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10.ラウラ(2)
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なんだか階下からざわざわと声がする。
何かあったのかしら?
すると、だんだんと走ってくる足音が近づいてくる。
バンッ!!
突然ノックもなく見知らぬ男性が入ってきた。
誰!?
一瞬強盗かと思ったが、乱入者はとても美しい風貌をしていた。
豪奢な金髪に甘い蜂蜜のような金眼。
衣装もこの辺りでは見ることのない洗練さだ。何よりも彼が放つオーラというのだろうか。どう考えても一般人のそれではない。
どう対応していいのか分からずにいると、彼はどんどん近づいてくる。
「ひっ!」
抱きしめてきた!?
「は、はっ離して下さい!」
何が起こったか分からない、怖い!
「怯えないで、私の番」
すごくいい声……そんな場合ではないのに一瞬聞き惚れそうになる。
「っ、番?なに言って…」
「おまえを愛し守る者だよ」
番?何言ってるの?私は何も感じないわ!
「っんぅ!?」
なに…私、キスされてる?
初めてなのに!こんな誰かも分かない人に!?
ヤダ、怖いっっ!
涙が出てくる。息が苦しくて離してほしいのに、どんなに力を入れてもまったくかなわない。
死んじゃう……
なんとか胸を叩くとやっと開放してもらえた。
「公爵様何を!」
お父様が来てくれた!
……公爵様って……まさか番探しの公爵様?!
「彼女は私の探し求めていた番だ。
まさか出会えるとは思わなかった。本当に嬉しいよ!
必ず大切にすると約束する」
信じられない。私が番?
嘘だ……だって私は何も分からないわ!
「…公爵様…
私はこのままお父様と離されるということですか?
突然のことで、…番と言われましても私には申し訳ありませんが分かりません!
何かの間違いです!」
必死に訴えたがまったく聞いてもらえない。
どうしたら……でも、相手は公爵様であり王弟殿下だ。これ以上逆らったら我が家はどうなるの?
結局公爵様のなすがまま王都に連れて行かれるようだ。
こういうのって拉致とはいわないのかしら……
権力者は何をしても許されるのね。
……まさか自分で歩きたいという言葉さえ許されないとは思わなかったわ。
み、耳を噛まれた!お仕置きって何?もうお嫁にいけない!!
そういえば番って嫁入りと同じなの?それとも妾?
何もかも分からず泣きたい気持ちなのに、公爵様から更に屈辱的な言葉を聞かせられた。
「…私の番を大切に育ててくれて感謝する。
報奨金と支度金、またこちらの領地への支援金などを後程送ろう」
お父様の愛をお金に換算するなんて!
番という存在は家族の愛より上だと言うの?
本当に許せない。何よりも逆らうことが許されないことが悔しい……
「…お父様。大丈夫です。お金のためだなんて思っていませんわ。愛されていましたもの。
このような……いえ。
お体に気をつけて。お兄様にもお別れできなくてごめんなさいと、必ず手紙を書くからと伝えてください。
…今までありがとうございました。大好きよ」
まったく何が大丈夫なのか本当は分からないけど、お父様にこれ以上心配はかけられない。
なんとか笑顔で別れの挨拶を交わした。
でも、どうしよう。本当はすごく怖い。
知り合いなど一人もいない王都でどうやって生きていけばいいの?
番という立場がどのような立ち位置なのかも分からない。
公爵夫人として扱われるの?いえ、やはり妾くらい?まさか奴隷ではないわよね?
誰にも聞けない!こわいっ!
……そうだ、支援金をくれると言ってた。
それなら……そうね、きっとこれは等価交換なんだわ。
番として従う代わりに対価としてお金を支払ってもらう。
家族や領民の助けになると考えたら頑張れる。
そうよ!だって考えてもみて?持参金がほぼゼロなのよ?
頭が眩しかったりお腹がふくよかだったり、手の指がふさっとしてたり、握手をしたらべっちょりねっとりした方を覚悟してたけれど、まさかのこんなに麗しい方なのよ!
少し…いえ、だいぶ年上だけど、口づけされたとき驚きはあったけれど、気持ち悪くて吐きそうとは思わなかったわ。
それにやっと会えた番ですもの。暴力や浮気の心配はまずないでしょう。
性癖はまだ分からないけど、感謝するべきでは?
そう思って馬車に乗ったけれど……
~っ、性癖は破廉恥よ!!
初めて会ったばかりなのに、あんな、あんな口付けをされるなんて!
それも馬車の中なのよ!?御者の方にバレてたらもう生きていけないわっ!
彼は私の味方なんかじゃない。心を許すべき相手ではないと強く誓った。
何かあったのかしら?
すると、だんだんと走ってくる足音が近づいてくる。
バンッ!!
突然ノックもなく見知らぬ男性が入ってきた。
誰!?
一瞬強盗かと思ったが、乱入者はとても美しい風貌をしていた。
豪奢な金髪に甘い蜂蜜のような金眼。
衣装もこの辺りでは見ることのない洗練さだ。何よりも彼が放つオーラというのだろうか。どう考えても一般人のそれではない。
どう対応していいのか分からずにいると、彼はどんどん近づいてくる。
「ひっ!」
抱きしめてきた!?
「は、はっ離して下さい!」
何が起こったか分からない、怖い!
「怯えないで、私の番」
すごくいい声……そんな場合ではないのに一瞬聞き惚れそうになる。
「っ、番?なに言って…」
「おまえを愛し守る者だよ」
番?何言ってるの?私は何も感じないわ!
「っんぅ!?」
なに…私、キスされてる?
初めてなのに!こんな誰かも分かない人に!?
ヤダ、怖いっっ!
涙が出てくる。息が苦しくて離してほしいのに、どんなに力を入れてもまったくかなわない。
死んじゃう……
なんとか胸を叩くとやっと開放してもらえた。
「公爵様何を!」
お父様が来てくれた!
……公爵様って……まさか番探しの公爵様?!
「彼女は私の探し求めていた番だ。
まさか出会えるとは思わなかった。本当に嬉しいよ!
必ず大切にすると約束する」
信じられない。私が番?
嘘だ……だって私は何も分からないわ!
「…公爵様…
私はこのままお父様と離されるということですか?
突然のことで、…番と言われましても私には申し訳ありませんが分かりません!
何かの間違いです!」
必死に訴えたがまったく聞いてもらえない。
どうしたら……でも、相手は公爵様であり王弟殿下だ。これ以上逆らったら我が家はどうなるの?
結局公爵様のなすがまま王都に連れて行かれるようだ。
こういうのって拉致とはいわないのかしら……
権力者は何をしても許されるのね。
……まさか自分で歩きたいという言葉さえ許されないとは思わなかったわ。
み、耳を噛まれた!お仕置きって何?もうお嫁にいけない!!
そういえば番って嫁入りと同じなの?それとも妾?
何もかも分からず泣きたい気持ちなのに、公爵様から更に屈辱的な言葉を聞かせられた。
「…私の番を大切に育ててくれて感謝する。
報奨金と支度金、またこちらの領地への支援金などを後程送ろう」
お父様の愛をお金に換算するなんて!
番という存在は家族の愛より上だと言うの?
本当に許せない。何よりも逆らうことが許されないことが悔しい……
「…お父様。大丈夫です。お金のためだなんて思っていませんわ。愛されていましたもの。
このような……いえ。
お体に気をつけて。お兄様にもお別れできなくてごめんなさいと、必ず手紙を書くからと伝えてください。
…今までありがとうございました。大好きよ」
まったく何が大丈夫なのか本当は分からないけど、お父様にこれ以上心配はかけられない。
なんとか笑顔で別れの挨拶を交わした。
でも、どうしよう。本当はすごく怖い。
知り合いなど一人もいない王都でどうやって生きていけばいいの?
番という立場がどのような立ち位置なのかも分からない。
公爵夫人として扱われるの?いえ、やはり妾くらい?まさか奴隷ではないわよね?
誰にも聞けない!こわいっ!
……そうだ、支援金をくれると言ってた。
それなら……そうね、きっとこれは等価交換なんだわ。
番として従う代わりに対価としてお金を支払ってもらう。
家族や領民の助けになると考えたら頑張れる。
そうよ!だって考えてもみて?持参金がほぼゼロなのよ?
頭が眩しかったりお腹がふくよかだったり、手の指がふさっとしてたり、握手をしたらべっちょりねっとりした方を覚悟してたけれど、まさかのこんなに麗しい方なのよ!
少し…いえ、だいぶ年上だけど、口づけされたとき驚きはあったけれど、気持ち悪くて吐きそうとは思わなかったわ。
それにやっと会えた番ですもの。暴力や浮気の心配はまずないでしょう。
性癖はまだ分からないけど、感謝するべきでは?
そう思って馬車に乗ったけれど……
~っ、性癖は破廉恥よ!!
初めて会ったばかりなのに、あんな、あんな口付けをされるなんて!
それも馬車の中なのよ!?御者の方にバレてたらもう生きていけないわっ!
彼は私の味方なんかじゃない。心を許すべき相手ではないと強く誓った。
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