そうね。一年あると言っても、お会い出来るのは月に2~3回くらい?
たったそれだけの間に、私は彼と結婚する覚悟が出来るのかしら。
カフェで大爆笑するなんて酷過ぎる……
それでも、ユリシーズ様は不機嫌な顔はされても怒りはしなかった。それどころか、何も注文出来なかったことを謝罪されてしまいました。
大人だなぁ。
「どうした、急に大人しくなって」
「……反省していました」
「今頃か」
だって。会話が途切れたら気になってしまったのですもの。
今も花束はユリシーズ様の手にある。
あれだけ笑ってしまったのに、嵩張るからと持って下さっているのです。
「やっぱり百合が似合いますね」
あ。正直な感想が飛び出してしまいました。
「……君は本当に我慢が出来ないらしい」
よかった。呆れてはいるけれど、嫌味だとは思わなかったみたい。
「だって本当に似合ってますよ?」
「…すまん。君のイメージでは無いと思ったのだが、絶対にこれだと言われて拒否出来なかった」
「わたしのいめーじ……。タンポポとか?」
「タンポポで花束が作れるのか?…あ、そうだ。ちょっとあの店に寄ってもいいかな」
「え?」
彼が言っているのはあの雑貨屋さんでしょうか。
「はい、もちろん」
店内はそんなにも広くはなく、でも落ち着いた雰囲気のお店です。
「ああ、まだあった」
どうやらユリシーズ様のお目当ての物が見つかったようですけど何かしら。
「これだ。君のイメージは」
そう言って見せてくれたのは、ガラスの中に咲く可愛らしい淡いピンクの花々。
「…可愛いです」
こんなにも可愛らしい物が私のイメージ?
だってピンクですよ。それもとっても繊細な。
「嘘です。ユリシーズ様は女誑しですね?」
「いや?ふわふわですぐに吹き飛ばされそうなのに、本当は全然流されない所がピッタリだ」
……花だけでなく、ペーパーウェイト丸々が私ですか!?
ショックを受けた私にニヤリと笑うと、そのまま会計を済ませて私に渡してきました。どうやらプレゼントしてくれるみたいです。
「…ありがとうございます」
「それさ、どうやって作るんだろうな」
「え?」
「だって透明なガラスの中にそんなにも綺麗な花があるんだぞ。不思議だろう?」
「あ、確かに!」
「そういう、何でか分からんあたりも似てる」
なんでそこで優しい顔で微笑んじゃうかな!
ユリシーズ様のファンが無駄に多い理由が少し分かった気がします。
この人、無自覚に口説いちゃってるっ!
……天然怖いよ。乙女を無駄にキュンキュンさせているんですもの。
え、こんな人が婚約者なの?恋愛未経験者なのに?私なんかじゃ無理じゃないかな…。
「何で変な顔してるんだ」
「え、あ!どうしてコレがあるって知っていたのかなって」
「ああ、先輩の買い物に付き合わされたんだ。彼女へのプレゼント探し。アクセサリーだとありきたりだからってこの店に来たんだよ。その時にこれを見て、凄いなって思ったんだ。
だけどさすがにピンクの花だと使えないから諦めたんだけど」
「そうですね。白百合の方が断然似合います」
あら、眉間にシワが。
パシッ
「だっ!暴力反対!」
またデコピンされました!
「イジメ反対。これからはその話題を出す度にデコピンな」
「素直な感想だったのに~」
今のは虐めじゃないもん!
優しかったり誑しだったりいじめっ子だったり。ユリシーズ様はズルい。何が狡いのか分からないけれど、とにかく狡いわ。
それからは少し街をブラついて二度目の顔合わせは終わりました。
百合の花束を抱えて家に帰ると、お母様が微妙な顔をしています。分かってます。私に百合は似合わないと思っているのでしょう?
「お母様、ただいま帰りました」
「おかえりなさい。どうだったの?今日は」
隠しても仕方がないので、最初から最後までペロリとお話しをしたら呆れられました。
「貴方って子は。まさか破談狙いでは無いのよね?」
「…嫌ならちゃんと言うわ」
「狙っていないのにソレ?よく許して下さったわ」
そうですね。私へのプレゼントを爆笑するなんて、かなり失礼でした。本当に反省しています。
「でも、白百合の花束を抱えた白百合の騎士様……、フフ、見たかったわ~」
…私の性格は絶対にお母様似だと思います。
「それ。綺麗ね」
「うん」
お花のペーパーウェイトは本当に綺麗。
「良い方みたいで安心したわ」
「……私みたいなお子ちゃまでガッカリしていないかしら」
「あら。あらあらあらあら」
「…どうしてそんなに『あら』が多いの?」
「だって。ジャスミンちゃんが女の子しているのですもの」
私はいつでも女の子していますが?
思わずスンッとしていると、お母様はとっても楽しそうな顔をしました。
「婚約はこのままでいいのね?」
「…断れるものだったの?」
「貴方が本気で嫌ならお母様だって頑張りますよ」
本気でイヤ?……どうかしら。
「ユリシーズ様は嫌いじゃないわ。ただ、自分が結婚することがピンと来ないの。現実味が無いというか」
そうなのです。だってこの私が人妻になるなんて考えられないわ。
「それはこれからのお付き合いで自覚していくものよ。まだ一年。だけど、たったの一年しかないとも言えるわ。
頻繁に会えるわけでもないのだから、機会を無駄にしないようにね」
「……はい」
そうね。一年あると言っても、お会い出来るのは月に2~3回くらい?
たったそれだけの間に、私は彼と結婚する覚悟が出来るのかしら。
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