11 / 65
11.信頼
しおりを挟む
どうやら私は思った以上に怒っているみたいです。
「……何と無礼なのでしょう!」
「礼を失しているのはお義母様ですわ。
なぜ騙し討ちのような姑息な手ばかりをつかうのです。
本当にこの伯爵家が大切ならば、貴方の頭一つくらい下げることは出来なかったのですか。
お義母様は貴族としての矜持を持つところを間違っておられるわ。
守るべきものの為なら、その身くらいの捧げる覚悟を持つべきでした」
つまるところ、お義母様は自尊心が高過ぎたのだ。
だから家を守る為なのに、たかが田舎子爵に頭を下げることも出来ない。
最初から家の立て直しの為にと年月を決めた契約結婚でも持ち掛ければよかったものを、それは恥になると言い出せず、それならば私で我慢したらいいのにそれも許せず。
挙げ句の果てには、息子に薬を盛って不貞を犯させた。
「リオ様はお義母様の持ち物ではありません。
貴方が薬を盛ったのは明らかな犯罪行為です。
仮令母親であっても、やってはならないことはあるのですよ」
というより、親だからこそやってはいけないのですけどね。
「…私がリオさんに?どこにそんな証拠があると言うのです」
「本で読みました。犯人はすぐに証拠はあるのかと言うそうなのですが本当ですね!」
あら、悔しそう。でもねぇ、普通はいきなり証拠は?とは聞かないですから。
「お義母様。そんなにも私達は信用なりませんか?」
「……信用ですって?」
「はい。お義母様はなぜたったお一人で戦おうとなさるのです。
確かに、突然旦那様とご長男様を亡くして途方に暮れられたことでしょう。
ですが、貴方様にはリオ様がいましたわ。
そしてお気には召さなかったかもしれませんが、私だっています。
他にも使用人や商会の人々、ご実家の皆様。
多くの方がお義母様の側にいるではありませんか。
なぜ、そんな皆様に助けて欲しいと言わないのです?」
「……実家だなんて。何も知らないくせに」
「『姉は祖母の教えのせいで、やたらと古臭い考えだし、山のように高いプライドのせいで中々の難物だから苦労するだろうが、あれでも家族なのでどうかよろしく頼むよ』とよろしくされましたが?
ならば手をお貸し下さいとお願いしたのですが、こちらから寄って行くと利用されると警戒する困った人だからと、顧客になって頂くことで手を打ちました。
……優しい弟様ですね」
私の言葉は意外だったみたいです。
リオ様やウィリアムを見ればお義母様は愛情深い方だと分かりますのに、どうにも頑ななのが困りものです。
「お義母様、心の通わないもので作り上げた家族は虚しいです。貴方は愛するリオ様にそんなにも虚しい世界で生きさせたいのですか?」
「…ちがうの……私は……」
項垂れてしまったお義母様は、何だか小さく感じます。
今までずっと家のためにと張り詰めていたものが切れてしまったようです。
……ああ、胸が痛いな。苦しい……大声で叫んでしまいたい……なんでこんな……
「ふぅ。……リオ様、お義母様をお部屋に連れて行って差し上げて。それと、お二人でじっくりとお話されることをお勧めします」
「……分かりました。母上、行きましょう」
リオ様に支えられ、お義母様は素直に退席されました。
お話の続きは、お二人が話し合ってからの方がいいでしょう。
「……若奥様?」
「ごめんなさい、少しだけ一人にさせてくれる?」
「承知致しました」
一人きりになって、背凭れに体を預ける。
「……つらいなあ」
落ち着くために深呼吸をする。
ゆっくりと吐いて、吸って、吐いて。
これからどうなるだろうか。
まずはクィントン伯爵とどのような契約を結んだのかを確認するべきね。
苦しくても頑張らなきゃ。ちゃんと後悔の無い幕引きにしたい。
「裁いて終わるだけなら簡単だけどね」
でも、私は綺麗事だと言われても、まだこの家の幸せを諦められない。離婚するにしても、彼らを不幸にするためではなく、互いが幸せになる為に別れを選びたい。
「とりあえずコーデリア様にもお会いしないといけないし、まだまだすることは山積みだわ」
しばらく休んでいるとノック音がした。
「若奥様、お客様がお見えです」
そんな予定は無かったはず。……誰だろう。
「どなたかしら」
「ルドマン先生です」
「マシュー様が?」
「はい、応接室にてお待ち頂いております」
……これは叱られ案件かしら?
「……何と無礼なのでしょう!」
「礼を失しているのはお義母様ですわ。
なぜ騙し討ちのような姑息な手ばかりをつかうのです。
本当にこの伯爵家が大切ならば、貴方の頭一つくらい下げることは出来なかったのですか。
お義母様は貴族としての矜持を持つところを間違っておられるわ。
守るべきものの為なら、その身くらいの捧げる覚悟を持つべきでした」
つまるところ、お義母様は自尊心が高過ぎたのだ。
だから家を守る為なのに、たかが田舎子爵に頭を下げることも出来ない。
最初から家の立て直しの為にと年月を決めた契約結婚でも持ち掛ければよかったものを、それは恥になると言い出せず、それならば私で我慢したらいいのにそれも許せず。
挙げ句の果てには、息子に薬を盛って不貞を犯させた。
「リオ様はお義母様の持ち物ではありません。
貴方が薬を盛ったのは明らかな犯罪行為です。
仮令母親であっても、やってはならないことはあるのですよ」
というより、親だからこそやってはいけないのですけどね。
「…私がリオさんに?どこにそんな証拠があると言うのです」
「本で読みました。犯人はすぐに証拠はあるのかと言うそうなのですが本当ですね!」
あら、悔しそう。でもねぇ、普通はいきなり証拠は?とは聞かないですから。
「お義母様。そんなにも私達は信用なりませんか?」
「……信用ですって?」
「はい。お義母様はなぜたったお一人で戦おうとなさるのです。
確かに、突然旦那様とご長男様を亡くして途方に暮れられたことでしょう。
ですが、貴方様にはリオ様がいましたわ。
そしてお気には召さなかったかもしれませんが、私だっています。
他にも使用人や商会の人々、ご実家の皆様。
多くの方がお義母様の側にいるではありませんか。
なぜ、そんな皆様に助けて欲しいと言わないのです?」
「……実家だなんて。何も知らないくせに」
「『姉は祖母の教えのせいで、やたらと古臭い考えだし、山のように高いプライドのせいで中々の難物だから苦労するだろうが、あれでも家族なのでどうかよろしく頼むよ』とよろしくされましたが?
ならば手をお貸し下さいとお願いしたのですが、こちらから寄って行くと利用されると警戒する困った人だからと、顧客になって頂くことで手を打ちました。
……優しい弟様ですね」
私の言葉は意外だったみたいです。
リオ様やウィリアムを見ればお義母様は愛情深い方だと分かりますのに、どうにも頑ななのが困りものです。
「お義母様、心の通わないもので作り上げた家族は虚しいです。貴方は愛するリオ様にそんなにも虚しい世界で生きさせたいのですか?」
「…ちがうの……私は……」
項垂れてしまったお義母様は、何だか小さく感じます。
今までずっと家のためにと張り詰めていたものが切れてしまったようです。
……ああ、胸が痛いな。苦しい……大声で叫んでしまいたい……なんでこんな……
「ふぅ。……リオ様、お義母様をお部屋に連れて行って差し上げて。それと、お二人でじっくりとお話されることをお勧めします」
「……分かりました。母上、行きましょう」
リオ様に支えられ、お義母様は素直に退席されました。
お話の続きは、お二人が話し合ってからの方がいいでしょう。
「……若奥様?」
「ごめんなさい、少しだけ一人にさせてくれる?」
「承知致しました」
一人きりになって、背凭れに体を預ける。
「……つらいなあ」
落ち着くために深呼吸をする。
ゆっくりと吐いて、吸って、吐いて。
これからどうなるだろうか。
まずはクィントン伯爵とどのような契約を結んだのかを確認するべきね。
苦しくても頑張らなきゃ。ちゃんと後悔の無い幕引きにしたい。
「裁いて終わるだけなら簡単だけどね」
でも、私は綺麗事だと言われても、まだこの家の幸せを諦められない。離婚するにしても、彼らを不幸にするためではなく、互いが幸せになる為に別れを選びたい。
「とりあえずコーデリア様にもお会いしないといけないし、まだまだすることは山積みだわ」
しばらく休んでいるとノック音がした。
「若奥様、お客様がお見えです」
そんな予定は無かったはず。……誰だろう。
「どなたかしら」
「ルドマン先生です」
「マシュー様が?」
「はい、応接室にてお待ち頂いております」
……これは叱られ案件かしら?
2,185
あなたにおすすめの小説
あなたの愛が正しいわ
来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~
夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。
一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。
「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
さようなら、私の初恋
しょくぱん
恋愛
「さよなら、私の初恋。……もう、全部お返しします」
物心ついた時から、彼だけが世界のすべてだった。 幼馴染の騎士団長・レオンに捧げた、十数年の純粋な初恋。 彼が「無敵」でいられたのは、アリアが無自覚に与え続けた『治癒の加護』があったから。
だが婚約直前、アリアは知ってしまう。 彼にとって自分は、仲間内で競い合う「賭けの対象」でしかなかったことを。
「あんな女、落とすまでのゲームだよ」
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。
目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。
「あなたは、どなたですか?」
その一言に、彼の瞳は壊れた。
けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。
セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。
優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。
――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。
一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。
記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。
これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~
水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」
夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。
王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。
「左様でございますか」
彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる