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37. アルブレヒトside
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本当に気持ちの悪い女だったな。
あんなのに目を付けられたジークが可哀想で仕方がない。母親はアレだしなぁ。
それにしてもリーゼロッテの平手打ちは凄かった。まさか2発目があるとは思わなかった。
いや、3発目はもっと大振りだったか。
殴り慣れていないせいで手首を痛め、治療中のリーゼロッテを眺める。
ジークと二人、いつも楽しそうに笑っていた
こんなことになるなんて未だに信じられない。
「……あの、暴走してしまい申し訳ありません」
「いや、同じ気持ちだったからな。手首は大丈夫か?」
「ふふ、初めて人を殴りましたわ」
「そうだろうな。まぁ、あれが女じゃなければ私がとっくに殴っていた。拳でな」
ブリッチェ伯爵のもとに二人で向かう。
リーゼロッテは可愛い妹分だ。幸せになってもらいたい。だが先程自分で言っていた通り、この国では難しいだろうな。
「行きたい国はあるのか?」
「え?」
「留学先だよ。もうあの学園には戻らないのだろう。希望の学校に推薦状を用意する。遠慮なく言ってくれ」
先程の激昂の疲れが出たのか反応が鈍い。
「まだ決めていません。学園の友達とも話をする約束をしているし……もう一度ジーク様とも話がしたいのです。
会いに行ってもいいですか?」
「もちろん。先程は大袈裟に言っただけなんだ。母上の考えにショックを受けたのは本当だけど、そこまで不安定では無いよ。ただ、魔法の影響が残っていたから隣国に行かせただけだ」
母親にあんなこと言われるとは思わなかっただろうな。あいつは一番可愛がられていたから。
「……ジーク様は知っていたかもしれません。自分を可愛がっているのではなく、自身の分身として愛していること」
「どうして?」
「昔聞いたことがあるんです。王妃様はジーク様が大好きなのねって私が言ったら、母上は寂しがりやだから、って言っていました。その時は意味が分からなかったのですけど、今考えるとそういう意味だったのかなって」
「そうか」
私などジークに嫉妬したこともあったのにな。私には見せたことのない愛情をジークに向けていたから。恥ずかしくて言えなかったけど、私は?私への愛は無いの?と思っていた時期もあった。
それ以上にジークが私を兄として慕ってくれるから、すっごく可愛くて嫉妬も消えたけど。あの時、母上に伝えていたら何かが変わっていたのだろうか。
「人の愛情はままならないね」
「そうですね」
リーゼロッテを見送ってから父上のもとに向かう。なんだか一気に老け込んだな。
「こちらは終わりましたよ。自分の意志で魔法を使ったことを自白しました。反省もまったくしていません。ゴミ屑でした」
「そうか。こちらも終わったよ。お前達の幸せを祈ると言っていた」
うわ、なんだか夢見がちなことを言ってる。
「何を言っているんですか。まだ働き盛りで能力もあるのですから、楽隠居なんてさせませんよ。回せる仕事はバンバン回します。表舞台に出られなくてもやれる事はたくさんありますから。
リーゼロッテもそう言ってましたよ。反省してほしいけど、復讐したいわけじゃないって。
だからまずは迷惑をかけた分働いてもらいます。もちろん陛下もですよ」
「……リーゼロッテは強いな」
「はい、マルティナを2回もぶん殴っていました」
「殴ったのか」
「はい、2発目が特に強烈でした」
陛下が笑いだした。さすがに2度も殴るとは思わなかったのだろう。
「やはり嫁に来てほしかったな」
「まだチャンスはありますよ。ジークに会いたいそうです。あとは留学希望です」
「そうか。チャンスはあるか。
……私達にもチャンスはあるだろうか……」
父上は母上のことが好きだよな。私には分かるのに母上には分からなかったのはなぜだ?
「母上はなぜ愛されていないと思っていたのでしょうね」
「……彼女の望む愛情表現ができていなかったのだろう。今なら分かるがな、こうなるまでまったく分からなかったぞ!」
おお、逆ギレだ。女性の望む愛され方?
「あぁ!ジークですね!あいつはいつもリーゼロッテに愛を囁きまくっていましたよ。ようするに、心の中だけじゃなく、言葉に出して伝えるようにってことですか。なるほど。
父上の様な失態をおかさないように私も気を付けます。悪い見本をありがとうございます」
これから家族がどうなるのか。両親の恋愛事情など知りたくもないが、ジークのことだけは応援しなければ。
まずは愛する妻に、愛の言葉を告げに行こう
あんなのに目を付けられたジークが可哀想で仕方がない。母親はアレだしなぁ。
それにしてもリーゼロッテの平手打ちは凄かった。まさか2発目があるとは思わなかった。
いや、3発目はもっと大振りだったか。
殴り慣れていないせいで手首を痛め、治療中のリーゼロッテを眺める。
ジークと二人、いつも楽しそうに笑っていた
こんなことになるなんて未だに信じられない。
「……あの、暴走してしまい申し訳ありません」
「いや、同じ気持ちだったからな。手首は大丈夫か?」
「ふふ、初めて人を殴りましたわ」
「そうだろうな。まぁ、あれが女じゃなければ私がとっくに殴っていた。拳でな」
ブリッチェ伯爵のもとに二人で向かう。
リーゼロッテは可愛い妹分だ。幸せになってもらいたい。だが先程自分で言っていた通り、この国では難しいだろうな。
「行きたい国はあるのか?」
「え?」
「留学先だよ。もうあの学園には戻らないのだろう。希望の学校に推薦状を用意する。遠慮なく言ってくれ」
先程の激昂の疲れが出たのか反応が鈍い。
「まだ決めていません。学園の友達とも話をする約束をしているし……もう一度ジーク様とも話がしたいのです。
会いに行ってもいいですか?」
「もちろん。先程は大袈裟に言っただけなんだ。母上の考えにショックを受けたのは本当だけど、そこまで不安定では無いよ。ただ、魔法の影響が残っていたから隣国に行かせただけだ」
母親にあんなこと言われるとは思わなかっただろうな。あいつは一番可愛がられていたから。
「……ジーク様は知っていたかもしれません。自分を可愛がっているのではなく、自身の分身として愛していること」
「どうして?」
「昔聞いたことがあるんです。王妃様はジーク様が大好きなのねって私が言ったら、母上は寂しがりやだから、って言っていました。その時は意味が分からなかったのですけど、今考えるとそういう意味だったのかなって」
「そうか」
私などジークに嫉妬したこともあったのにな。私には見せたことのない愛情をジークに向けていたから。恥ずかしくて言えなかったけど、私は?私への愛は無いの?と思っていた時期もあった。
それ以上にジークが私を兄として慕ってくれるから、すっごく可愛くて嫉妬も消えたけど。あの時、母上に伝えていたら何かが変わっていたのだろうか。
「人の愛情はままならないね」
「そうですね」
リーゼロッテを見送ってから父上のもとに向かう。なんだか一気に老け込んだな。
「こちらは終わりましたよ。自分の意志で魔法を使ったことを自白しました。反省もまったくしていません。ゴミ屑でした」
「そうか。こちらも終わったよ。お前達の幸せを祈ると言っていた」
うわ、なんだか夢見がちなことを言ってる。
「何を言っているんですか。まだ働き盛りで能力もあるのですから、楽隠居なんてさせませんよ。回せる仕事はバンバン回します。表舞台に出られなくてもやれる事はたくさんありますから。
リーゼロッテもそう言ってましたよ。反省してほしいけど、復讐したいわけじゃないって。
だからまずは迷惑をかけた分働いてもらいます。もちろん陛下もですよ」
「……リーゼロッテは強いな」
「はい、マルティナを2回もぶん殴っていました」
「殴ったのか」
「はい、2発目が特に強烈でした」
陛下が笑いだした。さすがに2度も殴るとは思わなかったのだろう。
「やはり嫁に来てほしかったな」
「まだチャンスはありますよ。ジークに会いたいそうです。あとは留学希望です」
「そうか。チャンスはあるか。
……私達にもチャンスはあるだろうか……」
父上は母上のことが好きだよな。私には分かるのに母上には分からなかったのはなぜだ?
「母上はなぜ愛されていないと思っていたのでしょうね」
「……彼女の望む愛情表現ができていなかったのだろう。今なら分かるがな、こうなるまでまったく分からなかったぞ!」
おお、逆ギレだ。女性の望む愛され方?
「あぁ!ジークですね!あいつはいつもリーゼロッテに愛を囁きまくっていましたよ。ようするに、心の中だけじゃなく、言葉に出して伝えるようにってことですか。なるほど。
父上の様な失態をおかさないように私も気を付けます。悪い見本をありがとうございます」
これから家族がどうなるのか。両親の恋愛事情など知りたくもないが、ジークのことだけは応援しなければ。
まずは愛する妻に、愛の言葉を告げに行こう
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