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4.未知との遭遇

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王女様を乗せた馬車が伯爵家に辿り着いたのは、すっかり日も暮れ、捜索隊を出すか如何か検討し始めた頃だった。

「馬車の音です!王女様が到着されました!」

急いで整列し、出迎える準備をする。

先頭の騎馬から、騎士であろう男性が降りてきた。

「予定よりも幾分遅くなり申し訳ない」

とは。言葉をお間違えですよ?それは、少々とか、やや、と同じ意味合いの言葉。半日も遅れた時に使う単語ではありません。

「ご無事でよかった。いま、捜索隊を出そうと準備していたところでした」

嫌味ではなく、本当に心配そうに言われてしまい、騎士もさすがに宜しくないと思ったのだろう。

「いえ。……お心遣い感謝致します」

でも、謝罪はしないようだ。貴方自身は王族では無いでしょうに。

旦那様が馬車の前に立つ。ドアが開き王女様が顔を出す。当たり前の様に旦那様の手を借り降りてきた。
その人伯爵ですよー、従者じゃないですよー!

さすがに何かに気が付いたのか、旦那様を振り仰いだ。

「ひっ!」

緊張した旦那様のお顔が怖かったようだ。夜になり、暗がりだから余計か。だからもっと早くに来ればよかったのにっ!!

「大丈夫ですか、殿下っ!」
「殿下に何をするっ!」

うっそ。この王女様ファンクラブ達は何なの、馬鹿なの?勝手に驚いて勝手に転びそうになっただけよ?

「まぁ、長旅が随分と足に来たようですね。我が家に来る前に何件視察をされたのかしら。その様に最初から頑張り過ぎると体が持ちませんよ?大丈夫かしら」

……大奥様の嫌味が炸裂しました!

「誰?侍女かしら。今日は疲れたからもう休むわ。でも、埃っぽいから湯浴みの支度はしてちょうだい」

…………凄いっ!余りにも常識が無さ過ぎて如何したらいいのかしら。このままでは駄目だわ。少し無礼になってしまうけど仕方が無い。

「はじめまして。王女殿下の専属侍女をさせて頂きますクロエと申します。大奥様と旦那様にご挨拶されてからのご移動ということでお間違えないでしょうか」

挨拶を忘れてます、と遠回しに伝える。騎士達の視線が刺さるが気にしない。ここは伯爵家よ。王女の嫁入り先です。

「そう、挨拶……必要かしら」
「王女殿下のお義母様と伴侶になる方々です。末永くという意味合いでも必要かと存じます」

もう、遅刻の謝罪は諦める。でも、せめて宜しくくらいはして下さいよ。

「何処?疲れてるの」

あぁ、胃が!キリキリと痛むっ!!
残念ながら夢見がちな脳は、礼節すら取りこぼしてしまったみたいだわ。これでも王族だなんて、この国が心配になるんですけど。

「さっきから目の前にいますよ」
「あの……私も、です」

大奥様のお顔が怖い。笑ってるのにとっても怖い。
旦那様は怯えないで!王女様は怒ってないわ、無関心なだけだから!

「ああ、お前達だったの。よろしく。
さ、もういいでしょ。案内なさい」
「……こちらです」

分かったわ。この方の中身は5歳。言葉が伝わりそうでちょいちょい伝わらない5歳児よ!礼節もこれからもう一度覚えていただかなくては。

部屋にお通しして湯浴みの準備を支持する。
その間に私はお茶を入れることにした。

少しお疲れな様だからアールグレイかな。

本当はカモミールとかもいいけれど、王女様のお好みから外れてしまうし。

「あら。クロエはお茶を入れるのが上手ね」
「ありがとうございます」

意外だわ。名前を覚えて下さっている。

それからは特にトラブルも無く、湯浴みを終え、そのまま眠ってもいいように、ベッドの上でマッサージをする。

「ん……貴方……何でも上手ね」

すでに声がとろんとしている。お疲れなのは本当のようだ。

「……馬車の……車輪が外れたの……」

何ですって?

「お怪我が無くてよかったです」

それが遅刻の原因?

「怖くて……護衛を減らせなかった……」
「それは怖かったですね、もっと早くにお助けに駆け付ければよかった。申し訳ありません。
でももう大丈夫です。ここは安全ですわ。旦那様が必ず殿下を守って下さいますよ」
「……顔が……怖いもの……」
「心のお優しい方です」
「ふぅん……」

そのまま、王女様は眠ってしまわれた。

「おやすみなさいませ。良い夢を」

さて、大奥様達に報告しなきゃ。

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